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「ドラえもんが青い理由」を聞かれたときに“説得力”のある答えを出せた人は、なぜデザインが上手くなるのか?

1969年の雑誌連載開始から50年以上を経た今もなお、絶大な人気を誇る『ドラえもん』。そんな国民的キャラクターの身体の「色」について考えたことはあるでしょうか。今回の無料メルマガ『プロが教える「美大いらずのデザイン講座」』ではトップデザイナーとして活躍するカマタさんが、「ドラえもんはなぜ青いのか」と問われた際に説得力や驚きのある答えを出せる人の方が、デザインが上達する可能性の高い理由を解説。さらに「良いデザイン」が必ず内包している2つの要素を紹介しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです

「ドラえもんは何故青い?」コンセプトメイクの大切さ

誰もが知っている、国民的キャラクター、ドラえもん。

説明する必要なんてない、日本を代表し、世界に通用する愛すべきキャラクターですね。

ドラえもんって何故青いか?

さて、突然、おかしな質問をさせてもらいます。

「ドラえもんって何故青いのでしょうか?」

コーヒーブレイクだと思って、少し考えてみてもらえますか?1分くらい待ちましょう。

Aさんの答え 「ドラえもんは空のように大らかだから、空の青からイメージしての青です!」

 

Bさんの答え 「ドラえもんは実はああ見えて人間たちを無意識に怖がっている、その無意識を表す色として、青が最適だと作者が考えた」

どちらも、発想は少しだけ面白いとして、何だか弱いですし、説得力に欠ける答えかと思います。

もう少し、納得出来る答えはないでしょうか?

僕が導き出した答えをご紹介します。

のび太くんにとってドラえもんは虐められたり、仲間外れにされたりした時にまず相談したい親友であり、逃げ込む駆け込み寺みたいなモノなので「信頼の塊」や「安全地帯」を表す色として、「青」が選ばれた訳です。

 

ドラえもんは、つまりは絶対的信頼・安心の象徴的存在です。

 

ドラえもんが真っ赤だったりしたら怒っているみたいで、のび太君も飛び込んでいけない!かもしれませんしね。

如何でしょう?結構、本当っぽいし説得力は増した気はします。

それと「感動」までは行かないけど、

「へえ、意外だね」

「結構深い理由があるんだね」

と言って頂けるような「驚き」はある気はします。

実は、こちらは僕がどうも自分で思い込んでいた理由でしかなく、(諸説あれど)本当の答えとされてるのは、

「ドラえもんが青くなったのは、猫型ロボットとしてきちんと?耳もあった時に、ネズミにその両耳をかじられ、恐怖のあまり、青くなった」

というモノです。

藤子・F・不二雄先生に確認することは出来ませんが、良い意味で凄く漫画らしい理由であり、結構、納得感はありますね。

ちなみに、僕自身は、先ほどご紹介した、「ドラえもんの青は信頼の青」という説を、最近まで本気で信じてました。

随分前の話ですが、ある会社では、後輩デザイナー達に、「ドラえもんが青いのは信頼の青だからだ、知ってた?」と(多分ドヤ顔で)話していた事があります。

純粋に僕のこの説を信じてくれていた彼らは、皆、目を輝かせて「へえ、初めて知りました!面白い理由ですね!」と言ってくれました。(そりゃそうです)

どんなきっかけで僕がこの「ドラえもんが青いのは信頼の青」説が本当だと信じてしまったのか?よく覚えていないんですが、多分、いつもの通り、身の回りのデザインのコンセプトを「こうではないか?」と推理するゲーム(コンセプト探しゲーム)の一環として、自分で考えて自分で信じてしまったものかと思います。

でも、言い訳けのようですが、この「何故そのデザインになっているのか?説得力のある理由」「驚きのある、場合によっては感動まである理由(コンセプト)」を見つけ出す力って、デザイナーにとって、すごい大切なものではないでしょうか。

それってすなわちデザイン初め、何かのクリエイションのコンセプトメイクが出来るか?って事に関わってくるからです。

そう、「何故、ドラえもんの身体は青なのか?」と聞かれた時に、説得力ある(驚きもある)答えを出せる人の方がデザインは上手くなる可能性が高い気がします。

何故なら、「良いデザイン」には、大抵「納得できるコンセプト・心が動くコンセプト」が存在し、ビジュアルとして見えるもののその裏に、きちんとした理由やコンセプトがある事で、ビジュアル自体、デザイン自体が強固になり、見る方に伝わる力が増大するからです。

変化を促すビジネス本「Life Change!」のタイトル色は何色?

