日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』。今回ご紹介しているのは、ホンダが公開した全固体電池のパイロットライン(モデルチェンジなどの際に通常の生産ラインとは別に設けられる小規模なライン)について。このニュースは中国でも報じられたといいます。果たして日本と中国で全個体電池の差はどこにあるのか、メルマガで詳しく紹介しています。
ホンダがパイロットライン公開、全固体電池の日中の差はどこ?
ホンダは2024年11月21日、栃木県さくら市における全固体電池のパイロットラインを公開した。
もちろん日本で話題になったが、中国でも日本経済新聞が自社記事を翻訳して中国語版で報じた他、ホンダ中国、東風ホンダが相次いでホンダのプレスリリース中国語版を公式SNSで投じた。
広汽ホンダは沈黙を保っており、両合弁で広報スタンスの違いが出て興味深い。
中国現地メディアでも取り上げられ始めているが、まだそこまで注目はされていない、と感じる。
ゲームチェンジャー
本田技術研究所の大津啓司代表取締役社長のコメントにある通り、「全固体電池は、EV時代におけるゲームチェンジャーとなる革新的な技術」。
バッテリーの安定性、航続距離、充電時間、寿命などが現在普及している液状の電解質を利用したものよりも急激に改善されることが期待されている。
日本、中国の他、世界中で研究開発が急がれている技術だが、その分ハードルは極めて高い。
コスト増懸念を払しょく
ホンダは今回、「従来の液体リチウムイオン電池の製造プロセスをベースにしながら、全固体電池特有の工程となる固体電解質層の緻密化に寄与し連続加工が可能な、ロールプレス方式を採用」。
新技術で製造プロセスが全く違う点によるコスト増懸念を払しょく、改めて2020年代後半の量産化を主張、2029年までに期限を設定した。
日本は30年、中国は25年?
日米欧韓の自動車メーカーは大体2030年の量産を目指しており、日産だけが唯一2028年の全固体電池量産を掲げている。
これに対して中国勢は2025年を掲げる江淮(JAC)。来年?というやや常軌を逸しており、影響力から考えても無視してよいかもしれない。
それ以外では、広汽が2026年、上汽や奇瑞(Chery)が2027年の量産を掲げている。
ただし上汽は2024年、全固体電池ではないものを全固体電池と言い張ってリリースしてしまった前科があり、やはり当てにならない。
どうしても前倒ししたい
中国勢は威勢の良いことばかり言って、前倒しで全固体電池の量産を実現しようとするきらいがある。
今回のホンダのように、理路整然と現状を報告、そこから見える予期可能な未来を見せる、というのを軽視、PRに躍起になっている感が強い。
それもまた中国らしさだが、中国勢は全固体電池の量産において、やや現実を見据えている点もある。
日本のある数値は3倍へ
全固体電池の特徴の一つにエネルギー密度の上昇によるバッテリー性能の飛躍的向上が挙げられている。
現状の電池の場合、高性能なものでも150Wh/kg前後、200Wh/kgには届かないのが通常。
日米欧韓の全固体電池の構想によれば、これが500Wh/kgに跳ね上がるというのが標準ライン。
特にドイツ勢と比べて日本勢はより高い数値を求めており、トヨタは600Wh/kgを掲げる。
中国勢は1.5倍程度
それに比べると中国勢の構想では、Cheryが600Wh/kgを標榜するが、基本は300~400Wh/kgが標準。
2025年量産を掲げるJACが300Wh/kgで、トヨタの実に半分程度を想定しているに過ぎない。
とりあえずやはり名ばかりの全固体電池を世界に先駆けて発表することを求めている姿勢が改めて浮き彫りになった。
その間に着々と日本勢が本物の全固体電池を開発、リリースしてくれることに期待したいところ。
出典: https://mp.weixin.qq.com/s/V51XFJLHfgDleCYpsCckCw
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