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石破か河野か小泉か。岸田メガネの「次の首相」にお願いしたいたった2つだけのこと

8月14日、突如として次期総裁選への不出馬を表明した岸田首相。その理由として「裏金問題」を上げる向きも多数ありますが、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは「裏金問題で失脚した」と考えるのは妥当ではないとします。今回北野さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』でそう判断する根拠を明らかにするとともに、我々国民が持ち続けるべき「決意」を提示しています
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:岸田総理の功罪と新総理に望むこと、国民が絶対に忘れてはいけないこと

外交だけは合格点“増税失脚メガネ”の功罪と次の首相への2つの願い

皆さんご存知だと思いますが、岸田さんが「9月の総裁選に出馬しないこと」を宣言しました。「ロイター」2024年8月14日付。

岸田文雄首相は14日午前に記者会見し、9月に行われる自民党総裁選に出馬しない意向を表明した。昨年11月に表面化した自民党派閥の政治資金問題などで支持率低迷が続く中、岸田首相は総裁選で自民党が変わる姿を示すことが重要と説明。「最も分かりやすい最初の一歩は私が身を引くことだ」と語った。新総裁選出後に退任する。

というわけで、今回は、

を考えてみましょう。

ウクライナ支持の立場をはっきりさせた岸田首相の「正解」

まず、岸田総理のよかったことについて。岸田さんは、外交がすばらしかったです。

岸田さんは、安倍総理の「自由で開かれたインド太平洋戦略」を引き継ぎました。

2021年は、バイデンさんと共に、着々と中国包囲網を形成していった。

2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻がはじまると、岸田さんは、はっきりとウクライナ側につきました。日本には、一部「プーチン・ロシアにつけ!」と主張する人もいます。こういう人たちは、ヒトラーについて失敗した第2次世界大戦から全然教訓を得ていないのでしょう。

2022年3月2日、国連総会緊急特別会合で、ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議案が賛成多数で採択されました。ロシアを非難した国は141か国。これが、「反ロシアの立場を明確にした国の数」です。

棄権した国は35か国。「意思を示さず」が12か国。つまり47か国は、「中立」です。親プーチン派は、「中立の国々」を勝手に「プーチンより」に入れてしまい、「ロシアは孤立していない!」と主張します。しかし、中立は、中立です、

ロシア非難決議に反対した国、つまり、「親ロシアの立場を明確にした国」は、ロシア自身と北朝鮮、ベラルーシ、シリア、エリトリアだけでした。これが「親ロシア勢力」の実態です。それが証拠に、プーチン・ロシアに、武器、弾薬を支援しているのは、北朝鮮、ベラルーシ、イラン(主にドローン)しかいないのです。

「日本はプーチン・ロシア側につけ!」という主張は、「北朝鮮、ベラルーシ、シリアと同じレベルまで落ちろ!」ということです。だから、「ウクライナ支持」の立場をはっきりさせた岸田さんは、正しかったのです。

「いつもバイデンのポチ」だったわけではない岸田首相

2023年10月7日、今度は「イスラエル―ハマス戦争」が勃発しました。岸田さん、今度は「イスラエルを明確に支持」という感じではありませんでした。それで、G7は「日本抜き」で「イスラエル支持」の声明を出したのです。「産経新聞」2024年10月24日付。

先進7カ国(G7)から日本を除く6カ国首脳は22日、イスラム原理主義組織ハマスのテロに対し、イスラエルの自衛権を支持する共同声明を発表した。大規模戦闘の勃発後、米英独仏伊の5カ国は「クイント」と呼ばれる枠組みで連携しており、今回カナダが加わった。

岸田さんは、「バイデンのポチ」と呼ばれていましたが、「いつもポチだったわけではない」ことがわかります。

そして、この件、欧米は後に、日本の主張に近づいていきました。理由は、「イスラエルはガザ地区でパレスチナの民間人を『殺しすぎだ』という国際世論が高まっていった」からです。ここでも岸田さんは、「正しい判断」を下しました。

思い出してみましょう。立憲民主党の前身である民主党が政権にいた時代。鳩山さんは、「トラストミー事件」で日米関係をボロボロにしました。

ロシアのメドベージェフ大統領(当時)は2010年10月、ロシアの国家元首としてはじめて北方領土を訪問。日ロ関係は、最悪になっていました。

韓国の李明博大統領(当時)は2012年8月、竹島に上陸。さらに、「日王が韓国に来たければ謝罪せよ!」などと暴言を吐き、日韓関係は超険悪になっていました。

そして、2010年の「尖閣中国漁船衝突事件」と2012年の「尖閣国有化」で、日中関係は最悪になりました。

自虐史観で、何百万回でも謝罪を繰り返す決意を持っていた民主党の鳩山、菅、野田総理。しかし、アメリカ、中国、ロシア、韓国との関係は、まさに最悪になっていた。非常に興味深いパラドックスといえるでしょう。

