トランプ米新大統領の悲劇的宿命と「パンなきサーカス」の帰結点。日本は「USスチール買収妨害」の罠を回避できるか?

 

「サーカスのターゲット」にされかねない日本

そう考えると、トランプが「グリーンランド、カナダ、メキシコ湾、パナマ運河」と、「サーカスの見世物」を繰り出し続けるのが必要なように、マスクも欧州政局に手を突っ込んで「NATOを怒らせる」行動を必要としているのかもしれません。

一番の問題は、この種の「サーカス」に関しては100%「ネタ」とは割り切れないものがあるという点です。

例えば、カナダのトルドー政権は崩壊してしまいました。直接の原因はインフレなど内政問題にあるようですが、トランプの「51番目の州にしてやる」といった恫喝への対応が稚拙だったことも「トドメ」になっていると見ることもできます。

その意味で、日本の石破政権が「不必要にトランプとその周囲を刺激」することで、日本が「サーカス・ゲームのターゲット」になるのは避けなくてはなりません。

ただし、イーロン・マスクが日本に対して「意地悪」を仕掛けてくる可能性はそれほど高くないと私は見ています。どうしてかというと、イーロンがシリコンバレーで頭角を現してきた時点では、すでに日本の産業は斜陽だったからです。

マスクの場合は、亡くなったスティーブ・ジョブズが「日本の技術には深い敬意を抱くが、現在の日本の産業は死んだクジラと同じ」などと言っていたのとは「世代の感覚」がまったく異なるというわけです。ですから良くも悪くも、マスクのターゲットになる可能性は低いでしょう。その前に、パナソニックがいい例であるように、残っていたノウハウはすでに吸いつくされているとも言えます。

その点に関しては、やはり団塊世代であり「80年代に日本にやられた」怨念を抱えているという世代感覚のあるトランプのほうが危険度は高いと思います。「不動産の買い手としても、カジノの客としても金払いの悪い日本人」などという感じで悪印象を引きずっている気配もあります。

どういうわけか、盟友として通した安倍晋三氏の去った今、とにかく日本外交はトランプを敵に回さないような厳重な警戒は必要だと思います。

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