東京都では
東京都教育委員会は、2022年に児童生徒を教職員等による性暴力から守るために第三者相談窓口を設けた。各記事などによると、第三者が相談を受けるというのが画期的で、弁護士さんが相談をうけてくれるようだ。
さて、2024年6月下旬に2023年度の相談数などの報告があったが、2023年度は1,011件で初年度のおよそ4倍となった。
4倍になった理由としては、「体罰や不適切な指導」として、生徒らが教職員に関する不安など「傷つく言葉を言われた」などの項目を追加したためだろうとし、性暴力が疑われる事案自体は減少していると都教委は発表している。
● 児童・生徒を教職員等による性暴力から守るための第三者相談窓口(東京都の相談窓口)
これは、東京都教育委員会の取り組みであるから、他県にこのような相談窓口が無ければ管轄外となり、東京都に千葉県のことを相談しても東京都は動きようもない。吉野家の牛丼をつゆだくで頼んだのにつゆだくではない牛丼が出てきたと松屋に文句を言いに行くようなものだからだ。
ただし、令和3年に「教育職員等による児童生徒性暴力の防止等に関する法律」が公布され、令和4年4月1日から施行されているはずだから、何らかの窓口が各都道府県にあるはずなのだ。
検索してみるとだいたいの都道府県には相談窓口はあるようだった。不適切指導や体罰、性暴力やセクハラに悩むのであれば、まずは公共の相談窓口に相談するのがよいだろう。
報道される事件をみて、ハナから信用できない、どうせ隠蔽されるんでしょと相談しない選択をするのは賢い選択とは言えない。まずは相談する、これはおよそ記録され、いつ誰に相談したか、どのような内容であったかは表に出ないのは当然だが、記録されるはずで、後に何らかの隠蔽にあったとしても記録自体を消すことは原則できないだろう。
事実として、東京都の相談窓口のケースでは、性暴力が疑われる相談から2件について事実確認があり懲戒処分をしているとのことだ。
だからこそ、被害を受けたらまず正規のルートに相談することは、回り道でも無駄な事ではなく、記録を残すという意味では意味のある事になるのだ。
私学は期待できない
ただし、私学についてはあまり期待できない。私学は主に学校法人がその設置者で独自の教育機関となり、教育委員会とは別となる。結果として、その私学自体に窓口が無ければ、有効な相談先は都道府県などの私学部や私学課、学事課など私学を監督する部署に相談するなどになるだろう。
私学については、文科省の見解でも「私学の問題は都道府県の担当であり、文科省が動く場合は学校経営などの問題、性暴力などは各都道府県の学事課が担当のはず」としている。つまり、教育行政は地方自治が原則であり、これを超えて権限が薄かったり、そもそも権限がない国が口出しをすると越権ということになりかねないという側面もあるのだ。
一方で、こうした空洞を埋めていくのが特定非営利活動法人などの役割となっているが、その全てを埋められるわけではないし、そもそもの権限がないのが現実だ。
いじめ問題で全国を飛び回る身として実感として思うことは、各県の教育委員会におけるいじめ問題や不適切指導、体罰についての対応に差があり、担当者によっては、全く知識がないと感じることがあるなど「当りが少ないくじ引き」状態だということだ。
ただし、それでもまだマシだと感じざるを得ないのは、私学を取り巻く環境はもっと悪いということだ。まず、私学自体が問題の隠ぺいに走ることが多く、監督部署などがほぼ動かないことが多く、例えばいじめ防止対策推進法というと、話し合いに、そのまっさらな教本を手にしてくることもあるということだ。
つまり、関連法を知らず、ちょっと前までは別の部署で全く別の業務をしており、問題自体に詳しくない素人が監督部署の担当という、とんでもなくお粗末なことが起きやすいのだ。これであれば、まだ「当りの少ないくじ引き」にかけた方がいいではないかと思えてきてしまうわけだ。
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