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闇バイトに狙われる「隙だらけな家」の特徴は?“元鍵師”の現役探偵が教える予算1万5千円の防犯対策

警察庁がSNSに「必ず捕まえる」「逃げることはできない」との警告文を投稿するに至っても、一向に減らない闇バイトによる強盗犯罪。その被害者にならないために、我々はどのような対策を講じればいいのでしょうか。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、とある一軒家に施した安価で有効的な防犯対策の実例を詳しく紹介。さらに犯罪者に侵入されてしまった際に取るべき行動をレクチャーしています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:闇バイトこと無差別強盗事件対策について

侵入されずらい環境を構築。自宅を「闇バイト」に狙われないための防犯対策

2024年も師走となると、詐欺などお金をだまし取られたなどの相談が爆発的に多くなる。

2024年も例年通り、事件関係相談は急増している。

特に私の場合は、1日13時間以上働くのが常だが、その時間全てが相談対応で終わってしまう1日が続くことも多いのだ。

その一方、ここのところ被害報道が多い「闇バイト」という名の「無差別強盗事件」に関しての相談も増えてきている。これは私個人に対しての相談で、私には(元)鍵師という肩書があり、探偵社を作ったばかりの頃、調査依頼が少ないときに、防犯関連の仕事で凌いでいたことがあった。

その延長の仕事やストーカー対策や企業内での窃盗事件などの調査で防犯対策の知識や技術は未だに求められることが多いのだ。

今回は、いつもの「いじめ」とは異なり、すぐに導入できる防犯対策を伝えたいと思う。

「狙われたら防ぎようがない家」に施した激安防犯対策

2024年10月、知人からの相談で都内の住宅地に向かった。家は一戸建で敷地は80㎡ほど、小型車が置けるカーポートがあり、小さな庭があった。ここに、お婆さんと孫である20代の女性が二人で住んでいるという。

すでに最寄りの住宅で押し込み強盗があり、以前に下着泥棒の被害もあって不安だという。

正直私は閉口した。この家の造りであると、1階は窓が多く、敷地の柵も低いため、容易に入られてしまうし、カーポートの脇から勝手口に抜けて入ることができる。

狙われたら防ぎようがない隙だらけの家であることは間違いないのだ。さらに予算も1万5,000円、出せても2万円と少なかった。僅かな蓄えと僅かな年金、孫の収入も正社員ながら貯えができるほどはないのだという。

もはや、年に1度しか行かない神社で年末ジャンボ宝くじ1等前後賞を当ててくださいとお願いするようなものだ。ちなみに私は神様ではない、特別な力などないただの人間だ。それがプロという肩書だけで、かなりの無理難題を吹っ掛けられる、いつものことながら、ほぼ不可能なリクエストだと言えよう。

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「侵入されるとしたらどこからか」を考える

この家の場合、侵入される恐れがあるのは、「玄関」「勝手口」「庭から1階窓」であった。二階のベランダに登るということも考えられるが、ご近所付き合いが多く、道路幅も広めで、見渡しが良いことを考慮すれば、まず1階からの侵入を考えればよいだろう。

「玄関」というとすぐに鍵穴をピッキングされるかもと考える人がいるが、テレビドラマや映画のように針金差したら開くような鍵は、まずない。一般家庭にある古いタイプの鍵でもピッキングで開けるには解除訓練を受けていないとすぐには開くことはないし、そもそも専用の道具が必要になる。

ただし、鍵自体は「ケースロックの型番」「ドアの開きと勝手」「ドア厚」が分かれば、ドライバー1本でシリンダー(鍵穴)の交換はできるもので、最近では交換方法を丁寧に動画で解説していたりするサイトもあるから、DIYのレベルで可能だ。

かなり上等な耐久性、耐ピッキング対策が施されているものでも、シリンダー自体は1万円もあれば購入できてしまうので、かなり割安にできる。

ただし、上記の通り、まずピッキングして強盗に入るような者は居ないし、宅配などに装って扉を住人に開けさせるケースが多いから、玄関の場合は、「カメラ付きのドアホン」の方が優先度は高い。通販でも安いものなら1万円前後、ホームセンターでも安売りなどの折、同様価格で入手できることがある。

しかし、これでは予算がオーバーしてしまうので、苦肉の策として、2,000円台で買えるwifi通信で監視ができるホーム防犯ネットワークカメラを、玄関の上の方に設置した。一般的な扉には数ミリの隙間があるから、そこから配線を通し、ありたっけの延長コードで玄関の外にカメラをつけたわけだ。

幸い玄関はポーチ上の屋根があり、壁の様子からほとんど雨に濡れないようであった。室内用のカメラは外気に弱く、防水加工もしていないから、雨が吹き付けるような場所だとすぐに壊れてしまう。

一方、この手のネットワークカメラは、真っ暗でも自動で赤外線照射して映像に残すことができる。

これで、ネットワークカメラを自宅に設置されているwifiに無線で接続し、お婆さんと孫のスマホに専用のアプリを入れて、カメラを登録すれば、ネットが繋がっている限り、どこでもカメラの映像をオンタイムでいることができるし、警報設定にすれば、自動で録画ができる。

