中山美穂さん「不慮の死」で高まる関心。高齢者のみならず若者も命を落とすヒートショックへの認識不足

 

日本気象協会と東京ガスによる「ヒートショック予報」も登場

ヒートショックは高齢者だけでなく、若者にも起こる可能性がある。特にスマートフォンを見ながらの長風呂や10度以上の急激な温度変化にさらされる場合、飲酒後の入浴や食事直後の入浴には注意が必要だ。

そのため、入浴時間は10分程度を目安にしたり(*6)、スマートフォンの使用を控え、長風呂を避けなどの対策が求められる。

そして湯温は41度以下に保つとともに入浴前後にコップ1杯の水を飲んだり、脱衣所や浴室を事前に暖めること、かけ湯をして体を徐々に温めるなどが必要となってくる(*7)。

日本気象協会と東京ガスが共同開発した「ヒートショック予報」というものがある。天気予報専門メディア「tenki.jp」で提供されている(*8)。10月1日から3月31日までの冬季期間に提供され、気象予測情報をもとに家の中で生じる温度差などから算出されたリスクの目安を提供。

このサービスを利用することで、天気予報を見る感覚で日々のヒートショックのリスクを簡単にチェックできる。ただし、個人の住環境や体調によって実際の影響は異なるため、リスクが低く表示されていても油断せず、適切な予防対策を心がけることが重要だ。

全国の市区町村別(約1,900地点)で7日先までの予報を確認でき、リスクの目安を「油断禁物」「注意」「警戒」の3段階で表示される。

あまりに低い住宅の断熱性能。ヒートショックの元凶

冬季に室温が十分に保たれない住宅では、循環器系疾患のリスクが高まることが指摘されている。世界保健機関(WHO)は、健康被害を防ぐために室温を18℃以上に保つことを推奨しているが、日本の住宅の多くはこの基準を満たしていない(*9)。

全国の冬の室温を調査したところ、18℃以上を維持している住宅は1割にも満たないという結果が出ている(*10)。

日本の住宅の断熱性能は、先進国の中でも最低レベルとされている。多くの家庭では、特定の部屋だけを暖める「間欠暖房」が主流であり、家全体を暖める「全室暖房」が一般的な欧米諸国とは対照的(*11)。

さらに、日本では暖房の設定温度が諸外国より高い傾向があり、これは断熱性能の低さを補うためと考えられる。

断熱性能が低い住宅では、部屋間や上下の温度差が大きくなる。この温度差は、快適性を損なうだけでなく、健康にも深刻な影響を及ぼす。例えば、窓や壁に結露が発生しやすくなり、それがカビやダニの繁殖を招く。

これにより、アレルギーや喘息、アトピーといった健康問題が引き起こされる可能性がある(*12)。

1997年のジャカルタ宣言で、WHOは健康を左右する要因として「平和」「住居」「教育」の3つを挙げている。しかし、日本では「住まい」と「健康」の関連性への理解が十分に進んでおらず、断熱性能の向上が遅れている。

真冬でもヒートショックの心配がなく、Tシャツ1枚で家中を歩き回ることができ、スッキリと布団から出られる家。このような住宅性能が日本でも求められる。

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【関連】酒好きに朗報。お酒の「食道がんリスク」は“喫煙者だけ”の研究結果
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引用・参考文献

(*1)「浴槽での死亡件数「年間2万人以上」ヒートショックは“寒い脱衣所”だけでなく“熱い湯船”にも注意【ひるおび】」 TBS NEWS DIG 2024年12月9日

(*2)不破雷蔵「戦後の交通事故発生件数・負傷者・死者数をさぐる(2024年公開版)」Yahoo!ニュース 2024年1月5日

(*3)「ヒートショックの恐るべき実態」日本ガス石油機器工業会

(*4)未来をまちづくるPLT「冬本番、生活者に『室内温度と健康に関する意識調査』を実施 『ヒートショック対策をしている』人は3人に1人 但し、根本的対策がとれている人は1割以下」パナソニックホームズ 2024年1月24日

(*5)未来をまちづくるPLT

(*6)「ヒートショックに注意!寒さ本格化で対策は?スマホで長風呂もリスク」NHK首都圏ナビ 2024年11月7日

(*7)「『ヒートショック』に気をつけよう!!」西条市 2021年11月4日

(*8)「日本気象協会と東京ガスが共同開発した『ヒートショック予報』を天気予報専門メディア『tenki.jp』で提供開始」TOKYO GAS 2017年10月2日

(*9)「暖房の設定温度は何度?上げても寒いのには原因がある!」断熱リフォームの匠 2024年12月10日

(*10)「高断熱で暖かい家での暮らしによる医療費の低減と健康寿命の延伸効果を定量化」SCIENCE TOKYO 2024年10月31日

(*11)「日本の家は『採暖』、欧米の家は『暖房』」家づくりの教科書 2023年9月16日

(*12)「低気密・低断熱住宅では、アレルギーや喘息のリスクが高くなる」『高性能な』住まいの相談室 2021年2月20日

(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2024年12月15日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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