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意外と多い日本とドイツの共通点。米トランプ元大統領の当選でどう変化するのか?

日本とドイツには多くの共通点があるのをご存じでしょうか。アメリカ大統領選で次期大統領にトランプ氏が当選したことにより、日本とドイツはどうなっていくのか。今回のメルマガ『j-fashion journal』ではファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、その未来予想を語ります。

トランプ再選後の日本とドイツ

1.日本とドイツの共通点

日本もドイツも第二次世界大戦の敗戦国だ。そして、どちらも工業国。機械、化学、自動車等、多くの分野で世界をリードしている。米国、英国は戦勝国であるにも関わらず、工業技術については日本、ドイツに及ばない。しかし、金融面では、米国、英国が世界を支配している。そして、金融の力で世界をコントロールしている。

戦後の日本経済は奇跡的な成長を遂げた。世界第二位の経済大国となり、米国、ヨーロッパも危機感を感じたほどだ。

日本経済に対抗するために、ヨーロッパは連帯し、EC、後のEUに発展した。多くの日本人はそう考えているが、EUの狙いはそれだけだったのか。現在から振り返ると、ドイツを囲い込み、ドイツ経済の弱体化を狙ったものではなかったのか。

ドイツ政府が単独でドイツ経済をコントロールするのではなく、EU政府がドイツ経済をコントロールする体制だ。その結果、移民の受け入れ、再生可能エネルギーへの転換、EVシフト、中国とのデカップリングが進み、ドイツ経済は弱体化した。

更に、ロシア・ウクライナ戦争により。ロシアからのパイプラインは切断された。エネルギーの高騰は、工業の国際競争力を弱める。ドイツ製造業の空洞化が起きた。

ドイツと日本の共通点は、高い工業力を持ち、経済成長を実現する能力を持っていること。その経済力を弱体化するために、国外からの強いコントロールを受けていること。ドイツはEU政府に、日本は米国に。

また、日本、ドイツ共に、政府とマスコミは米国民主党の政策を支持している。トランプ再選が決まっているのに、ドイツの「緑の党」はウクライナの弾道ミサイル攻撃を支持し、日本の外相はウクライナを訪問し、支援の継続を約束している。

2.日独と中ロの関係 

日本とドイツは製造業大国だ。そして、日本、ドイツ両国は、中国に進出した。両国にとって、中国の安価で豊富な人材は大きな魅力だった。

1985年、中国政府はフォルクスワーゲン(VW)に懇願し、国有企業である上海汽車との合弁会社である上海VWを設立、「Santana」の生産を開始した。19990年頃まで、上海のタクシーは「Santana」が独占していた。ドイツは中国生産だけでなく、中国市場進出も他国に先駆けて行い、大成功を収めた。

日本、ドイツ両国は、中国だけでなくロシアとの関係も維持してきた。ロシアはエネルギー大国であり、製造業大国との相性は良い。ロシアとドイツ、ロシアと日本は、共にパイプラインの建設を進めてきた。

このまま進めば、日本とドイツは、中国、ロシアとの関係を深め、戦争なき世界に近づいたかもしれない。

そうなると、米国がアジアに基地を置く理由がなくなり、NATOの存在意義もなくなる。米国はそれを望んでいない。

そもそも、戦後処理の中で日本周辺に領土問題の火種を残したのは、日本と韓国、日本と中国との分断政策の一環だった。米国は、日本・ドイツ両国を、ロシア・中国と分断するという戦略を持っている。その点も、日独両国の共通点と言えよう。

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3.トランプ大統領による政策転換

現段階で、トランプ次期大統領は、中国とは対立姿勢を明確にし、ロシアとは関係改善を行うのではないか、と見られている。

また、大統領就任後、直ちにロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争等を停戦させるとしている。つまり、ウクライナ支援、NATO支援を打ち切る方向だ。

長期的には、海外の米軍基地は縮小し、同盟国の自主防衛を進めるのだろう。

現在までの米国民主党政権の政策からは大転換となる。日本政府は、バイデン大統領の政策を全面的に支持し、ウクライナ支援を継続すると表明した。これは、トランプ大統領の政策に反している。

トランプ大統領は、中国政府を関税で締め上げ、日本政府に対しても、より厳しい対中政策を求めるだろう。親中議員は戦略的に排除されるかもしれない。

反面、トランプ大統領がロシアとの関係を修復し、同盟国である日本とドイツにも対ロ関係の修復を認めるなら、日独両国の安全保障とエネルギー問題は大きく改善するに違いない。しかし、米国はシェエールオイルの採掘を再開すると言っているので、日独両国に米国産の石油を押し付けるかもしれない。

中国は大変な時代を迎えるが、習近平体制が終わり、台湾侵攻を諦めれば、中国経済も再起動できるだろう。

4.保護主義時代のモノづくり

トランプ大統領の政策は、米国第一主義であり、米国建国時の自立した米国を取り戻そうというものだ。そして、米国経済を阻害する国には関税を掛けるという保護主義だ。

関税は、自由貿易体制に反する。各国の国内産業は保護されるが、新興国の高度成長は失われる。世界全体を見れば、経済のダイナミズムが失われるだろう。貧富の差は拡大しないが、固定される。

また、グローバリズム時代とは異なる棲み分けが起きる可能性もある。例えば、完全な独占商品には関税を掛ける意味はない。生産者が自由に価格を決定できるからだ。また、圧倒的な価格競争力を持つ製品に関税を掛けても、国内企業が育成するわけではない。関税が機能するのは価格だけ。つまり、低コスト商品が対象だ。しかし、供給過剰が崩れ、供給不足が起きれば関税は意味をなさない。

コストダウンを競うより、真似のできない技術を磨くこと。つまり、オンリーワンの商品を目指すことだ。

米国が保護主義になるのは良いが、それが他国への干渉につながると恐ろしい。現在の中国政府のように、特許や技術を公開しないと輸入禁止にすると言われれば、輸出できない。また、トランプ氏の次の政権がどうなるかの保証もない。

いずれにせよ、米国が保護主義になれば、供給過剰は沈静化するだろう。

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■編集後記「締めの都々逸」

「ドイツビールは 室温で飲む 冷やしたビールは 喉で飲む」

ドイツと言えばビールですね。ソーセージとザワークラアウト。これは、グローバル時代でも変わりません。でも、アジア向けのコロナビールは全て中国で製造されることになったとか。そもそも、中国の青島ビールはドイツの技術がベースです。ドイツと中国の歴史は古いんです。

考えてみると、お酒とかビールはグローバル時代でもお国柄があるし、どの国でも作っていますね。こういう商品がいいですね。グローバルスタンダードとか言って、世界の市場を独占するのは良くないです。

世界には個性ある国があって、各国がそれぞれに自由に暮らす。足りないものがあれば、貿易を行う。それが基本です。儲けるために他国の産業を潰すとか、やりすぎですよね。(坂口昌章)

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image by: Jonah Elkowitz / Shutterstock.com

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