トランプ米新大統領の悲劇的宿命と「パンなきサーカス」の帰結点。日本は「USスチール買収妨害」の罠を回避できるか?

 

石破政権、日鉄USS買収問題での拙速は禁物

それはさておき、トランプに対して石破総理が面会できるにしても2月であり、だとしたら遅すぎるという批判もあるようです。

ですが、現時点では日米には懸案は少ないので、焦る必要はないと思います。

日鉄のUSスチール(USS)買収案件の行方が気になりますが、これは訴訟の推移、環境の変化を見極めて日鉄が合理的に動くのが一番で、下手に政治や外交を絡めるのはどう考えてもヤブヘビです。

また、韓国情勢の流動化やウクナイナ問題について意見交換するにしても、そもそも北とウクライナの問題に関しては「トランプは基本的に日本の敵対勢力」です。

ですから、ノコノコ行って「立場の違い」が、かえって浮き彫りになってしまうというのは、日本の国益にはなりません。とにかく焦りは禁物です。

一言で言えば、日本という国は、純粋な国益としては、トランプ現象に関しては「迷惑」であるという立場です。防衛費負担、保護主義、人種差別、ロシアびいき、どれもハッキリ言ってトランプ主義というのは「日本の利害には反する」存在です。

その一方で、日本の外交面、そして経済面でのプレゼンスはどんどん小さくなっています。それこそ、トランプの第一次政権がスタートした2017年と比較すると、猛烈に縮小しています。これを逆手に取って、とにかく、

トランプの危険なサーカスのターゲットにはならない

ように「先延ばし」や、「逃げ隠れ」をするのが得策です。万が一にも石破茂氏という総理の「中の人」が、「モラルを知らないトランプに説教してやろう」、そうすれば「NATO諸国に尊敬される」などと考えるのであれば、これは危険極まりないと思います。まず、その発想自体が危険ですし、百歩譲ってそこに正義があるにしても、総理の実行力、執行力では百害あって一利なしだからです。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2025年1月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。時空の声(不定期連載)「マーラー第9交響曲をめぐって」もすぐ読めます

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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