スマホ各社がシノギを削るなか、イオンモバイルは「家族向け」の画期的なプランを発表し、大手キャリアに殴り込みをかけたようです。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、家族でシェアすることを前提とした大容量プランを発表したイオンモバイルの戦略を「上手いやり方」と評価。早期に100万契約を達成できるのでは?と期待を寄せています。携帯のプロを感心させたプランの中身とは?
イオンモバイルが月額1万円超の「200GBプラン」投入。家族のシェア需要を狙い撃ちし、100万回線達成を目指 す
イオンモバイルが2024年3月15日、料金の改定発表会を行った。
「さいてきプラン MORIMORI」に関しては30GB、40GB、50GBで値下げを実施。さらに10GBごとの追加を550円刻みで提供するとともに150GB、200GBという大容量プランの追加も行った。
「200GBで1万円を超えるなんて、キャリアのデータ使い放題プランを契約した方がいいのでは」と一瞬、頭をよぎったが、イオンモバイルによれば「シェアプランを意識したデータ容量」ということだ。
イオンモバイルでは、家族でデータ容量をシェアするといったユーザーが増えている。今回、シェアの対象を5回線から8回線に増やすことで、家族だけでなく両親を追加するといったことが可能になる。
また、イオンモバイルでは、データシェアを行う家族それぞれに利用できる最大容量を割り振るといった事ができるようになるため、誰かが使いすぎて、ほかの家族が使えず、不満が出るということもなくなるようだ。
イオンモバイルのシェア前提という料金プラン設計は、戦略としてはとても上手いやり方ではないか。
MVNOでは、最近、中容量から大容量プランの強化が目立っているが、容量を増やし、基本料金を上げようと思うと、5000~6000円といった値付けになってしまい、キャリアが提供するデータ使い放題プランの金額に近づいてしまう。もはや、値上げするにも上限の壁にぶつかってしまいそうになっているのだ。
その点、イオンモバイルは家族での利用を前提とすることで、150GBや200GBといった大容量プランを提供。1契約あたりのARPUを上げることに成功している。
今後もスマホにおけるデータ消費量が増えていっても、接続料も低廉化が進むだけに、今の価格帯を維持したまま、容量を増やしたプランを提供し続けられるのではないか。
イオンモバイルの場合、やはり全国にイオンモールというリアル店舗があるのが強い。
しかも、今回、イオンモバイルの店舗だけでなく、新規や乗り換えの契約手続きが行えるイオンカードカウンターを拡大するという。
「同じイオンモールのなかでカウンターが増える意味があるのか」と、またも首をかしげたが、巨大なイオンモールの中で、イオンモバイルの店舗やカウンターはどちらかと言えば、上層階にあったり奥の方にあったりと目的がないと訪れないような場所にある。
一方で、イオンカードのカウンターは1階の人通りが多い場所で、呼び込みをしながらお客さんを獲得していたりする。
イオンカードを手がけるイオンフィナンシャルサービスに契約手続き業務の委託を本格化させることで、さらなる契約者獲得を狙っていくというわけだ。
イオンモバイルでは2029年3月末までに100万契約を狙い、MVNOコンシューマー市場シェアNo.1を目指すという。家族利用のシェア前提で複数回線契約がメインとなれば、もっと早期に100万契約を達成できる可能性は十分にありそうだ。
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