日本人が喜ぶ「中国経済の“減速”や“鈍化”」は果たして本当なのか?

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中国の4~6月の国内総生産の伸び率が発表され、1~3月期に比べ低いことが確認されると、メディアには「減速」「鈍化」の文字が飛び交い、SNSでは、日本の『失われた30年』が中国で起こることを期待するような書き込みも目立ちました。そうした状況下で、中国の政治局会議が示した下半期の方針に注目するのは、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂聰教授です。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、「対外開放」の具体策として、製造業分野において外資参入制限措置の「ゼロ化」を打ち出した意味を解説しています。

3中全会と政治局会議が示す 習近平指導部が不動産不況よりも気にしていること

中国国家統計局が2024年4~6月の国内総生産(GDP)を発表(+4.7%)すると、メディアは一斉に「減速」「鈍化」と報じた。かねてから日本では「中国が、『日本の失われた30年』と同じ道を辿る」とかまびすしかった。SNSを中心に「やっぱりな」といったやや満足げな反応があふれた。

本稿の読者にはもう耳にタコだろうが、過去に日本で起きたことと現在の中国は同列視できない。景気が「悪い」、「もしくは良くない」という感覚は共有できても、彼我の程度の差は歴然だからだ。

中国人(大陸)観光客は、目下、湿った景気を嘆きつつ、欧州や東南アジアの観光地に殺到している。国内の観光地はなおのこと、どこも満員だ。気になるのは1人当たりの消費額が伸びないことである。日本への観光という意味では、大陸からの流れはまだ本格化していない。だが、それでも都心の高級ブランド店、高級レストランは中国人が目立つのが実情だ。

日本にビジネスチャンスを求めて中国の金持ちがたくさん来ているのも事実だが、彼らが日本で展開する事業のターゲットは、ほとんどが中国人だ。

さて、その中国で注目されたのが中国共産党第20期中央央委員会第3回全体会議(3中全会)であり、それに続く月末の政治局会議だった。3中全会が網羅的に国の問題に触れ、かつ大きな方向性を打ち出すのに対して、政治局会議は、より経済に特化して下半期の方針を打ち出した。

実は、3中全会が対外的にどんなメッセージを打ち出していたのかといえば、それは対外開放のさらなる加速だった。中国の思惑がストレートに外国メディアに伝わることはなかったようだが、この方向性は政治局会議であらためて強調された。少し長いが当該部分を以下に引用しよう。

「高水準の対外開放を推進し、市場化、法治化、国際化された一流のビジネス環境の構築をさらに進め、制度的な開放を着実に拡大して、製造業分野で外資参入制限措置の『ゼロ化』を実行し、サービス産業の開放の拡大に関する新たな試みを打ち出し、外資導入の下げ止まりと回復を促進する必要がある」

製造業分野に限っての話とはいえ、外資参入制限措置の「ゼロ化」を目指すというのだ。このメッセージが意識しているのは、明らかに保護主義であり、その震源地はアメリカのバイデン政権だ。

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