昨今の止まらぬ物価高に悲鳴の声が多く上がっている中、今年もすでに1~4月の間だけで4,000品目近くの値上げが決まっているそうです。日本だけでなく世界でも物価は上昇ていますが、ニューヨーク在住の日本人でメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者である高橋克明さんは、驚くべきことにNYでは1杯4,000円もするラーメンに「行列ができている」と言います。なぜ、日本人は物価高に対してネガティブな意見ばかり持ってしまうのか、高橋さんは考えられる理由を自身のメルマガの中で述べています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:結論/あるいわ、超円安時代に超物価高の街に行く理由
ラーメンに4,000円の時代。なぜ日本人は「物価高」に対してネガティブなのか?
機械式の腕時計が好きです。妻に「てめえ、腕何本あるんだ!」と毎回キレられつつ、沼にハマるよう記念日ごとについ購入してしまう。
日本製でない限り、当然NYで購入した方が安い。いや、安かった。それがここ数年、円安のおかげで欧米製まで日本で購入した方が安い現象が生まれてしまっています。
日本人の奥様を持つニューヨーカーの友人が、里帰りで浦安のディズニーランドに行ってきたとのこと。彼はフロリダ出身のアメリカ人。どうしてわざわざアジアの島国のディズニーランドに行くのか。理由は「世界のディズニーランドでいちばん安いからだよ」。
日本でディズニーランドといえば、そう安いエンターテイメントという印象はありません。でも、わざわざアメリカ人が日本のに行くくらい、どうやら世界の人から見ると日本のディズニーランド入場料は超格安らしい。
日々、FBライブなり、オンラインZoomなり、色々なコミュニティにゲストで呼んでもらいます。その際「今、NYではラーメン1杯4,000~5,000円ですよ」みたいな話をしています。この街を表現するのに、いちばんわかりやすくいちばんウケがいいから。手っとり早く驚かせるには、身近なラーメンという日常食材での物価サンプルはショッキングで伝わりやすい。
その際、みなさん「えーー!!!」「ヤっばーい!」「エグいな!」「おそろしいな!ニューヨーク…」etc…..想定通りの反応をしてくれます。
せっかく驚いてくださるみなさんの為に、話はあえてそこでストップします。でも、本当に驚くべきところはラーメン1杯4,000円という事実ではない。
それが売れている、という事実の方です。マンハッタン内のRAMEN専門店はどこも超満員、大行列という事実の方。
彼らの所得は、それを当たり前にしている。ラーメン1杯4,000円を高くないと思っている人たちだけの街ということです(厳密に言うと、さすがのニューヨーカーですら現状のインフレ率には困ってはいるのだけれど。なのでトランプを当選させた側面もあるのだけれど。それでも文句を言いつつ、ラーメン屋に並んでるからね。日本人はそう美味しくないラーメンに4,000円なんてまず払わない)。
それでは、ニューヨークという街が特別なのでしょうか。
この記事の著者・高橋克明さんのメルマガ
確かに、特別ではあります。アメリカの中でもここニューヨーク、特にマンハッタンは世界一物価高ではある。でも、そう特別でもないことが価格調査サイトを見ればわかります。世界の価格サイトにおいて(2024年)世界の平均ランチ単価は、スイスが世界1位の3,300円。市単位でいうとニューヨーク市が世界1位の約4,100円。1回あたりのお昼ごはんに4,000円をかけるのが平均ということです。
日本は49位の900円。もちろん国とイチ都市を比べるのはフェアではないけれど、ニューヨークの5分の1です。
「ビッグマック指数」というものがあります。マクドナルドのビッグマックは世界中にあり、材料はどこの国でもそう変わらない。でも材料費や人件費や家賃には差が出ます。なのでその価格で各国の経済力を比較する為の指標です。
国でいえば1位はスイス。ビッグマック1個925円。市でいえばニューヨーク。1個1,230円。日本は390円。
ビッグマックの価格そのものに注視するのではなく、スイス国民はビッグマックに900円以上出せる所得が平均であるということまで踏みこんで考える。スイス人は優秀なのか。いや、誓ってもいいけれど、日本人ほどある意味優秀な国民は世界にいない。
つまり、世界は基本、個人の所得が上がっていくものだということです。欧米諸国の場合、物価に比例して個人の所得が上がっているということです。いや、正確に言うなら、個人の所得が上がっているから、供給サイドが価格を上げていっている。それが実情。
その感覚を日本人はまるまるすっ飛ばしている。すっ飛ばして「高い!」「安い!」とだけ騒いでいる。究極、億万長者になればビッグマックの価格に一喜一憂することはない(てか、億万長者になったらビッグマック食べねえか。オレは食べるけど)。
思えば、僕(1973年生まれ)たちが子供の頃、「値上がり」は当たり前でした。経済が発展していくとともに(語弊はあれど)「値上がり」は豊かさの象徴でもあった。
それがいつの間にか「値上がり」はただの悪の対象になっていった。輸入した原材料が上がるたび、企業、店主は申し訳なさそうに値上がりを告知する。値上げする方も、値上げされる方も、肩身を狭くする。そんな現状をつくった要因は…やはり「バブル」です。
バブル以降、日本は約30年間、賃金が上がらなくなりました(そりゃあ、値上げ、許せなくなるわ)。
もしみんなの給料も上がっていれば、値上がりはそこまで怖くなかったはず。そう、物価が上がるのが怖いのではなく、給料が上がらない状態の方がずっと怖いのです。そのあたりを指摘する日本人は、結局 僕の周りでは皆無でした。
では、なぜ給料が上がらないのか。
景気については、日々、経済専門家があれやこれやと色々な意見を言っています。輸出入のバランスによる構造要因。高齢化による購買減少の需要要因。銀行などの金融仲介機能低下による金融要因。そのあたりが主なのは間違いないようだけれど、専門外で金融経済シロートの僕には正解も対策もわからない。
ただこれだけは言えます。
ほんの数日間だけでも、世界一高い物価の街をーーー。(『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』2025年2月3日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
この記事の著者・高橋克明さんのメルマガ
image by:Colleen Michaels/Shutterstock.com