懸念されるイスラエルを標的としたテロの発生
では、今回のパリ五輪ではどのようなテロが想定されるのか。1つは、イスラエルを狙ったテロだ。昨年10月以降、イスラエルとパレスチナ自治区を実行支配するイスラム主義組織ハマスなどとの間では戦闘がエスカレートしているが、イスラエルはガザ地区への容赦のない攻撃を続け、一般市民の死亡者数は3万人を超えている。それによってイスラエルへの風当たりが強くなり、イエメンやレバノン、シリアやイラクなどに点在するイラン系の武装勢力は反イスラエル的な闘争をエスカレートさせている。
過去にはブルガリアやジョージア、インドやタイ、アルゼンチンなど各国でイスラエル権益を狙ったテロが発生、もしくは未遂事件が明らかとなっており、レバノンのイラン系武装勢力ヒズボラの関与などが指摘される。また、ドイツやオランダなどではハマスのメンバーや関係者らがユダヤ教のシナゴーグなどを狙ったテロを計画していたとして逮捕されており、パリ五輪においてはイスラエルを狙ったテロが最大の懸念と言えよう。パリ五輪ではサッカー日本代表が7月30日にイスラエル代表と対戦することになっているが、極めて注意が必要だろう。
また、今年1月にイラン、今年3月にロシアで大規模なテロを実行したイスラム国ホラサン州の動向も懸念されよう。イラクとシリアで活動するイスラム国の本体は既に弱体化しているが、アフガニスタンを拠点とするイスラム国ホラサン州は海外でのテロ活動を活発化させている。ドイツやオランダ、オーストリアなど欧州ではこの組織のメンバーらが相次いで逮捕されており、フランス当局もこの組織によるテロを極めて警戒している。ロシアのテロ直後、フランスではテロ警戒水準が最高レベルに引き上げられ、開会式が近づくにつれパリは緊張感が強く漂うことになる。
排除できないロシアが国家ぐるみでテロを企てるリスク
一方、可能性としてはそれほど高くはないが、ウクライナ戦争で欧米と対立するロシアが国家絡みでテロを企てるリスクも考えられよう。マクロン大統領はウクライナへの派兵を示唆する言動を繰り返しており、ロシアとフランスの関係は極めて悪化しており、ロシアが国家絡みで物理的な暴力行為に出る恐れもフランス当局は考えていることだろう。無論、サイバー攻撃などの非物理的な手段は考えるまでもなく実行されよう。
オリンピックは平和の祭典であり、オリンピックでテロなどは起こってはならない。しかし、過去のオリンピックでの出来事、そして今日の国際情勢に照らせば、上述のようなリスクが現実的なものとしてあると言わざるを得ない。
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