さて、少し具体的な作例?で、ご説明させてもらいます。

例えばあなたが、あるビジネス本の表紙デザインをあなたが任されたとします。

「決断する事や、行動する事」が何より大事だという内容の本。仮に「Life Change!」というタイトルの本の表紙だと仮定してみてください。

「変える!」「行動を起こす!」という能動的、積極的な部分を強く前面に出す本だとして、、「Life Change!」のタイトル文字色は、赤とかオレンジ、の色がまずはしっくり来そうと考えるかも知れません。

(勿論、これは一番王道的なアイディアで、今までにない本にしたいから敢えてそこから外れていく事も必要そうですが…)

「しっくりくる色」と何となくと曖昧に書いてしまいましたが、改めて考えてみると、タイトルの文字色に「赤」を選んだのは、自分の中にある「感性」から選んだのか?「論理」から選んだのか?どちらから選んだのですか?と聞かれたら、あなたはどう答えます?

勿論、どちらの要素もあるでしょうし、どちらから選んだ方が良いか?ではなく、どちらからも選べるようにしておくと良いかと思います。

もっと言えば、「感性」と「論理性」どちらの要素も内包しているのが良いデザインなんで自分の中に、その二つの要素をいつでも使えるように準備している、そんな状態でいる事がデザイナーとして大切だと思います。

こんなデザインにしたい!と頭の中で絵が浮かぶ場合は、必ずすぐに言葉(論理)で裏付けを取れる方が良いですし、優れたデザイナーは少なからず、この工程を踏んでいると思います。

そう、そして、そこら辺も踏まえすぐに誰かにプレゼンも開始出来るように、あなたは自分に向けて説明をし始めます。

「Life Change!」の文字色を、赤やピンク色にしたのは、行動を促す色が一般的に「赤」と言われているからです。

 

「赤=行動を促す色」とか、「全ての色の中で一番目立つ色は赤で、積極性を表現するのに最適だからです。

等々、言葉にして外気に晒すことで、あなた自身が、「とりあえず辻褄の合う(論理性ある)デザインとして考えられてるかな?」と確認する事ができます。

勿論、これ一回で面白いコンセプトは中々立てられません。

しかしこんな流れで「納得感を持てる言葉(理由)にまとめられる力」ってデザイナーにとって凄く大事です。

初めは、少し強引だったりこじつけに聞こえてしまうかも知れません。それはデザインとしてコンセプト(論理)とビジュアル(感性)が一貫してなかったり、心にスッと入ってくるくらいに練られていないからでしょう。

良いデザインには「見る人を納得させる理由」がまず最初に存在しているものです。

言葉にして話してみて、聞いた人が納得しないようなら、そのデザインは何かが足りないのです。

ここで言ってるのは「語彙力」の事ではありません。もっと根本的なコンセプトの強弱についてです。

なので、コンセプトって当たり前ですが、凄く大事です。デザインの全てを意味する心臓部と言っても言い過ぎではないでしょう。

そのコンセプトを立てる(作る)作業は、PCを開いてデザインを作り出したからと言って、いきなり出来るものではないです。

コンセプトを作る事をシュミレートする時間や、練習する時間が、必要になります。

「コンセプト探しゲーム」でコンセプト出しの練習をする

その練習方法は何か?と言えば、それこそ、日頃から、身の回りのすべてのクリエイションに「そうなっている、そうデザインされている理由」をきちんと探し、自分なりに言葉にする癖をつける、と言うことです。

※これは拙著『センスがないと思っている人のための読むデザイン』でも詳しく書かせてもらってます(ご興味ある方は是非ご覧ください)

