「選択的夫婦別姓にしないと…500年後は全員『佐藤』?」。4月1日付の朝日新聞に、エイプリルフールのジョークのような見出しの記事が掲載され話題となりました。そんなニュースを取り上げているのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんはメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、東北大高齢経済社会研究センターが公表した試算結果を紹介するとともに、圧倒的に女性が不利となる「夫婦同氏制」を未だ法の定めとしている日本政府の姿勢を疑問視しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
このままでは日本国中が「佐藤さん」になる危険性
ちょっとばかりおもしろい試算結果が公表されました。
もし、選択的夫婦別姓が導入されない場合、約500年後の2531年に、日本人の全員の名字が「佐藤さんになる?!」というのです。
推計したのは、東北大高齢経済社会研究センターの吉田浩教授です。現在、国内で最も多い名字は「佐藤」で、全体の1.5%を占めます。結婚した場合、ほとんどの妻が夫の姓を名乗るので、「このままいくと佐藤さんだけになるかもしれない」との仮説を検証したところ、2446年に日本人の50%が「佐藤」になり、2531年に「佐藤」の占有率が100%に。一方で、選択的別姓が導入された場合は、2531年時点でも佐藤姓の占有率は7.96%にとどまり、多様な名字が保たれるという結果だったそうです。
2531年…って。笑
かなり先の話なので、このとき「結婚」という制度があるかどうかはわかりませんが、全員が「佐藤さん」だと苗字自体が意味をもたず、苗字という概念(?)はひょっとすると消滅してるかもしれません。これはこれでややこしい気もしますが。
いずれにせよこの試算結果が意味するのは、これだけ多様性だのなんだと謳われているのに、「結婚」という制度だけが多様性から切り離されているという“不自然”を数字で示した点にあります。それは同時に「男性優位社会」への警鐘であり、「個人の尊厳とはなにか?」という
問いかけではないでしょうか。
そもそも法律で規定された「夫婦同氏制」をいまだに採用してるのは世界で日本だけ。ほとんどの国がいくつかの選択肢を持たせています。
アメリカでは1970年代に選択的夫婦別姓を導入し、ドイツも1993年に民法を改正し同制度を導入。2005年にはタイ、2013年にはオーストリア、スイスが選択的夫婦別姓を導入しています。
何度も本メルマガでは書いてきましたが「選択的」なのです。「各々の姓を名乗り続けろ!」と強制してるわけじゃないのですから、私には「選択的夫婦別姓」に反対すること自体、全く理解できません。
世界はとっくに「姓」の問題から「性」の問題に推移し、同性だろうと何だろうと「2人が幸せならいいじゃない」という認識が広がっているというのに。いまだに日本では「子供がかわいそう」という思考停止ワードで議論すら行われていません。
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3月8日、夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法に違反するとして、都内などに住む12人が国に賠償などを求める訴えを起こしましたが、メディアの扱いは決して大きくありませんでした。
原告には、仕事の都合上、30年前に結婚した夫と5回にわたり結婚と離婚の繰返しを余儀なくされた女性もいます。
女性はJAXA=宇宙航空研究開発機構で国際的に活躍する技術系職員で、NASA=アメリカ航空宇宙局などとの会議にも参加しています。NASAなどの施設はセキュリティーが厳しいため戸籍名でしか通行証は発行されず、結婚して名字を変えた場合に支障が生じるそうです。
こういった制度上の問題もありますが、「名前」は個人のアイデンティティの一部です。結婚して苗字が変わると旧姓でひもづいていた「キャリア」を維持できなくなる場合もあり、不利益を被るのは苗字を変えた「女性」です。
「すべての女性を輝かせます!」と一国の総理が世界に発信していたのに、夫婦別姓という文字を消すという真逆のことを平気でやってのけるのが、今の日本です。悲しいやら情けないやら、日本はいったいどこにむかっているのでしょうか。
ちなみに、明治3年9月19日に公布された太政官布告第608号「平民苗字許可令」以来、日本にはおよそ13万種類の名字があり、すでに5万種類が5軒以下の「絶滅危機」にあるそうです。
あなたのお名前なんですか?絶滅危惧種になりそうですか?
みなさまのご意見、お聞かせください。
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