きわめて姑息。内閣府が選択的夫婦別姓の世論調査で使った“禁じ手”

shutterstock_647502061
 

希望する夫婦が結婚後もそれぞれの姓を名乗ることを可能とする、選択的夫婦別姓制度。その導入の賛否を問う世論調査を巡り、各所から疑問の声が上がっています。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、賛成者の割合が過去最低となった最新の調査で、内閣府が使った「禁じ手」を紹介。その上で、政府の同制度に対する「思惑」を推測しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

時事ネタ社会問題に鋭く切り込む河合薫さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

世論は操作されている?

今回は「数字のマジック」について、取り上げます。

内閣府が25日に公表した「選択的夫婦別姓に関する世論調査」で、「賛成」とする人の割合が、過去最低の28.9%だったことがわかりました。

えっ、なんで??ずっと増え続けていたのでは?と疑問に思った人も多いことでしょう。私自身、驚きました。なにせ、前回の調査では42.3%が「賛成」。1996年の調査開始以降、最も高い数字でしたし、その他の調査でも「賛成派」が増えている傾向は認められていました。

では、なぜ、今回の調査で「選択的夫婦別姓」肯定派が、こんなにも激減してしまったのか?

…「質問文を変えたことに加え、選択肢の順番も、調査方法も変えた」という、パネル調査の禁じ手をしたことが原因です。

研究者の端くれとして意見しますが、今回のような量的な調査は、政策の方向性を決めるのに極めて有効な手段です。

しかし、「数字」を意味あるものにするためには、インタビューなどの質的な調査を同時並行で行ったり、質問票を作る段階から当事者に参加してもらって「届く文言」を検討したり、

  • 調査方法はどうするか?
  • 質問を何番目にするか?
  • 選択肢の順番をどうするか?

などなど、詳細につめ、サンプルもバイアスがなるべくない方法で選び、

  • いつ実施するか?
  • 回収率を上げるためにどうするか?

と、綿密に制度設計した上で、調査をスタートします。

調査の妥当性と信頼性を高めない限り、「使えない」からです。

なのに…、国はいとも簡単に変えてしまったのです。

報道によれば、

  • 調査方法→
    「対面」から「郵送」に変更
  • 質問文→
    前回まで「1/制度の導入は不要、2/制度の導入に賛成、3/1だが、旧姓の通称使用に賛成」の3択だったものを、今回は「夫婦同姓制度を維持した方がいい」「夫婦同姓制度を維持した上で旧姓の通称制度についての法制度を設けた方がいい」「選択的夫婦別姓制度を導入した方がいい」に変更
  • サンプル→
    前回も今回も、60歳以上が45%以上を占める

コロナ禍で調査方法を郵送に変えざるを得なかったことは、理解できます。ランダムサンプリングをすると、60歳以上が多くなってしまうのも超高齢社会では仕方がないでしょう。

しかし、なぜ、選択肢の順番も、文言も変えたのか?

時事ネタ社会問題に鋭く切り込む河合薫さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • きわめて姑息。内閣府が選択的夫婦別姓の世論調査で使った“禁じ手”
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け