そして、ドラえもんの青さの理由を語れるように、聞いた人(や自分さえも)の何人かは、本当の理由だと騙されるくらいに、説得力のある理由として、そのデザインの作り手になったつもりで、言葉にしていければ良いと思います。

この時、大事なのは、実際にそのデザインを作った作り手が設定したコンセプトと外れてても構わないという事です。

「コンセプトを見つけてみよう」というお話をすると、かなりの方が、「いや自分が他人様のコンセプトをこうに違いない?なんて推理するなんておこがましい」とか「絶対、僕、作り手の意図を外しちゃうんでダメですよ」とか言ったりします。

全然ダメではありません。

この他者のデザインのコンセプトを見つけるゲームは、作り手を呼んできて、答え合わせをしたい訳でもなく、何かのクイズでもありません。

作り手がコンセプトを考えているのと同じ深さまで潜れて考えられているか?という事が大切なんです。

それには、やはりある程度のコンセプトを真剣に考える経験と、「本当の作り手にも面白がって貰えるコンセプトを出してみよう」という、少し前のめりなと感性が必要になります。(勿論良い意味でです)

自分は、作り手と同じ深さにまで潜ってコンセプトを考えているか?その基準は、誰かに話してみてどれだけ納得してくれるか?、そして「心を動かしてくれているか?」にかかってます。

是非、誰かご自分のコンセプトを話せる相手を見つけて話してみて、反応を伺ってみてください。

特にデザイナー仲間でなくて構いません。可能なら数人に話してみるのも良いでしょう。

コンセプトには「感動」が必要

聞いた人の反応を見て、「ああ、筋は通ってるね」と言う納得度では足りないかも知れません。

簡単に言えば、「感動」がないとダメな気がします。」

感動までは敷居が高いにしても、「ああ、なるほど!」「ふーん」と驚き方は何でも良いですが、対面で話したら納得してくれたか?何となくわかりますよね。

驚きを持ってもらう、面白がってもらうとか、心は動いてしまう反応が必要です。何でもかんでも褒めてくれる優しい友人はやめておきましょう。忌憚ない意見を言い合える方であれば良いですね。

面白い、心が動く、感動するコンセプトの例

面白い、心が動く、感動するコンセプトとして外食産業で最近色々話題の、「スープストックトーキョー」のロゴデザインのコンセプトを、例にお話しします。

「スープストックトーキョーのロゴマークが、白と黒しか使われていないのは何故?外食産業のロゴって暖色使ってるのが普通だし不思議だよね?」

なんて言われて

「日替わり(週替わり?)のスープ自体が色とりどりだし、マーク自体は無彩色の方がスープもマークも映えると言うコンセプトで敢えて暖色とか使わなかったんだ。

 

モノクロのロゴデザインに合わせて、店舗デザインもアルミと木で出来てて何だかモダンだよね?」

 

あれも通常のファーストフードでなくて、大人の女性が一人でも来れる場を提供したかったからで、ロゴマークを白と黒だけで仕上げたのは、ブランディングにも関わるすごく大切な事なんだ。

なんて伝えたら、結構聞いた人は、驚いてくれる、と言うか、場合によっては「感動」してくれると思うんです。(本当のコンセプトも大筋、こういう事だと思います。ご興味ある方は、創業者の遠山さんの『スープで、いきます』等ご覧ください)

僕などはこのコンセプト(白黒ロゴの理由)を聞いて正直、結構感動しました。何故なら、外食産業のロゴは暖色中心、なんて10年前はデザイン本にも書いてあったような定石であり基本でもあった訳ですが、スープストックのロゴデザインを作った方、GOを出した遠山さんは、そこを覆して新しいトレンドを作ったようなものですからね(事実、それ以降、外食産業で白と黒のロゴマークデザインは明らかに増えたと思います)。

まとめますとコンセプトにはこんな風に「心が動く何か」や、「感動」があった方が良いです。

なので、デザイナーはデザインの狙い・コンセプトを考える時「これって面白いかな?」と言う視点は大事ですし、コンセプトを言葉にした時にそこに少しでも驚きがあった方が良いと心得て頂きたいです。