自動で録画がされると、アプリ上に警報マークがつく。強盗の中には室内で待ち伏せるもの者もいるから、留守中の異変に気がつけるようにしておくことも重要と言える。

百均で2枚1セットの「防犯カメラ設置済」のステッカーを買って、それを門扉に貼り付けておく。

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防犯フィルムと窓ロックで1階窓からの侵入を防ぐ

1階窓は、4面あり、1面あたり下が「網入りの曇りガラス」上が「通常ガラス」の造りになっていた。最近の強盗の場合、雨戸をバールでこじ開けようとするなど手荒な手段があるため、バールやハンマーで簡単に割られてしまう上の普通ガラスに「防犯フィルム」を全面に貼ることにした。通販サイトで買った2m1巻1,800円程度の防犯フィルムだが、飛散防止フィルムより少しだけ性能が良い程度の厚みだろう。

ガラスに貼る飛散防止フィルムと防犯フィルムは、フィルムの厚さに大きな差がある。飛散防止フィルムはペラペラだが、防犯フィルムは数層になっていて透明の薄いアクリル板のようなイメージの厚みがある。この差がガラスを割る時間に大きな差を生じさせるわけだ。気休めのように感じるところもあるが、ガラスを叩くとかなり派手に大きな音が出る。

プロの泥棒ならば、焼き破りという熱した棒などでガラスに穴をあけてクレセントロックを外すという手段を使ったり、ガラスカッターでガラスを切ったりするが、それらについては、ホームセンターで「窓ロック」という留め金状の器具を窓のサッシに挟みこんでおいた。

雨戸の鍵が古くすでに壊れていたので、新しいものを購入した。ネットでは1,000円以下で販売されており、ドリルとプラスドライバーがあれば簡単に設置は可能だ。

そして、窓の内側の縁側のような廊下に玄関に取り付けたのと同じネットワークカメラを取り付けた。

窓を割ろうと強盗や泥棒が頑張っている姿が、バッチリ映るという位置に置いておく。

勝手口については、実はほとんど使っていないということであったので、庭仕事で使っていたカラス防止の網を、結束バンドで取り付けた。

勝手口を完全に塞ぐことも考えたが、もしも侵入されてしまったときに、素早く逃げる出入り口も必要だと考え、留め金を勝手口内側に取り付けるだけにした。

これで、侵入口の対策は不満足だが、無いよりはずいぶんマシの対策が施すことができた。

2,000円台のネットワークカメラ2台     およそ5,600円
防犯カメラ設置のステッカー 1セット  110円
防犯フィルム1巻き           1,800円
窓ロック 2個             880円
結束バンド 1束(10本入り)       110円
留め金 1セット            550円
雨戸の鍵                 880円

今のところの合計             9,930円

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「センサーライト」という安価で効果的な防犯機材

予算が限りなくあるならば、セキュリティの高いマンションに住まいを変え、番犬を飼って訓練をすれば、日本国内であればかなり安全だと言えよう。

訓練された大型犬は、そこらの自称格闘家よりよっぽど強いし、まじで強い犬種は逃げただけで警察官が総出のフル装備で探すことになる。

セキュリティーが高いマンションは、スマートキーが無ければ自動ドアが開かないし、エレベーターで指定階を押すタイプではなく、スマートキーに登録された階にしか止まらないから、入居者以外の侵入はまず不可能だ。それに、コンシェルジュや警備員が常に出入りを見張っているから、最近流行りの無差別強盗がマンション内に侵入することは至難の業だし、もし入れても、今度は出れなくなる上に、すぐに通報されるだろう。

しかし、そんなこと普通の暮らしの人はできないわけで、予算に限りもある中で対応する必要がある。それには、侵入しづらい環境つくりが大切になる。

簡単かつ安価に防犯機材を導入するなら、センサーライトが有効だろう。

そもそもセンサーライトは、1,000円台から商品があるし、コンセントから電源を供給できるものや、ソーラーパネルが付いていて電源不要のものもある。

ただし、ソーラーパネルのものは、電源不要であるものの、容量に限りがあり、頻繁に点灯するなどしていると、電池切れを起こすことになる。

今回は、電源コンセントから電源を供給するタイプにして、2階のベランダに2台設置した。

ベランダにはエアコンの室外機があり、エアコンと室外機を繋ぐダクトは、粘土パテで埋めてある。粘土パテは200円もしないから、これを交換してしまえば、室内のコンセントから電源を取り、外に設置するセンサーライトに電源を供給することができる。

これなら、派手に点灯を繰り返してもブレーカーが落ちない限り、センサーが反応する範囲に人が入れば、ライトが点灯する。

基本的に侵入盗や強盗の類は下見を必ずする。センサーライトがついていると、光るから犯行が発覚しやすく、通報されるリスクが高くなる。また、センサーライトがない家とある家で比較すれば一目瞭然で、防犯意識が高いということになり、他にも防犯カメラや通報装置がついている可能性を彼らは考えることになる。

