重大な「戦後のガザの扱い」についての意見の不一致
イスラエル側はこの“完全かつ永続的な停戦”という条件は、政権内の極右政党の影響力に鑑みても、到底受け入れ出来ない内容で、かつネタニエフ首相の「ハマスおよびその仲間たちを根絶するまで戦闘を続ける」という“完全勝利”というゴールが不変であること、そして戦闘の継続は、イスラエル世論でも評価されていることなどが要因にあります。
それを受けて、仲介を受けつつ、ガラント国防相が言うように「最後に残されたハマスの拠点であるガザ最南部のラファ(エジプト国境の町で、人道支援の出入り口、そしてガザ市民100万人以上が避難している町)にもすぐにたどり着く」と、ガザに対する徹底的な攻撃を加えることが方向性として示されています。
これから分かることは、イスラエル政府はICJ(国際司法裁判所)から突き付けられた判決も無視し、我が道を行くことで、今後、ジェノサイドとの非難は避けられず、国際社会からの孤立を深めることに繋がることも意に介さないという意思表示かと思われます。
そしてさらに重大なのが、まだ戦争自体がいつ終わるのか分かりませんが、「戦後のガザの扱い」についての意見の不一致です。
ネタニエフ政権は、アメリカから非難されているにもかかわらず、「ガザ地区は今後、イスラエルの統治下におく必要がある」という認識を明らかにしており、これは「ガザ地区の今後は、イスラエル・パレスチナのみならず、周辺国も交えた態勢で行うべき」とするアラブ諸国の意見と真っ向から対峙するものとなりますし、「二国家共存をゴールの一つとし、かつ“ガザの縮小は受け入れない”」とするアメリカ政府の意向にも逆らうことになります。
そしてさらに気になるのは、政権内の極右勢力が公然と「ガザ地区へのユダヤ人の入植の促進」を主張し、パレスチナ人をガザから追放することを求めていることです。
アメリカ政府は「無責任かつ無謀で煽動的」と激しく非難していますし、アラブ諸国はまだ静観を保っているものの「イスラエルが一線を越えないことを強く求めるが、仮に超えてしまった場合には、イスラエルはアラブを再度敵に回すことを覚悟しなくてはならない」と牽制しています。
現時点での意見対立を見る限り、イスラエルが態度を軟化させない限り、中東情勢の著しい不安定化を招くことが予想されます。
そして、先ほど触れた対イランへの米・イスラエルによる威嚇がエスカレートしてしまった場合には、イランを直接的にイスラエルとの戦争に巻き込むことになり、それはアメリカをアラビア半島に引きずり出すことにも繋がりますが、イランの背後にはロシア、中国、トルコ、そして最近、ロシアとの接近を通じて“核の枢軸国”の地位を得ようとする北朝鮮がいるため、確実に紛争が他地域に飛び火し、とても手が付けられないような事態になりかねません。
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