その意味で言えば、さっき僕が、仮の例としてあげた、行動を大事だと書いていいる「Life Change!」と言うビジネス本のタイトル色が、赤やピンク色にしたのは、行動を促す色が一般的に「赤」と言われているから…云々のコンセプトは、例として出会っても「我ながら」凄くつまらないです(笑)。

ここから、何度も自分とブレインストームを繰り返して興味深い、聞いた人の心を動かすコンセプトにしていかなければなりません。

幾つもの視点からアイディアを出さないとだめかも知れません。

そんな事をデザインする前に、頭をフル回転させてごちゃごちゃ考えているのがデザイナーなんですね。

そのコンセプトを聞いた誰かが「ああ、なるほど!」と納得してくれる、腹落ちしてくれる、そして感動もあるようなデザインのコンセプトを、自分が作り出すデザインにでも言い表せるようになれば、あなたの作るデザインのクオリティは必ず上がります。

※勿論、そのコンセプトに負けないビジュアルを作り上げる表現力は絶対的に必要ですが…今回はとりあえず追いません!

手始めに、身の回りにあるデザインで、自分が感動したデザインやクリエイションを探してみて下さい。

そして出来れば、それを作ったデザイナーと同じ深さで、きちんと論理的な納得感もありつつ、言葉で聞いただけで心が動くようなコンセプトを考えられるようになりたいものです。

つまりは、他社のデザインを借りてコンセプトメイクのシュミレーションをさせてもらう訳です。

その対象は、ドラえもんだろうがアンパンマンだろうが、構いませんが、やはり、デザイナーであればあまり範囲を広げずにデザインからコンセプトを探す方が良いですね。

一つだけコツをお伝えするとすれば、あなたが心から素晴らしいクリエイションだと思うものが良いでしょう。

そしてデザイン本に載っている架空に作られたデザインは純度が濁るのでやめましょう。

あれらは元々、何かの基本法則を説明する為の作例の(意匠の)クオリティを上げる事で、無理矢理に巷のデザインとして作り上げたモノですから、コンセプトは当然リアルなものではないのでそこに根源的な感動はないはずです。

駅ナカのポスターでも通勤電車の吊り広告でも、何でも良いので素敵なデザインを探して彷徨ってみて下さい。

別にネット上でも良いのですが、自分自身、街を動きながら見つけていくのも頭も働いて、良い考えも浮かんできたりします。

とにかくクオリティ高いプロの成果物は、必ず、そこに人の心を動かすコンセプトがあるはずですから。注意深く見ていけば、そのもの自体が何がしかの答えをあなたに伝えてくれるはずです。

今回、かなり大切なお話をさせて貰ったつもりです。一方で結構深い内容だったのでわかりずらかったかも知れません。でも「そうだな…ビジュアル見て感動とかしたけど、コンセプト聞いてもう一段、感動した事ってあるな!」と思い出して頂くだけでも十分に思います。

「コンセプト探しゲーム」は、ただのゲームではなくて、コンセプトメイキングのシュミレーションな訳です。

くどいようですが(笑)「コンセプト探しゲーム」は拙著に詳しく書いてます。ご興味ある方は是非、読んでみてください。

● 『センスがないと思っている人のための読むデザイン

(都内であれば、丸の内丸善に比較的在庫あります)

それでは最後まで読んで頂き、有難うございました。

image by: small1 / Shutterstock.com

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デザイナーだけでなくノンデザイナーの方にもデザインの基本や奥深さをわかりやすく伝えることをテーマに2008年より配信し続けてきました。デザインの現場で実際に起きている出来事も交えリアルに役立つ情報をお届けしています。2021年4月にはこのメルマガの内容をまとめた「センスがないと思っている人のための読むデザイン」という書籍を出版し好評を得てます。※ググると出てきます。デザインに興味のある方は是非読んでみてください!

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【著者】 カマタ 【発行周期】 ほぼ 週刊

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