鹿児島県警察に忖度し、真実を報道しようとしない大マスコミ
だが、この本田氏の言い分は、今のところ大メディアでは慎重に扱われている。記者クラブを通じた警察組織との関係に配慮した報道をしているからだ。
たとえば、本田氏が第三者に提供した情報には「公表を望んでいない被害女性の氏名が含まれている」「同僚だった前刑事部長の名前や住所などを問い合わせ先として同封していた」(いずれも朝日新聞より)などと、守秘義務違反の容疑事実にそった内容が、本田氏の陳述に関する部分よりも先に書かれ、記事の構成上、重視されている。
そもそも新聞など大マスコミは「客観報道」の名のもとに、警察、検察、役所、政府高官といった「権威」の公式発表に安易に依存することが慣習化しているのだ。
本田氏が情報を送った「とある記者」とは誰で、情報がどんな内容だったのかについては、6月6日から8日にかけてネット上の調査報道サイト「ハンター」に掲載された記事「鹿児島県警『情報漏洩』の真相」で知ることができる。
ライターの小笠原淳氏が執筆したその記事によると、今年3月下旬、差出人不明の郵便物が同氏あてに送られてきた。その中には鹿児島県警の不祥事の少なくとも3件の概要を記した文書が入っており、その1枚目には「闇をあばいてください」と大きく印字されていた。
小笠原氏は元札幌タイムス記者で、「北方ジャーナル」や「ハンター」に記事を寄稿している。「ハンター」は鹿児島県警の不祥事をこれまでも再三にわたって取り上げてきており、本田氏が「ハンター」執筆陣の一人である小笠原氏に情報を流したのも、そのあたりに理由がありそうだ。
もっとも、差出人不明の郵便物だったため、本田氏から送られてきたものだと小笠原氏が気づいたのは、6月5日の「勾留理由開示」後に、「札幌市在住のライターの男性」に送ったという報道があってからだという。