日本人が喜ぶ「中国経済の“減速”や“鈍化”」は果たして本当なのか?

 

中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して以降、中国と西側先進各国は貿易面での相互依存を深めてきた。一方、昨今では、イデオロギーや価値観の違いや安全保障上のリスクが強調されるようになり、これまで築かれた依存関係を見直す動きが加速している。いわゆるデカップリングであり、デリスキングだ。ただ中国との相互依存関係は利益によって導かれたもので一口に依存関係の解消といっても容易なことではない。

例えば、欧州のケースだ。ブルームバーグの資料によれば、欧州の多国籍業のなかには中国に深く依存する企業が多く、例えば世界最大の鉱業グループBHPは58%、リオ・ティントは54%、スオッチは38%、エルメスは34%という高水準の依存なのだ。

このメルマガではEVの回ですでに触れたようにドイツの自動車メーカーの中国市場への依存も顕著だ。フォルクスワーゲンはトップで42%、続くメルセデスベンツもBMWも35%という深い依存だ。これを今後「政治的に」無理やり引きはがそうというのだから難事業である。

これが少なからず貿易に従事する事業者を困惑させ、「政治が経済発展最大のコスト」という分かりやすい例となっている。しかも世界経済はコロナ後の痛みからまだ完全に回復しきっていないなかでのコストだ。

中国はこの世界の変化を当然のこと強く警戒している。それが政治局会議で出された「現在、外部環境の変化がもたらす不利な影響が増え、国内の有効需要が不足し、経済運行に分化が現れている」と記述された部分だ。

つまり「中国排除」という世界の変化に対し、「改革」の断行で適用しようというのだ──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年8月4日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

image by: thelefty / Shutterstock.com

富坂聰この著者の記事一覧

1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 富坂聰の「目からうろこの中国解説」 』

【著者】 富坂聰 【月額】 ¥990/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

print
いま読まれてます

  • 日本人が喜ぶ「中国経済の“減速”や“鈍化”」は果たして本当なのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け