安倍さんは、悪夢のような状態から、一歩一歩、外国との関係を修復していきました。そして、日米、日ロ、日韓関係は著しく改善され、日中関係もだいぶマシになっていたのです。

岸田さんは、日米、日欧、日印、日豪、日韓、日東南アジアなどとの関係を良好に保ちました。

日中関係、日ロ関係は、かなり悪いですが、これは仕方ないでしょう。

日中関係が悪いのは、アメリカが「米中覇権戦争」を戦っているからです。日本はアメリカの同盟国ですので、日中関係が悪いのは、「仕方ない」ということでしょう。

日ロ関係が悪いのは、ロシアが、隣国ウクライナを薄弱な根拠で侵略しているからです。だから、北朝鮮、ベラルーシ、シリアのように、ロシアとの関係が良好であってはいけないのです。

というわけで、岸田さん、外交はかなり立派だったと思います。

首相就任後ただちに消えた国民の声を「聞く力」

次に、岸田さん、何が悪かったのかを考えてみましょう。

皆さん、真っ先に思い浮かぶのは、「裏金問題」でしょう。しかし、「岸田さんは、裏金問題で失脚した」と考えないようにしていただきたいです。岸田さんは、【 増税路線で失脚した 】と考えて欲しいのです。なぜ?

岸田さん、当初は「聞く力」を強調されていました。国民の声をノートに書き留めている。1年間にノート3冊になるそうです。それを繰り返し繰り返し読む。「国民に寄り添っている」ことをアピールしていました。

ところが、「聞く力」は、総理に就任すると、即座に消えたようです。なぜ?日本国民はここ数年間、控えめにいっても「ひどい目」にあってきました。2019年、消費税率が8%から10%に引き上げられた。

2020年、2021年、新型コロナパンデミック大不況が世界と日本を襲い、バタバタとお店がつぶれていきました。私の近所でも、いきつけのお店、レストランがいくつか消えて、悲しかったです。2022年、2023年、ウクライナ戦争インフレ。これは、「新型コロナパンデミック」「ウクライナ戦争」など、岸田さんとまったく関係ない外的要因が生み出した悲劇です。

岸田首相が出してきた「長い増税リスト」の全容

しかし、ここで岸田さんは、「どうやって国民を救済するのか?」の選択肢があったでしょう。では、岸田さんは、何をしたのか?【 長い増税リスト 】を出してきたのです。

「税理士法人プライムタックス」のHPに長い増税リストが載っていました。転載してみましょう。

  • たばこ増税
    本体は健康の観点からたばこの消費を抑制するためのものだが、防衛費の財源として24年より増税予定。
  • 所得増税
    防衛費を確保するため24年から増税は決定しているが、定額減税が所得税から行われるため矛盾するとして時期検討中。
  • 復興特別所得税の延長
    3.11復興目的に37年までの予定だが、防衛費増のために14~20年延長が議論中。
  • 給与所得控除の廃止
    現行は30%控除されているが3%に減率することでサラリーマンには大打撃の可能性。
  • 配偶者控除の廃止
    扶養控除のない15歳以下との公平性確保と女性の「年収の壁」問題解消のために廃止を検討。
  • 生命保険料控除の廃止
    生命保険は元本よりも大きなお金がもらえる可能性がある点が個人投資と変わらないとされ、見直しを検討中。
  • 退職金の非課税枠を廃止
    「勤続年数×40万円」の控除が認められていたが、雇用の流動性を妨げているとして廃止が検討されている。
  • 扶養控除の縮小
    扶養控除の縮小が見直される見込み。
    一方、児童手当を高校生まで支給対象に広げ控除縮小とのバランスが問われている。
  • 法人増税
    防衛費確保のため付加税方式で4%~4.5%を予定。
    中小企業などへの配慮として、上乗せ分を計算する際、法人税額から「所得が2400万円の相当の税額」を控除予定。
  • 法人税の控除縮小
    賃上げによる税優遇措置で3%以上賃上げした大企業の控除縮小案が中小企業への優遇と同時に検討されている。
    大企業には実質的に増税になる可能性がある。
  • 後期高齢者医療保険の負担増
    出産育児一時金の一部を75歳以上も負担するようになる。
    段階的に負担対象者を増やす方針で、
    24年4月からは年収211万円超の人を対象に月平均430円を徴収。
    25年4月からは年収153万円超の人を対象に月平均430円を徴収。
  • 生前贈与の持ち戻し期間延長
    生前贈与制度に関するもので死亡の3年前から7年前に課税対象期間を延長する。
  • 結婚・子育て資金の贈与特例廃止
    1千万円以下は非課税だった結婚・子育て資金の一括贈与特例を廃止。
  • 教育資金一括贈与廃止
    教育資金の一括贈与が26年3月末で廃止予定。
  • 介護保険料負担増
    1割負担から2割負担に移行する対象者を大幅に拡大する見込み。
  • 国民年金納付期間延長
    少子化による財源不足の補填策として保険料の納付期間を5年延長して65歳までとする。
  • 公的医療保険の上乗せ
    「異次元の少子化対策」として財源を探し回った結果、歳出改革後の足りない分を「支援金制度」という名目で
    国民一人約500円程度の増額が検討されている。
  • 森林環境税の創設
    23年度に終了予定の特別復興住民税に替わり、森林環境贈与税とは同額の森林環境税が新設される。
  • 厚生年金支給減額
    現行で平均14万6000円支給されている厚生年金額を見直す。
    保険料負担は重くなる一方、受給額が減額される。
  • 走行距離課税の新設
    車の走行距離に合わせて課税しようというもの。
    しかし従来の車とハイブリッド、電気自動車等の問題やカーシェアリングなど課題は残る。
  • ケアプランの有料化
    介護保険サービスを受ける際のケアプラン(介護計画)費用の有料化を検討中。

出所はこちら→時事ネタ第23号 こんなにあるぞ!ステルス増税(税理士法人プライムタックス)

この「長い増税リスト」を見て、皆さんどうですか?正直、「岸田さんがこのまま総理をつづけていたら、負担がどんどん大きくなりつづけ、冗談ではなく〇される」と思いませんか?

結局「財務省のポチ」だったことを証明した岸田首相

結局、岸田さん、一番の問題はなんだったのでしょうか?

総裁選の前、岸田さんは、「なぜ私が【 財務省のポチ 】と呼ばれているのかわかりません」と話していました。ところが、総理になった後、岸田さんは、結局【 財務省のポチだった 】ことを証明したのです。

誰か知りませんが、岸田さんを【 増税クソメガネ 】と名付けました。そして「長い増税リスト」を見ると、岸田さんは、【 増税王 】と呼ばれても仕方ないでしょう。

外交が素晴らしかっただけに、岸田さんが内政において国民に地獄の苦しみを遠慮なく味合わせる政策をとっていたこと、本当に残念です。

国民が持つべき「次の総理が増税路線だったらすぐに打倒する」という決意

さて、新総理は誰になるのでしょうか?まだわかりません。石破さん、小泉さん、高市さん、河野さん、上川さんなどが候補に挙がっているようです。

新総理への願いは、二つだけです。一つは、「岸田外交を継承して欲しい」ということ。要するに、「ウクライナ支援」をつづけて欲しいということ。もちろん、ウクライナを助ける気が全然ないトランプさんが勝てば、再考が必要になるかもしれませんが。

もう一つは、「税金を絶対に上げない」ということですどれだけ国民の負担を増やせば気が済むのでしょうか?

そして、私たち国民が絶対に忘れてはならないことを書きます、それは、「岸田さんは、裏金問題で失脚した」と思わないことです。岸田さんは、【 増税路線で失脚した 】と考えて欲しいのです。

そして、私たちは、【 次の総理が増税路線だったらすぐに打倒する! 】という決意を持っているべきです。でないと、政府と財務省は、いくらでも増税をし、私たちの生活を破壊していきます(ちなみに、「南海トラフ地震に備えるために増税しよう」という話がでてきているようです。「東日本大震災」の歴史的悲劇すら口実にして復興増税した財務省は、いつでもどこでも増税の口実を探していることを忘れないでおきましょう)。

今回の話、「北野は大げさだな~~~」と思われた方。是非、以下の2冊をご一読ください。「なぜ日本は、暗黒の30年になったのか?」が完璧に理解できる名著です。

1.『安倍晋三 回顧録

この本の中で、安倍さんは、財務省の本質を次のような言葉で語っておられます。

国が滅びても、財政規律が保たれてさえいれば、満足なんです。
(p313)

2.『安倍晋三vs財務省

この2冊、是非ご一読いただき、さらにどんどん拡散していただきたいと思います。なぜ一人当たりGDP世界2位だった日本が、世界38位(韓国、台湾以下)まで落ちたのか?完璧に理解できるようになります。

日本は、民主主義の国です。私たちは、新総理が、国民の生活を破壊する【 増税路線 】にならないか、しっかり監視していきましょう。そして、親総理が【 増税路線 】になったら、民主的手段、合法的手段で、即座に政権を打倒しましょう。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2024年8月15日号より一部抜粋)

image by: 首相官邸

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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