トランプ米新大統領の悲劇的宿命と「パンなきサーカス」の帰結点。日本は「USスチール買収妨害」の罠を回避できるか?

 

それでもトランプ氏がマスク氏を「切れない」理由

5つ目は、これが一番大事なのですが、トランプとマスクは「金でつながって」います。マスクはトランプの政治運動基金に日本円で何億という単位の寄付をしています。ですが、それ以外にトランプのファミリー企業に関しても、保証などをしていると考えられます。

例えば、2016年の時点で、トランプが最初に大統領に当選した際には、「利益相反にならないように家業のホテル・カジノ経営から手を引く」ことが求められました。このときには、直接の経営からは手を引いたものの、ファミリー企業の売却は「事実上の債務超過なのでできない」という顧問会計士からの発表があったのでした。

ですが、今回は堂々と「利害相反を避けるために、トランプは家業の経営から手を引く」という発表がされています。つまり、トランプ家も、トランプ・オーガニゼーションというファミリー企業も、資金繰りには余裕が出ているわけです。

その背後には多くの支持者からの献金などもあるでしょうが、やはり「マスク・マネー」の存在は大きいのだと考えられます。

トランプ家は、マスクの財力に支えてもらっている中で、4年前、いや8年前に味わった「金の苦労」から、かなり自由になっていると思われます。仮にそうであるのなら、トランプはマスクを切りたくても切れない、ということになります。

1つの考え方として、マスクは「政府リストラ計画」に失敗したら、トランプ陣営から「トカゲの尻尾切り」に遭うという見方がありました。ですが、仮にトランプ・ファミリーが「マスクの財力」に相当に依存しているのであれば、それは不可能です。もしかしたら、その場合に「簡単に切れる」ようにラマスワミという人物をマスクと対等の立場として置いているのかもしれません。

マスクとラマスワミは、「不法移民は追放する」けれども「テック系などの有能な移民は歓迎する」としています。さらに「白人の教育水準は低いので、テック系人材にはなれない」というような挑発的な発言もしています。そして、トランプのコア支持者はこれに対してかなり怒っています。例えば、第一次政権で右派ポピュリズムのメッセージ発信に一役買っていた「スチーブン・バノン」などは、マスクを非常に嫌っています。

そうではあるのですが、金の問題で支えてもらっているので、トランプはマスクを切れないという可能性は十分にあります。その一方で、マスクに好き放題させていると、政権内部はガタガタする可能性が濃厚です。

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