わが国財政問題の論点(6)~(10)
(6)一方で、石破氏には法人税率アップという考え方もあるようだが、空洞化を加速するだけで愚策に思える。富裕層課税も、これ以上強化したら様々な手段を使って富裕層は海外逃亡を加速させるであろう。現在は、海外在住からの帰国者に厳しい徴税を課したり、相続税を厳しくしたりしているが、こちらも限界がある。
(7)石破+野田という顔ぶれからは、行政改革、特に官公労との対決というイメージは出てこない。野田は、小沢一郎と連携して、東の維新との提携を考えているようだが、この点は大きな障害になる。東の維新は元をたどると「渡辺喜美グループ(みんなの党)」が源流の一つとしてあり、官公労ベッタリの立憲とは鋭角的な対立関係にあるからだ。
(8)戻って、財政規律の問題だが、もう制度的には動かせる部分は少ないし、政府が投資してイノベーションというのも可能性は薄い。ここは規制を緩和して、とにかく「民族資本が改革をすると袋叩きにあうが、外資なら簡単に許す」という2000年頃からの悪いパターンを少なくとも止めることが大切。
(9)とにかく、国民的合意として、日本発の多国籍企業の連結決算の合計値が日本経済では「ない」ことを確認する必要がある。この点で怪しいのが高市氏の「もう一度世界一」。とにかくGDPに寄与すること、税収に寄与すること、これをベースに日本経済を健全な成長軌道に戻すことが何よりも肝要。
(10)石破の言う「地方重視」も、地方にカネをどんどん捨てるのではなく、地方の伸びしろに投資するということ、そのリターンを絶対に確保すると言うところから発想しないとダメ。最初にすべきことは「地方における女性の高度人材の活躍」であり、その障害となる人物、制度、慣習を徹底的に潰すことが必要。その気迫がないのなら、地方はこのまま衰退するし、そこに同情の余地はない。
途中から財政の話から民間を含む経済全体の話になっていますが、とにかく財政規律も、一番のポイントは「国家破綻を先延ばし」することではないと思います。財政における「破綻への恐怖」を減らすことで、個人も法人も必要な金を使うようになる、それが正常化の大前提だということです。
そして、現在はこの前提が崩れています。ここまで書いてきて、やはり震えるような怖さを感じます。日本経済が、日本円が破綻しても、それはそれで年金や健保の債務がチャラになるので、ガラガラポンになるという説もありますが、全くの間違いです。