石破総理は「選択肢が少なすぎる日本」の危機を克服できるか?外交・安保も経済も“最善手以外すべて負け”のシビアな現実

 

ロシアや中国との関係も「現状維持」が最善手

次にロシアですが、プーチンの場合はまだ「旧ソ連の勢力圏を再度確保したい」というファンタジーで独裁政治の求心力を求めていた「だけ」です。

ですが、よりスケールの小さな後継者が出たきた場合には、日本としては千島返還というストーリーではなく、北海道侵略をどう防止するかという危機回避の発想で構える必要も出てきます。いずれにしても、現状維持ということを徹底しないといけないと思います。

現状維持ということでは、台湾海峡も全く同じです。ここにおける有事というのは何としても回避しなくてはなりません。台湾有事というのは、日本にとっては同盟、つまり自由と民主主義の防衛ラインが台湾海峡から与那国になり、直接対峙になるというような簡単な問題ではありません。

台湾有事というのは、中国が現在抱えている不動産バブル崩壊や、製品の過剰生産、思想の自由が実施できないために付加価値創造に限度がある問題、さらには中長期の人口減少など構造的な問題から「戦争へと逃避する」ことを意味します。

戦争というのは、命のやり取りになりますから、当然のことながら自由な言論はさらに圧迫されます。そうなると、この巨大な、しかし未熟なセミ資本主義社会がより強く歪められた形となり、不安定さが永続するという危険性が出てくるわけです。しかも後継者候補には目立った人物はおらず、全権を掌握できない代わりに対外強硬に転じるという可能性は年々増加するでしょう。

極めて良くない不安定というのが続くように思います。ですが、この巨額の不動産バブル崩壊の欠損は簡単には埋められません。薄く長く伸ばして事実上の償却を進めるのでしょうが、その間には経済的な自由度は制限されます。また、政治もより小粒の指導者による強引な判断が続くという可能性もあります。

そうではあるのですが、とにかく中国については現状維持を延々と続けるという判断しかないと思います。というのは、急速な変化としてソフトランディングシナリオというのは描けないからです。中国は統治するには規模が大きすぎます。税収も真面目にやると巨額になってしまいます。反対に不真面目にやれば思い切りマイナスに振れるし、それが全国レベルで集まると天文学的規模になります。

今回の不動産バブルの崩壊はそのパターンであり、これをどうやって償却するかというと、西側の常識のような処理をすると、全部の民間と国営の銀行が破綻して金融危機、信用危機になってしまうかもしれません。ですから政治判断で、政治的な与信を流し続けているわけです。ですが、その金の流れが、ある程度は西側の自由で市場に揉まれたカネとリンクしているので、回っているのです。

これを完全に断ち切ってしまうと、恐らく中国本土の住民の生活水準は半減してしまうでしょう。それは政府への不信、人口の流出という形で、国を蝕んでいきます。そうなれば、日本経済も大きな影響を受けることになります。

したがって、台湾への強硬策も、またバブル処理のハードランディングも、東アジア全体を巻き込む大動乱を引き起こすという意味で、選択肢からは外れると考えるべきです。そして、そのような破綻を回避するために、現状の延長で効果的な抑止力を維持するというのは必要と考えます。何よりも、中国の軍が暴発するのを防止するためであり、何よりも中国の住民の利益を守るために必要なのだと思います。

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