盗撮・ストーカー・公金詐取。口封じで「ハンター」を家宅捜索
本田氏が記した鹿児島県警の不祥事は主に3つある。
そのうち、盗撮事件は、枕崎市内にある公園の公衆トイレが現場。被害者女性がドア上方にスマートフォンがあるのに驚いて声を上げ、ドアを開けると、盗撮犯は白い車で逃走した。警察が付近の防犯カメラを調べたところ、白い車が警察車両であることがわかり、12月中旬の事件があった日時にその車両を使っていた署員が特定された。にもかかわらず、本田氏の意見陳述にもある通り、野川本部長は捜査に待ったをかけた。
「巡回連絡簿を悪用した犯罪行為」についても詳細に書かれていた。鹿児島県内の警察署の駐在所に勤務していた30歳代の男性巡査長が一昨年4月、パトロール中に知り合った20歳代女性の個人情報を駐在所の巡回連絡簿から不正入手し、その女性に頻繁にLINEを送るようになった。その内容が「抱いていい?」など不適切なものが多かったため、女性が交際相手に相談、その交際相手がたまたま警察官だったことから県警本部の知るところとなった。
今年1月に捜査員3人が女性宅を訪ね、女性と両親に捜査状況などを説明。今年2月上旬になって、女性が事件化を望まない意向を示したため、捜査は唐突に終了したが、「巡回連絡簿が犯罪に使われたという事実は極めて重く、県警はその点だけでも公表して謝罪するべきだろう」と小笠原氏は指摘する。
もう一つは、警察幹部が超過勤務手当を不正請求していたことをひた隠しにしている疑惑だ。2022年、50歳代の男性警視が鹿児島中央署に勤務していた頃、実際よりも遅い時刻に退庁したように装う申告をし、超過勤務手当を不正に取得していたが、県警本部はその事件化を見送ったという。
小笠原氏はこれらの文書データを九州地区を拠点とする「ハンター」と共有し、鹿児島県警への補足取材を依頼した。
それまでにも県警の捜査について疑問を呈してきた「ハンター」は、昨年10月、自社記事を補強する材料とするため「告訴・告発事件処理簿一覧表」と呼ばれる内部文書を、個人情報を黒塗りにして掲載した。
県警は各警察署や県警本部で入力した95の事件のデータだと判断し、今年3月、情報を漏らした曽於警察署の巡査長を逮捕、「ハンター」側への家宅捜索を同4月に実施した。そのさい、本田氏から小笠原氏に送られた文書の画像を見つけ、5月31日に本田氏を逮捕した。