調査官の「ノルマ」が生み出す、違法な税務調査
では、すべての任意調査において、「これは税務調査をしないとならないだろう、と思われるくらいの不審な点」があるかというと、決してそうではないのです。
というより、任意調査のほとんどのケースは、不審らしい不審はない状態で行われています。
税務調査というと、任意調査であっても、税務署側が集めた情報の中で怪しい納税者をピックアップして、ある程度、下調べをして、「ここは調査するべき」という納税者に行なうものというイメージがあります。
一般の人の税務調査というのは、そういう認識があるはずです。が、実際の税務調査は、そんな丁寧な作業はしていません。
というのも税務署の調査官には、調査件数のノルマが存在します。
これは、明確に文書に記載されたノルマではありませんが、実質的にノルマが与えられているのです。
このノルマをクリアできなければ、勤務評定が低くなりますので、実質的なノルマなのです。
そして調査件数のノルマを達成するためには、「不審な点がある納税者」だけではなく、ろくに情報がなく、ほとんど不審な点がない納税者も調査しなければなりません。
税務署は、
「売上が上がっているけれど、利益が出ていない」
「この事業者はしばらく税務調査に行っていない」
という程度のぼんやりとした理由で税務調査を行います。任意調査で「課税漏れの疑いのある資料」などを持っているケースは、10件に1件もないといえます。
もちろん、ぼんやりした理由しかないのに税務調査をすることはできないので、適当に税務調査をする理由はつくっています。