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現役教師がスキューバ初体験で学んだ「親切レベルの調整方法」とは?

現役小学校教師の松尾英明さんは、八丈島での旅行でスキューバダイビングを経験したそうです。その際に、教育にもつながる学びがあったとか。自身のメルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』のなかで、その理由を語っています。

相手に応じた親切レベルの調節

縁あって、伊豆諸島の一つである八丈島を旅行した。とにかく色々やったが、中でも印象的な体験の一つとして、初スキューバダイビングをした。

シュノーケリングは何度か体験があったが、酸素ボンベをつけて潜るのは初めてである。こんなもの付けて沈んだら上がってこれないのではないかと思う重さである。インストラクターの方が一緒にいなかったら、絶対拒否するところである。

もう、あらゆる装備の付け方から操作、移動方向までおんぶに抱っこ状態である。しかし、今回はこのお陰でとても助かった。

潜ると耳と頭が痛くなるので「耳抜き」をするが、なかなか水圧に慣れない。そっちに集中するだけで既に手一杯で、他のことなぞさっぱり気が回らない。

とにかくリラックスを心がけて、呼吸が乱れないよう集中した。そこさえ整えておけば、インストラクターの方がぴたりとついて潜りっぱなしにさせてくれるのである。(逆を言えば、心身の状態に異常が起きれば水面上に出ざるを得ない。)お陰で、美しい海の中を時間いっぱいゆっくり楽しみ、海ガメと一緒に泳ぐという願いが叶った。

何を学んだか。初心者には「手取り足取り」が最も安全・安心ということである。

いきなり千尋の谷に突き落とされたら、ほとんどの個体は生き残れない。何かの特別な選抜をするのでない限り、あまりおススメできる方法ではない。

思えば、子どもの頃の初スキーは、恐怖体験として心に残っている。どういう経緯だったのか、山頂に連れていかれ、こぶだらけの上級者コースに入り込んでしまった。超初心者にとって、滑るどうこうの話ではない。そこにいるだけで迷惑千万である。完全に誰かに抱えてもらって下山するか、板を外して抱えながら歩くしかない。本人の能力と場のレベルが全く合っていないのである。

逆に言えば、ある程度慣れた人にとっては、ぴったりくっつかれるのは不自由でしかない。つまり、親切レベルの調節が必要ということである。

相手が未熟であれば、きちんと支えて教えてあげる必要がある。がんばればできることであれば、適度に手放していく必要がある。いつまでもくっついてあげていては、成長がない。

(更に言えば、がんばってもできないことはできない。例えば、一般的な小学生にバスケのダンクシュートを教えて練習させる意味はない。身体的に考えて、どうやっても届かないからである。)

例えるなら、運動会の表現指導である。最初はパート毎に動きを丁寧に教えて真似させる。そして前に立ち、鏡の動きで踊ってあげる。

しかし、これをずっとやり続けていてはいけない。ただ真似するだけで、いつまで経っても覚えない。(最もひどい場合だと、本番でも教師が朝礼台ならぬ「お立ち台」上で踊っている。主客転倒かつ本末転倒である。)

自分で踊れるようにするのである。お手本から離れて、自分なりの表現にできたら最高である。

ダイビングの話に戻すと、まずは安全・安心に楽しむ体験をすること。次に、自分でやれるような簡単な場で練習すること。本人が求めるなら、資格をとって自分で自由に動き回ればいい。(更にレベルが上がれば、人に教える立場になる。)

教育のとるべきステップと同じである。

今は「自由」に価値が置かれ過ぎて、きちんと教えるという行為の地位が低い。これは、よくよく考えた方がよい。まずはきちんと教えてくれる人がいてこそ、教育は成立するのである。(そうでなければただの放置・放任である。)愛情のような抽象的なものさえ、まずは周囲に教えられてこそ覚えるものである。

相手のレベルに応じていることである。一年生初期の初めて尽くしの段階と、六年生が同じはずがない。また、同じ学年内でも4月と10月が同じはずがない。それが好きで得意な人と、そうでない人が同じはずがない。

『不親切教師のススメ』で書いたように、手をかけすぎはダメだが、放置しすぎもダメである。

「自由」の理想の旗を高く掲げ、それを名目に適切な指導・必要な指導を放棄していないか。そのレベルに応じた適切な指導、あるいは支援を考えることが大切である。

image by Shutterstock.com

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【著者】 松尾英明 【発行周期】 2日に1回ずつ発行します。

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