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世界のトヨタを経営指導してきた男が語る「現場力の高さ」の理由

現場力が高いと言われる、日本を代表する大企業「トヨタ」。その現場の原動力はどこからくるのでしょうか。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、トヨタで経営指導に携わっていた遠藤功氏と広島市信用組合の山本明弘理事長が語る「現場力」のお話を紹介しています。

なぜトヨタの現場力は高いのか?

コンサルタントでローランド・ベルガー日本法人元会長の遠藤功氏は、現場力の鍛錬、強化により一流企業をはじめ100社以上の企業を再生、発展に導いてきた実績を持ちます。

現場力を高める上で大事なものは何か。日本を代表する自動車メーカー・トヨタ自動車を題材に、その要諦に迫ります。対談のお相手は、広島市信用組合の山本明弘理事長です。

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〈山本〉
遠藤先生は今日まで随分といろいろな会社の経営指導に携わってこられたことでしょうね。

〈遠藤〉
一番長く付き合ったのがトヨタ自動車でした。

トヨタの多くのプロジェクトに携わる中で気づいたのが、まさに現場力の重要性です。多くの企業が立派な戦略を立てても実行できずに結果が出せない一方で、トヨタはあれだけの大企業であるにも拘らず、やり切る力があるんです。

もちろん経営者も立派なのですが、やはり現場の当事者意識が高くて、最後まで自分たちでやり遂げるという圧倒的な現場力を見せつけられました。コスト削減にしても、品質向上にしても、販売台数にしても当然、高い目標を掲げ、絶対に弱音を吐かない。

それを通して、現場力は経営の根幹部分であり、醍醐味でもあることを実感したんです。

〈山本〉
トヨタの現場力は伝統的なものなのですか。

〈遠藤〉
そうですね。トヨタの現場力が高い最も大きい要因は、やはり経営陣の現場に対するリスペクトです。例えば、社長さん自身が「俺は偉そうに社長なんかやっているけれども、車一台つくれない。つくってくれているのは現場の君たちなんだよ」と常にリスペクトを続けていて、それによって現場が発憤していく。トヨタの経営陣は現場の動かし方が実にうまいんですね。トヨタにはそういう伝統が受け継がれています。

〈山本〉
現場をその気にさせる。それ、絶対に必要です。

〈遠藤〉
逆に現場との距離があったり、単純に現場を訪問するだけで社員の本音を聞かなかったり、非常に形式的なお付き合いをしている経営者がいまとても増えている気がします。経営者自身は現場に寄り添っていると思い込んでいますが、残念ながら現場はそれを感じ取っていません。

〈山本〉
我われはお取引先を名刺一枚持って融資開拓していくわけですが、それまでメガバンク、地銀ばかりと取り引きしてきた企業を、うちの支店長が何回も訪問して契約を取りつけることがある。

その時私は「あんた、よう、あの企業を開拓してきたのう」と拍手をしてものすごく褒め上げる。やはり褒めにゃあダメです。

〈遠藤〉
そうですね。トヨタの生産現場に行っても、いい意味での褒め殺しですから。要はいろいろな「改善(カイゼン)」をやっている現場に経営陣がやってきて、どこを改善しているのかが分かるんです。

「君、ここを改善したんだろう。すごいな」と声を掛けることで「ああ、気づいてくれたんだな」と、その喜びが仕事の励みになっていくわけです。

でも、多くの会社はせっかく改善しても上は興味も示さないし、当然気づきもしない。現場としてはとても悲しいですね。

〈山本〉
確かに。

〈遠藤〉
アメリカでは「Management by walking around」、歩き回る経営が大事だということが昔から言われていて、いまそれが復活しています。

つまり、とにかく現場を歩き回って直接コミュニケーションを取っていく日本の伝統的なやり方を、ウォルマートなどが見直しているのに、当の日本は完全に忘れている。現場に行っても誰も改善に気づかないし、経営者は何を褒めていいかすら分からないんです。

一番まずいのは無関心です。無関心が蔓延しているところは、現場力は本当に劣化します。日本の企業は無関心だらけです。

image by:  josefkubes / Shutterstock.com

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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