つまりこれが、侵入されずらい環境を構築するという基本につながるのだ。

センサーライト本体は、大抵、万力の容量で何かに挟み込むように取り付けることになるから、結構いろいろな場所に取り付けることができる。

2階のベランダの柵に1台取り付け、庭面からの侵入に備え、もう1台は、カースペースと玄関の範囲がセンサー範囲になるように設置した。

これで、敷地の近くを通ると、ライトがピカッとつく。

通販サイトで購入可能な「警察官立寄所」のステッカー

合計で1万4,130円使ったことになる。まだ少し予算が残っているので、他に不安なところはないかと聞くと、まだまだ不安そうで、やはり「闇バイト」いわゆる無差別連続強盗が心配だという。

予算があれば、警備会社と契約するなど、様々な方法があるが、やはり、予算がない。もはや無理な相談なのだ。

うーん、と頭を捻り、耳をぽんポン叩いてみても、出てくるものはない。

ただ1つ策はあった。

コンビニや銀行によく貼ってある「警察官立寄所」のステッカーである。各地域の防犯協会で配布していたりするが、基本は、コンビニや銀行などに配布するなどしているはずだ。なかなか手に入らない品だと思われているが、このステッカーは普通に通販サイトなどで二枚セットで800円程度で買うことができる。

そこで、これを、門扉と玄関にしっかりと貼ってみた。

悪いことをしようとしているなら、ドキッとするだろう。よく見ればカメラがあり、センサーライトもついているわけだ。

おばあさんとお孫さんが、大満足したところで、その場を後にした(実際は下見で設置するものを決めて、全て届いてから設置したので2回行った)。

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侵入されたらすぐ逃げることが何よりも大事

設置帰り際、お孫さんが、武器の相談をしてきた。

「さすまた」は使うのが難しく、素人向きではない。仮に「さすまた」でうまく相手を捕らえることができても、相手の方が、力が強いと押し返されてしまう。特殊警棒は、それなりに力が無いと有効打になりづらく、逆上されかねない。

スタンガンは、痛いだけだ。それに、大きな筋肉を狙って一定時間スパークさせないと、人は倒せない。

催涙スプレーも1人の相手には有効だが複数人いると腕などでガードされたりしてかからない。当然噴射がかからないと無傷だから効果がない。一方で熊に効くような強力なものだと自爆する可能性もある。スプレー自体は逃げる隙を作るものと考えた方が無難だ。

基本的に全ての武器を試し、使ってみたり模擬戦をしてみた結果の感想だが、戦うことよりも、とにかく逃げる方が有効だ。

戦って良いのは実践経験があり訓練をしている人のみであり、さらに準備が万全で、先制攻撃ができる時だけである。有利な場面以外は一切お勧めはできない。

そもそも予算もないわけだ。そこで、その辺にあるものを武器にしてすぐに逃げるようにと説得した。例えば、ダイエット用の2キロのダンベルを、ビニール袋にでも入れて振り回せば、相当な衝撃を発する武器になる。もろに喰らえば骨折してしまうだろう。

こうした武器は「スラッパー」と呼ばれているが、力が強い人が使えば、コンクリートを割ることも可能だ。

私は素振り用の鉄製六角棒で鍛えているが、誤って木製の収納ボックスに当ててしまったことがある。収納ボックスは派手に天板が割れ、横板やねじが飛び出て二度と使えない状態になってしまった。

ただし、警察発表で知る限り、「闇バイト」という無差別強盗事件の場合は、宅配便を装い、玄関を開けた瞬間殴られてボコボコにされるとか、ガラスなどを派手に割られて侵入され、やはり過剰なまでの暴力を振るわれるというケースが多いのだ。

なにより、玄関は開けないこと、侵入されたらすぐ逃げることが何よりも大事だろう。

本職の刑事はどのような対策を勧めているか

強盗の事を、隠語で「叩き」と言います。探偵業は届出制になり、管轄が公安委員会なので窓口は管轄の警察署です。日常的に警察の方と交流がありますが、やはり「叩き」は多くなったと言います。捜査の際に、結構な決め手となるのが防犯カメラの映像です。

今回は予算の都合でネットワークカメラを使いましたが、ネットワークカメラはとれた映像をネットの上のサーバーに保管します。つまりカメラを壊しても、奪っても、ネット上のサーバーに接続しなければ、消すことはできません。

また刑事さん曰く、日常的に周囲の方々ともよく交流を持っておき、異変に気が付いてもらえる、助け合える環境も作ってくださいとのことでした。

今回のお宅は、ご近所付き合いが結構濃厚にあるようでしたから、その辺は大丈夫なようですが、何にしても、警戒を怠らないようにしなければならないというのは、それだけでもストレスになりますから、こうした事件がいつまでも世間を不安にさせないような安全を取り戻せたらいいのにな、と思います。

年末年始を控え、実家に帰省する方も多いと思います。まめに連絡をするとか、休みの間に実家の防犯性能を少し高めておくなど、できる方はした方が良いと思います。私のように親孝行したいと思ったとき、すでに実の親がいないというバカ息子もいますので。

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image by: Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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