日本株を買い続けてぶん投げた「ツーリスト投資家」の勘違い
2)の日銀の利上げが悪材料、というのも、不可解です。金融政策決定会合直後の7/31(水)は、前述のように、日経平均はその日のザラ場安値からザラ場高値に大きく持ち直しました。円相場も、同日15時辺りまでは値を保っており、大きな円高とはなっていません。それが、そのあとで円高と日本株安が進行した形です。
決定会合直後は利上げは株安・円高の材料ではなかったが、ある時刻からどろんと化けて株安や円高の最大の要因となった、というのは、怪しい主張だと言えます。
そもそも、短期金利が0.0~0.1%なら日本経済は順調で日本円は下落し続けるに決まっているが、それをわずか0.25%に引き上げただけで、日本経済はガラガラと音を立てて崩れ、日本円は暴騰が妥当だ、などということは考えにくいです。
おそらく、買われ過ぎの日本株や売られ過ぎの円相場が、巻き戻った、ということなのでしょう。
日本株の買い過ぎを手仕舞っているのは、昨年4月から今年7月まで上値を買い続けた、ツーリスト投資家(日本をよく知らないし、日本株投資の経験も乏しいが、日本株の上値を「誤って」買い続けた海外投資家)の投げ売りでしょう。
ということは、既に7月前半の買われ過ぎは吹っ飛びましたが、さらに少なくとも今年1~3月の株高も手仕舞いで消えうせる(結果として32000円辺りまで日経平均は下げる)ことになると見込みます。
もし昨年4~6月の上昇まで消し込まれるとなると、27000円辺りに下がることになりますが、当時から1年近く経っており、その間企業業績が1割程度は増えていますので、それを加味すると、3万円ちょうど辺りに下落する可能性はあると懸念します。
円相場の巻き戻りについては、先物のデータから推察すると、投機筋の円先物売りの反対売買が中心だと判断します(新NISAをきっかけとした、日本の個人投資家の海外証券買いは、円安の要因として誇張され過ぎていると判断しますし、そもそも個人が金融資産を国際的に分散することは、適切なことです)。
「インテルショック」がなくとも半導体セクターは早晩調整していた
3)については、確かにインテルの業績不振の度合いやリストラなどはネガティブサプライズだったと言えます。ただ、一頃まで「AI祭り」とでも呼ぶべき、AI関連の半導体が有望だとの観測を頼みに、半導体企業の株(その企業の半導体の販売先がAI分野であろうとなかろうと)や半導体製造装置など関連産業の株を、何でもかんでも買い上げるような投資家の行動が、あまりにも行き過ぎでした。
そもそも、PC向けやスマホ向けの半導体の需要は、持ち直しつつはありますが、決して手放しで順調だとは言えません。
こうした「AI祭り」の株価上昇が、維持不能だったので、インテルの業績不振がなくても、何か別のきっかけで半導体関連株の株価下落がどこかで生じ、それが株価全般の悪材料になったことでしょう。
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