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「 #納税するつもりはございません 」自民・塩谷立の脱税宣言を読み解く3つのカギ。戦後最大 #おまいう 舌禍の裏事情

自民党の裏金問題で、多くの国会議員に本来課税対象となる真っ黒な収支が見つかったことで、日増しに高まる「政治家の脱税許すまじ」の声。SNSでも「 #確定申告ボイコット 」など怒りのハッシュタグが飛び交っていましたが、今度は自民・塩谷立議員(しおのや・りゅう:静岡8区)の「 #納税するつもりはございません 」という“脱税宣言”が大炎上しています。さらに国税庁も、まるでタイミングを合わせたかのように「収入の申告漏れにご注意」と政治家ではなく国民に呼びかけて一般納税者の神経を逆撫でし、火に油を注ぐ始末。このような「おまいう(=おまえが言うな)」発言の背景には一体何があるのでしょうか?メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが詳しく解説します。

「納税するつもりはございません」塩谷議員の“脱税宣言”が大炎上

自民党のパーティー券収入の裏金化問題をめぐって、3月1日に衆院では政治倫理審査会が開かれました。

そこで飛び出した、「旧安倍派の幹部だった」一人である塩谷立衆院議員(元文科相)の発言に対する批判が高まっています。

塩谷議員は、裏金について「納税しろ」という野党議員の追及に対して「私自身はしっかりとそれを政治活動に使用しておりますので、納税するつもりはございません」と述べたそうです。

何ともひどい「居直り」です。ですが、この塩谷氏の金銭感覚が狂っているとか、根性が極悪だというのではないと思います。そうではなくて、もっと具体的には3つの問題があるのではと考えられます。

なぜ自民党議員はナチュラルに脱税するのか?3つのポイント

1つは、必要経費という感覚です。

会社勤めだろうが、自営だろうが、とにかく社会人としてカネの出入りに関わっている人には、カネの公私の区別というのは、社会人として初歩の中でも初歩になります。

例えばですが、会社で使う文房具が足りなくなって、上司に命じられて急いで買ってきた場合には、領収証を出して経理に費用精算の申請をします。上司が命じたのであれば、これは業務の経費になるからです。

一方で、昼休みに外出してランチを食べたとか、会社帰りにスーパーで食料品を買って帰ったなどというのは私用です。給料をもらって税金を天引きされて残った手取りの中から、自分で払うのが当然です。

この2つの区分からすると、裏金というのは、別に自分で飲み食いしたわけでも家計に流用したわけでもないということになりそうです。

例えば、支援者を接待した、地方議員への激励に使ったなどという場合に、いちいち全部について自腹を切っていたら、公私混同になります。

だったら、この裏金は業務上の支出だという感覚になるのだと思います。

ですが、塩谷氏をはじめとした政治家たちは、その使途については「知らぬ存ぜぬ」で一貫しています。つまりカネを何に使ったかは明かせないというのです。

「使途不明金には課税される」のが当たり前

もちろん、実社会にはそのような例はあります。ですが、税法上は「税務署に経費を否認されるイコール課税」というのが常識です。これが第2の問題です。

個人の納税者にしても、あるいは企業などの法人にしても、使ったカネの中で、どうしても税務当局に知られたくないという場合はあると思います。

例えばですが、オーナー経営のベンチャー企業が、儲かったので社員と家族を呼んで派手なBBQパーティーを行い、その経費は会社のオゴリだったとします。

ですが、その金額が「社会通念」を上回る場合には、費用として認められないので課税されます。

また、あまりにも大きな額になると、今度は参加した社員の方が「所得税」を取られてしまいます。そうなると、参加した分だけ社員は損をしてしまうので、せっかくBBQをやっても社員のモラルは下がってしまいます。

「使い道を明かせない」裏金は納税義務とセット

そこで、企業は税務署に対して支出の目的を隠し「使途不明金」として処理します。つまり、このカネは確かに使ったが、その使途は明かせないという宣言です。

その額があまりに非常識ですと、税務署はそれでもBBQを食べた社員からも課税しようとするし、さらに非常識な高額だとなると、会社は株主への背任ということで刑事告発を受けるかもしれません。

そこまで行かない範囲、つまり会社としては「社会通念より贅沢なBBQ」で経費にはならないが、食べた社員に所得税脱税の強制捜査を入れたり、背任とするほどの金額ではないという範囲は、実はあると思われます。

その場合は、企業側は使途不明金としての処理を行い、詳しい実態を税務署には報告しません。そのかわり、その金額は全く経費としては認められないので、利益と同じように、そのBBQ代金には法人税がかかります。

自民議員を支配する、どす黒い権力意識と「被害者意識」

つまり、否認イコール課税というのが民間の常識なのです。塩谷氏をはじめとする政治家は、この常識が完璧に欠落しているということになります。

そこにあるのは、どす黒い権力意識です。これが第3の問題です。

自分たちが自由経済を守り、国を守っている、野党には任せられない、でも選挙地盤にはカネを投入しないと当選できないという一種の被害者意識のようなものとも言えます。

【詳細】日本人が知らない自民党議員の大義と「被害者意識」なぜ彼らは世論をいとも容易く無視できるのか?(冷泉彰彦)

「俺たちが国を動かしてるんだからガタガタ言うな」

実はこの被害者意識は、「自分たちが国家を動かしている」という権力意識と裏表の関係にあるわけです。この2つの身勝手な意識が一緒になることで、どういうわけか完全に罪の意識が消えてしまうのです。

そうした思考法、発想法の全体が国民に対する裏切りだということに、とにかく気づかない限り、自民党の信用回復というのは難しいと思います。

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image by: 塩谷立(しおのやりゅう)公式ウェブサイト-衆議院議員(静岡8区)

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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