しかし闇献金の裏金疑惑だ。結局、猪瀬知事は公選法違反で辞任に追い込まれた。罰金は50万円だったが公民権停止5年。こんどの裏金疑惑も、議員が知っていて選挙資金を政治資金収支報告書に不記載だったならば、公選法違反に問われる。議員も立件される可能性が高いのだ。ただし裏金は収支報告書に記載されていない。どの政治団体に記載されていないのかをいかにして証明できるのか。
パーティー券の売り上げは銀行を通しているから、派閥の口座に集約されている。その流れを丁寧に追っていけば、どこかで消えているのだから、あとは会計責任者などの供述を重ねていくのだろう。私は安倍派幹部が派閥パーティのチケット購入を支援者に求める文書を持っている。その振り込み先は、議員の地元にある銀行だ。そこにいったん振り込ませて、そこから派閥事務所に振り込む。そこで「中抜き」が行われていた可能性があるという。東京地検特捜部は、こうした金の流れについても調べている。
23年夏に頓挫し、冬にも解散ができなかった岸田政権。このメルマガでも指摘したように、裏金問題が大きくならないうちに選挙に打って出ることも決断できなかった岸田総理は再選の可能性がきわめて低くなった。
24年3月末にも国会で予算を通過させ、そこで岸田退陣の計画が進みつつある。9月の総裁選を前倒しする。そこに石破茂議員と上川陽子外相を立候補させるというのだ。自民党の地方議員に支持されている石破議員に対して初めての女性総理をうたう上川議員の対決だ。どちらが選ばれてもそこで解散に打って出る。
いくら岸田政権の支持率が低くても、選挙はまた別次元だ。政治不信が高まれば、投票に行かず、投票率が下がることが常態化している。森喜朗政権が支持率16%のときに総選挙を行ったとき、前回の239議席に対して233議席を獲得した。有権者全体と投票者にはズレがあるのだ。
1988年から99年のリクルート事件で竹下登政権は退陣したが、あれから35年。細川政権と民主党政権と「非自民政権」はできたが、いまや再び自民党政権でスキャンダルが発覚した。疑惑の政治家が司法取引をしたとの情報が流れ、とくに安倍派議員のなかでは疑心暗鬼が広がっている。東京地検特捜部の捜査は年を跨いで続いていく。1月後半にはじまる通常国会までに大きな方向性は明らかになるだろう。国家権力である検察に「ガンバレ」ではなく、問われているのは有権者なのだ。
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