石破首相の勇み足。表面上は必要に見える「アジア版NATO」が日本の安全保障を脅かす事態になりかねない理由

2024.10.03
 

台湾の加盟が中国の軍事侵攻開始のトリガーに

また、アジア版NATOを考える際、台湾をどうするかという問題もある。当然だが、米国や日本、韓国などは台湾を国家としては認めていないが、米国による台湾防衛、日台の安全保障関係強化など、台湾を事実上国家として扱っている。

しかし、台湾がアジア版NATOに加盟するとなると、中国がそれに強く反発するだけでなく、台湾への軍事侵攻を開始する恐れがある。アジア版NATOに加盟するのは国家であり、中国はそれを独立に向けた動きと認識し、台湾有事が現実的に発生することが考えられる。一方、台湾が加盟しなければ、何のためのアジア版NATOだとの意見が広がり、それ自体がすぐに形骸化する可能性があろう。

さらに、アジア版NATOは日本周辺の安全保障環境をいっそう分断させることは間違いない。アジア版NATOとなれば、中国は軍事的圧力を強化してくるだけでなく、上海協力機構のように欧米陣営に対抗する軍事的な枠組みを制度化する可能性もあろう。

以上のように考えれば、石破氏が提唱するアジア版NATOは表面上は必要なものに見えるが、具体的な中身を考えれば却って日本の安全保障を脅かす事態になりかねない。重要なのは、今ある既存の状態で如何に抑止力を高めることができるかだ。

image by: 石破 茂 - Home | Facebook

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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