7月26日に幕を開けるパリ五輪。国際情勢は近年にないほどの緊張状態となっていますが、「平和の祭典」は全17日間の日程を無事に乗り切ることができるのでしょうか。安全保障や危機管理に詳しいアッズーリさんは今回、これまでの五輪の会期中に発生した事件を振り返るとともに、今夏のオリンピックで想定されるテロについて考察。その標的となりうる国、さらに国家ぐるみでテロを企てる可能性のある国の具体名を挙げています。
かつてはイスラエル選手ら11名殺害事件も。パリ五輪でテロは大丈夫か
ドイツでは現在、サッカーの欧州ナンバー1を決めるEURO2024が行われており、各試合は各国のサポーターでほぼ満員御礼となり、日本でもサッカーファンは眠れない夜を過ごしている。しかし、サッカースタジアムの外ではテロを警戒する治安部隊が厳重な警備体制を敷き、非常に緊張感が漂っている。最近もアフガニスタンを拠点とするイスラム国ホラサン州のメンバーとみられる男が逮捕されている。
そして、EURO2024の終わりと同時に開催されるのがパリ五輪だが、パリ五輪においてテロは潜在的ではなく現実的なリスクだろう。治安当局がテロ対策を怠れば、テロは高い確率で考えられよう。過去を振り返っても、オリンピックはテロ組織の格好のターゲットになってきた。
1972年のミュンヘン五輪では9月5日、パレスチナ武装組織「黒い九月」が選手村のイスラエル宿舎を襲撃し、人質を獲って立て籠り、イスラエル選手ら11名が殺害された。1996年アトランタ五輪では7月27日、アトランタの五輪百周年記念公園で仕掛けられた爆弾が爆発し、1名死亡、100人以上が負傷し、白人至上主義の男が逮捕された。2008年の北京五輪の時には、中国からの分離独立を掲げ、新疆ウイグル自治区を拠点とする東トルキスタンイスラム運動の活動が活発化し、雲南省昆明市では16人が死傷するバス連続爆破事件が発生した。
2012年のロンドン五輪では幸いにもテロは発生しなかったが、スペイン・ジブラルタルでは五輪をパブリックビューイングしていた人々を狙ったテロ未遂事件が発覚し、チェチェン人2人、トルコ人1人が逮捕された。2014年のソチ五輪でもロシア当局が厳重な警備体制を敷いたことからテロは起こらなかったが、その直前には南部ボルゴグラードなどで繰り返しテロ事件が発生し、ロシア南部のイスラム過激派の活動が活発化した。2016年のリオデジャネイロ五輪でも開催期間中テロは起こらなかったが、イスラム国の過激思想の影響を受けたとされる地元の若者らが逮捕され、イスラム国のメンバーと連絡をとり、テロを計画していたとされるレバノン系ブラジル人がオリンピック開幕直前に逮捕された。









