始めたきっかけは、友達から「お父さんを復活させてほしい」と依頼されたことで、次のように本人は語っていた。
「(AIで『復活』した父を見た)友達はとても感情的になり、涙を流しました。自分たちのやっていることは、人助けになるとわかったんです」
確かに復活を望んでいる人にとってはとても有難いサービスなのかもしれない。あなたはどうだろう?その制作者の張さん自身を再現した動画のあとに説明が入った。
その復活AIは、およそ1週間で完成し、費用は4,000元(約8万円)からだという。事故で亡くなった子どもに、もう一度会いたい。古い写真からおじいさんを復活させてほしい。そんな願いが日々、張さんのもとには寄せられているという。
儲かりそうだ。
ただ一方で、こんな問題も指摘されている。
2020年に事故で亡くなったアメリカのプロバスケットボール選手、コービー・ブライアントさんのAI動画。なぜか流ちょうな中国語をしゃべっていた。
このように、亡くなった有名人を生成AIで勝手に復活させてしまうケースが相次いでいるというのだから問題も起こるだろう。「死者への冒とく」「肖像権の侵害」といった批判があがっているらしい。
先ほどの張さんは、悪用されないよう本人や家族の同意をとっているとしたうえで、生成AIの可能性について次のように話していた。
「私は今、人々を救っていると感じます。人々に精神的な安らぎをもたらしているのです。私の夢は、普通の人がデジタルの力で『永遠に死なない』ことを実現することです」
急速に進むAI技術がもたらすのは心の救済か、それとも死者への冒とくか。重い問いを投げかけています…とニュース記事は終わった。
古代エジプトでは、誰もが死後の世界を信じていた。その世界は、死んだ者の社会的地位によって異なるが、誰もが死後の世界に必要な道具を用意していた。そして、ミイラと共に副葬品も埋葬される。
どちらかというと未来の世界という他界へ行っても生きられるように施されたのがミイラだと感じる。
人の死後について、世界に宗教は無数あるが、大きく分けて他界派と転生派に分けられるのだ。
他界派はキリスト教、イスラム教が代表だが、神道では「根の国」「黄泉の国」といった他界を説き、輪廻転生を説く仏教にも浄土教などひとまずは他界派に属するとしてよい宗派がある。
一方で転生派は原始仏教や禅宗、ヒンドゥー教などのインド思想。また神智学、前世療法など近代のスピリチュアリズムは東洋思想への傾倒から転生思想を採用しているものが多いらしい。
もちろん我々は死んだことがない以上、死後のことは知る由もない。寧ろ現実社会にこうした宗教観が人生観、人生そのものにどのような影響を与えるかについて考えるしかないだろう。
そして、宗教と倫理観に則って、各家族が生前にしなければならないことが増えていくのだ。
AIの進化によって、臓器移植同様に本人の死後にAI復活動画を作っても良いという許可と家族の同意が必要になりそうだ。
――(メルマガ『施術家・吉田正幸の「ストレス・スルー術」』2024年4月20日号より一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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