世界終了へ。米国「イラン本土攻撃」なら“ガザ長期化”どころでは済まなくなる

 

破壊的な結果を招くアラブ諸国を巻き込んだ地域戦争の再燃

今回のアメリカによる親イラン勢力への報復攻撃は、「アメリカ人の生命を危険に曝すものは容赦しない」というメッセージを送ることは出来ましたが、同時にイラン政府に対して「アメリカとしては、イランとの直接的な交戦は希望しない」というぎりぎりのメッセージを送るものであったと考えています。

それを受け、イラン政府側も1月31日にはカダイブ・ヒズボラやフーシー派に対して攻撃の停止を“要請”して、反米組織に自制を促していますが、問題はカダイブ・ヒズボラやフーシー派のようにイランの影響力が十分に機能する組織とは違い、イランと徒党は組むが、イランの支援も指図も受けない反米・反イスラエル組織が暴発し、イランの知らない間にアメリカ・イスラエルへの攻撃に踏み切ったら、恐らくそこから後は拡大戦争に向けたslippery slopeを一気に下るしか選択肢がなくなる可能性が高まってしまいます。

その際、イランを攻撃するのは誰でしょうか?アメリカでしょうか?それともイスラエルでしょうか?

ガザでの軍事作戦を続けるイスラエルに、今、イランを相手にする余力があるかどうかは定かではないですが、アメリカが出て来ずに、イスラエルとイランの恐ろしい交戦になった場合、アラブ諸国を巻き込んだ地域戦争が再燃し、恐らく破壊的な結果を招きます。

しかし、その破壊的な影響は、様々な角度からの分析を加えると、アラビア半島の外には出ないか、広がっても東地中海周辺で“留まる”と考えられます。

それがもし、議会共和党の議員たちが主張するように、アメリカがイラン本土を攻撃し、アメリカを直接的に巻き込む交戦になった場合は、上記の破壊的な結果に加え、かつて私たちが見たような全世界に広がるテロ攻撃の連鎖に発展し、現在進行形で同時に起きている諸々の地域紛争がシンクロナイズし、一気に戦火が広がることも予想されます。

アメリカ国内で珍しく超党派での支持が得られている革命防衛隊のコッズ部隊幹部の暗殺や親イラン派への攻撃は、ハンドリングを間違えると世界戦争に一気に発展しかねない導火線となります。

その可能性のレベルを左右するのが、イスラエルとハマスとの終わりなき戦いが「いかにして、いつ頃」終わるのかというポイントです。

カタールとエジプトを中心としたtirelessな仲介努力は、アメリカも巻き込んで、いろいろな外交交渉に発展し、様々な落としどころを探る態勢になっていますが、イスラエルに圧力をかけきれないアメリカ・バイデン政権の曖昧さと、一度振り上げた拳を下せないネタニエフ政権とハマス、そして自身の権力維持を最優先にするネタニエフ首相個人の利害などが、複雑に絡み合って、なかなか進展が見られない状況です。

今週に入ってやっと【65日間の停戦と人質の全員解放】というパッケージが形成され、イスラエルとハマス双方に提案されましたが、結果的に物別れに終わり、また機会が失われるという事態になってしまいました。

双方とも“停戦と人質解放”の必要性は認めるものの根本的な要求が平行線を辿っています。

ハマス側は、完全かつ永続的な停戦(恒久的な停戦)がなされることを条件に人質の解放に応じるとしています。

個人的には10月7日の事件を引き起こしたのはハマスですので、停戦を求めるということに少し矛盾を感じているのですが、ハマスの政治部門の幹部によると「このまま攻撃されてハマスが壊滅するか、ガザにおける被害の拡大を受けて、ハマスがパレスチナ国民からの支持を失うかという状況を避けることが大事であり、態勢の立て直しには、できるだけ早く戦闘状態から脱しなくてはならない」のだとか。

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