わが国財政問題の論点(1)~(5)
(1)国家債務が巨大な個人金融資産と相殺されており、日本国全体としてはまだ余裕があるか、すぐに破綻するわけではない、という理解がある。だが、長期的なトレンドとしては高齢層は資産を細めながら次世代に継承する中では、個人金融資産は永遠ではない。一方で、財政赤字が拡大し続けるのであれば、やがて国際市場からキャッシュを調達しないといけなくなる。
(2)日本は前世紀末に破綻した、韓国やタイとは異なり「大きすぎて潰せない」のであり、仮に国債の金利がコントロールできなくなったり、その結果として債務不履行(デフォルト)に接近しても、IMFや国債債券市場が何とかしてくれるという理解がある。だが、このまま日本経済と日本円が弱体化してゆくと、どこかで「日本を潰せるようになる」という臨界点を通過することはありうる。
(3)その一方で、今回の能登ダブル被災のように、必要な資金投下を渋るとかえって巨額なダメージが生じてしまう。仮に奥能登の復興を放棄するとなると、安全保障上の深刻な危険性を惹起する。奥能登に工作隊が入って危険な情報収集拠点や陸上戦闘の拠点を作られてしまうというような危険性もあるが、広範な国境と島嶼を守る意思がないと思われて危険だ。
(4)資金を渋るとダメージがあると言っても、例えばAIと著作権だとか、ハイテクとセキュリティクリアランスの問題でもそうだし、防衛装備の国内調達などもそうだが、公金を投下してもリターンが取れる仕組みがあるのか、疑わしい部分もある。とにかく、カネを借りてでも突っ込んで、最後に大きなリターンが取れるようなイノベーションの経営ができるのか、あるいは借りたカネが捨て金になるのか、政府に任せてはダメという考え方もある。
(5)財政規律の問題では、国民負担率が限界に接近している。となれば、消費税アップへの誘惑は否定できないであろうし、もしかしたらそこが争点になるのかもしれない。しかし、その場合は、どう考えても野田佳彦の顔が出てくるのであれば、野田政権末期の「三党合意」つまり「社会保障と税の一体改革」が想起される。実は、この合意はすでに完全に破綻しており、とっくに破綻している上にコロナ禍の結婚渋りの影響で、出生率が破滅的に低下している現在では、もっと厳しい再計算が必要だ。