先日おこなわれた「楽天新春カンファレンス2024」に登壇した三木谷浩史会長兼社長が「これからはRakuten AIだ」と、AIを強化していくことを表明しました。さまざまな問題をかかえていた楽天モバイルの前例からすると、不安の声も聞こえてきそうですが、本当に大丈夫なのでしょうか? 今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが、三木谷氏の発表した「未来予測」とその狙い、そして可能性について解説します。
三木谷浩史会長が楽天市場出店者に「Rakuten AI」をアピール。国内4000カ所のエッジサーバーとのシナジーを出せるか
2024年1月25日、楽天グループは「楽天新春カンファレンス2024」を開催。基調講演で登壇した三木谷浩史会長兼社長はモバイル事業で新規契約獲得が順調に推移しているとアピールしつつ「これからはRakuten AIだ」とAIを強化していくことをアピールした。
もともと、楽天には国内で1億を超えるユーザーや年間6600億のポイント発行、さらには70を超えるサービスなど、データの宝庫となっている。OpenAIと組むことで、こうしたデータをAIで処理し、新たな可能性を見いだそうとしているようだ。
昨年からAIがバズワードになっているなか、今年は「オンデバイスAI」が注目を浴びている。先日、発表になったサムスン電子「Galaxy S24シリーズ」は、従来のクラウドベースのAIだけでなく、デバイス上でAI処理することが可能となっている。
楽天グループとしては、モバイル事業を手がけているが、三木谷会長としてはオンデバイスAIの可能性をどのように捉えているのだろうか。
「これからはオンデバイスとエッジの世界になっていく。ただ、オンデバイスAIといっても、いまのスマートフォンは正直言って高い。最新機種で20万円を超えるとなると、家族で機種変更したらクルマが買えちゃう金額になってしまう。
一方、エッジで処理を回せるようになれば、これまで専用機が必要だった世界中のゲームを月額1000円で提供する事も可能になる。また、レイテンシーの速さが求められる自動翻訳や通訳はエッジのほうが効率がいい。さらに複雑なものは生成AIのサーバーで処理することになるが、すべてを担うには計算量が膨大になってしまう。オンデバイス、エッジ、生成AIのコンビネーションになっているのではないか」
と予測する。
確かに楽天モバイルはかつて、国内4000カ所以上にエッジサーバーを設けて、5Gで超低遅延サービスを提供するとぶち上げていたことがある。
その後、キチンと開発が進んでいるかは定かではないが、もともと完全仮想化でエッジコンピューティングとは相性がいいはずで、実現すれば、結構、他社との差別化になって面白くなることは間違いない。
楽天モバイルがエッジコンピューティングとオンデバイスAIを組み合わせた「Rakuten AI」を提供し、ユーザー向けの面白いサービスを作れると、単なる安価な料金プランを提供するキャリアから脱却し、これまでとは違ったポジションに立つことができるのではないか。
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image by: Guillaume Paumier, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons