日本を除くG7すべての国が出席見送り。中国が長崎の平和祈念式典“あの国不招待問題”に見せた冷静な反応

 

日本に対し「自国利益の考慮」を呼びかけ続けてきた中国

その理由は何なのか。

「日本がパレスチナ問題で左右両にらみで対応したのは、中東の石油と天然ガスが日本のエネルギーにとっての生命線だからだ。だからアメリカがいくらイスラエルをかばっても、イギリスのように追従する勇気は持てないのだ。中東のアラブ諸国の機嫌を取るために、一定の距離を置かざるを得ない」という。

エネルギーだけの問題ではない。

「インドネシア、マレーシア、北アフリカ、南アジアのような多くのイスラム諸国は、日本の重要な貿易相手であり、同様に良好な関係を維持しなければならない」とも解説している。

「今回のイスラエル・パレスチナ紛争(ガザ地区への攻撃)が起きて以降、日本はバランスのとれた姿勢を維持していて、昨年のG7首脳会談後のイスラエルの自衛を支持するG7の声明には参加しなかった。そして日本のメディアも、パレスチナ地域でのイスラエルの暴行を比較的積極的に報道してきた」という記述も中国でよく聞く平均的な日本の評価だ。

米中対立が激しくなって以降、中国は日本に対し「自国利益を考慮して」と呼びかけ続けてきた。

指摘しているのは言うまでもなく日米間に存在する利害の不一致だ。

なかでも中国が警戒しているのが、台湾海峡危機だ。アメリカが台湾や日本の側に立ち中国と直接戦争をすると仮定──これ自体に無理があるのだが──しても、戦場は東アジアなのだから、日本や台湾、中国とアメリカの利害が一致するはずはない。どこの国が勝ってもアジアが深刻な沈下に見舞われることは明らかだからだ。

もっとも中国の目には、日本が台湾海峡危機を利用して脱戦後を果たし、平和憲法の桎梏を説こうとしているとも映るので、それなりのメリットがあってやっているともみている。だが、その日本の行動が万が一台湾の独立勢力を過剰に勢いづかせてしまい、制御できない状況を作り出す危機が高まれば、最終的なデメリットはメリットを大きく上回るに違いない。

話をパレスチナ問題に戻せば、日本がこの問題を通して感じる利害の齟齬は、実は今後の世界貿易では常態化しても不思議ではないのだ。

アメリカが対中国でデカップリングを進めるとしたら、それは現実問題としてのしかかってくる。デカップリングが非現実だとしても、いま日本が対中貿易、ビジネスで得ている利益は失われる。

そうなればそれに代わる何かを開拓しなければならないのだが、その場合に有望なのは東南アジアや中東、アフリカである。

このことを日本はどうとらえてゆくべきなのだろうか。

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(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年8月11日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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