障がい者の存在を“消した”石破茂首相。果たして「学び直し」は稼ぐためだけにあるのか?

 

今回、石破首相の演説での、稼ぐための手段としてのリ・スキニングに、障がいのある人の「学び」はどのように位置づけられるであろう。

位置付けるのは無理筋なのだろうか。

最近では、企業の障がい者の法定雇用率が上がる中、積極的に雇用を行う企業と、否応なしに行う企業の二分化が進んでいる。

前者には障がい者のやりがいや働きがいを提供し、「生きがい」までイメージする企業もある。

それらの企業は、障がい者の仕事の在り方、障がい者の企業での存在が、そこで働くすべての人へのメッセージともなり、生産性や各種能力を高めていくことにつながる、という考えがある。

この考えを基本に、企業内で障がい者の「学び」の提供をすることが、すべての従業員の満足度につながる施策も求められている。

今年12月には、私が文科省の障がい者生涯学習支援アドバイザーである役割の一環として、障がい者雇用推進センター(東京都中野区)で企業向けに雇用する障がい者への「学び」についての方法に関するレクチャーが企画されている。

これは前政権で「人への資本」「新しい資本主義」「リスキニング」のキーワードがじわじわと浸透してきたからであり、今回の演説で後戻りしてほしくない、というのが現場からの実感である。

加えて、石破首相の所信表明演説に障がい者の存在はなかったのも気になる。

存在が消された中で、リスキニングを「稼ぐ」のに直結したのも、少々違和感と疎外感を覚えてしまう。

「夏祭り」「笑顔」「悪口を言わない」などのフレーズが飛び出した総裁選での演説を、本欄では宮沢賢治の世界と表現したが、所信表明演説は官僚的な世界観に終始した。

本来、石破首相は虫も動物も夢も人も一緒の究極な賢治ワールド、インクルーシブな物語をイメージできるはずである。

それが、硬直していくのを見るのは何とも忍びない気がする。

※首相官邸のホームページでは、今回の演説から「リ・スキニング」との表記になっている。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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