第二次トランプ政権の悲劇的宿命とパラドックス
トランプ政権は、特に今回スタートする第二期目に関しては、「インフレへの怒り」をエネルギーとして成立しています。ということは、トランプには「物価の引き下げ」が期待されるわけです。
ですが、物価引き下げは実際には困難です。
例えば、ウクライナ戦争をプーチンとの談合で無理矢理に停戦に持っていっても、その上でプーチンへの石油の禁輸を解除しても、原油価格は思ったより下がらないと思います。
と言いますか、実はトランプはエネルギー産業と「つながっている」のであり、エネルギー産業の利害は「エネルギーの価格の高止まり」であるという構図もあります。
仮にプーチンへの禁輸を解除しても影響は限定的です。プーチンは中国には市価より少し安く流していたし、欧州、特にドイツ向けもそうです。ということは、仮に禁輸を解除しても、プーチンは国際市場に思い切り原油やLPGを流して、これ以上にエネルギーの市況を下げることはしないだろうからです。
さらに言えば、不法移民狩りはダイレクトに「農産物」「畜産物」「造園業」「サービス」「外食」の人件費を爆発的に押し上げます。また、中国などへの関税も同様です。
もう1つ、景気の動向ですが、ある種トランプの言うようにアメリカの「景気はどんどん良くなる」という傾向はあらためて出てきました。そんな中で、このまま放置していると、物価はどんどん上がりますし、人件費も上がっていきます。
とにかく、現時点ではトランプが「物価を下げて有権者の期待に応える」のは不可能に近い芸当だと言えます。
そこに第二次トランプ政権の宿命というものがあるわけです。物価への怒りから当選したにもかかわらず、物価を下げるのは難しい――そんなパラドックスの中で第二次トランプ政権はスタートします。
とりあえず、政権の全体構造についてはこのような宿命、あるいはパラドックスが覆っているという指摘ができます。