南シナ海を巡る問題で、中国との緊張が高まっているフィリピン。そんなフィリピンが今、「中国人によるスパイ疑惑」で大揺れに揺れています。今回、台湾出身の評論家・黄文雄さんが主宰するメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、2022年から同国北部のバンバン市長を務める女性が、フィリピン人になりすました中国人である可能性が高いとする記事を紹介。その上で、彼女のバックに存在する中国人たちの本当の目的を推測しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【中国】ますます露骨で強引な浸透工作を展開する中国
あまりに露骨。フィリピン人になりすまし市長に就いた“中国人女性”の正体
フィリピンのマニラ首都圏北方にあるタルラック州バンバン街というところで、映画のような事件が起こっています。まずは、どんな事件なのか、報道を一部引用します。
2022年にフィリピン北部で就任した女性市長について、捜査当局は中国人だった可能性が強いと指摘した。市長をカジノ犯罪関与の疑いで調べ、実態解明を進めている。
問題となっているのは、首都マニラ北部にあるバンバン市のアリス・グォ市長。黒髪で東洋人の風貌をしており、30代と主張している。22年の市長選に立候補したときは、地元で生まれたと申告していた。
騒ぎの発端は今年3月、警察が市内のカジノ賭博場を摘発したことだった。英BBC放送によると、賭博客の多くは中国人で、市長が敷地の多くを所有していたことが分かった。市長には出生や就学証明の文書がなく、「中国人では」という疑惑が浮上。マルコス大統領は「彼女がどこから来たのか分からない。市民権の問題がある」として、捜査を指示した。
市長は上院の喚問などで、父は中国人で母はフィリピン人メイドだったと主張した。非嫡出子として農場で育てられたため、素性を示す証明書がないのだと釈明した。
フィリピン紙スターによると、6月末になって捜査当局は、市長の指紋が別の中国人女性のものと一致したと発表した。疑惑を追及してきた上院議員は、この中国人女性は2003年にフィリピンに入国し、中国旅券に「1990年に福建省で生まれた」と記されていたと明かした。
バンバン市のカジノ賭博組織は、中国人やフィリピン人ら数百人の女性を監禁していたことも発覚した。大統領府直轄の組織犯罪対策委員会は、市長らが、違法なオンライン賭博や人身売買に関与した疑いがあるとみて告発した。市長は5月、捜査開始にあわせてオンブズマン組織から職務停止命令を受けている。
● フィリピンの女性市長に「中国のスパイ」疑惑 指紋で別人と判明、中国人の可能性が高く
中国人の女がフィリピン人を騙って市長に立候補し、市長として活動して、贅沢な暮らしをしているというのです。
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続々と明らかになる「中国籍」を裏付ける情報
この女性については、さらに詳しい情報が出ています。以下、報道を一部引用します。
フィリピンの上院は今年4月以降、公聴会を重ねてグオ氏の国籍問題を追及してきた。グオ氏は5月下旬の公聴会で、母親の身元が不明な理由を「幼少時代に母親に捨てられ、一緒に暮らしたことはない」などと説明。「私はスパイではなく、フィリピン人だ」と言明した。
本人が疑惑を否定してきたものの、6月中旬以降に中国籍を裏付ける情報が続々と明らかになった。
6月18日にはガチャリアン上院議員が移民局に03年に提出されたビザ申請書類をもとにグオ氏は中国人「グオ・フア・ピン」である可能性があると訴えた。母親として中国人女性の名前が記されているとも告発した。
27日には調査を主導するホンティベロス上院議員が国家捜査局(NBI)の指紋鑑定の結果を公表し、グオ町長の指紋と中国国籍のグオ・フア・ピン氏の指紋が一致したと追及した。ホンティベロス氏は「有権者とフィリピン人への侮辱だ」と非難した。
同氏は指紋鑑定に先立ち「アリス・グオ」という名前と生年月日が一致する別人の顔が載った出生証明書のコピーを公開した。グオ氏が中国籍を隠すため、別のフィリピン人の身辺情報を盗んだのではないかと批判した。
グオ氏の身辺に疑義が生じたのは、3月にバンバン町でオンラインカジノ会社が人身売買や監禁の疑いで摘発されたことが発端だった。
業者を家宅捜索すると、グオ氏が犯罪拠点となった建物を所有する会社の株式の半分を所有していたと分かった。身元に不明な点が多く、高級車やヘリコプターを所持していたことが注目され、町長として違法な業者を保護したのではないかとの見方が広がった。
この報道では、「グオ氏が中国籍を隠すため、別のフィリピン人の身辺情報を盗んだのではないか」とあります。もしそれが本当だとしたら、身辺情報を盗まれたフィリピン人の安否が心配されます。
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フィリピンに根を張っている中国のネットワーク
このアリス・グオ氏は、すでにフィリピン当局によって犯罪者と目されているようですが、彼女の後ろにいる中国人たちの本当の目的は何だったのでしょうか。
スパイというのは、決してその存在を知られずに機密情報を盗むというイメージがありますが、今回はその真逆です。メディアで手を振り、笑顔を振りまいて、堂々と市長としての存在をアピールしています。フィリピン政界に食い込み、政界の情報を得て、少しでも中国に有利な権益を得ようとしていたのでしょうか。
それとも、フィリピンでのオンラインカジノや人身売買などの犯罪を円滑に進めるために擁立されたのでしょうか。
公聴会での厳しい質問にも、堂々と受け答えして、疑惑をキッパリと否定する姿を見ても、丸メガネで手を振る柔らかい容姿とは逆の芯の強さが見て取れます。
中国はあの手この手で世界各地にスパイを送っていることは、もはや世界の常識ですが、ここまで現地をバカにしたやり方は珍しいのではないでしょうか。彼女が市長に当選できたのも、現地の中国人ネットワークのおかげではないかと勘繰ってしまいます。
とにかく、なりすましの女性が市長に当選できるほど、中国の目に見えないネットワークはフィリピンに根を張っているということです。中国の得体のしれない恐ろしさを感じます。
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image by: Municipality of Bamban, Tarlac
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2024年7月17日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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