いよいよ4月16日に迫った大阪・関西万博の開幕。とは言え盛り上がりに欠けるのは否めないのが現状で、事実、チケットの売れ行きも芳しくありません。そもそもなぜ「負け戦必至」等とも揶揄される万博は、こうまでゴリ押しされるのでしょうか。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、日本維新の会が大阪万博を強行する「真の目的」を白日の下に晒しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:赤字必至の大阪万博
赤字は必至。それでも維新の会が大阪万博を強行した訳
4月13日の開幕まで、あと6週間となった「大阪・関西万博 2025(以下・大阪万博)」ですが、多くの皆さんの予想通りに前売り入場券が売れていません。入場券は全体で2,300万枚の販売を予定しており、開幕までの前売りで1,400万枚を売る計画です。
しかし、1月29日の時点で約767万枚、計画の54.7%しか売れていないのです。前回1月8日の発表では751万枚(約53.6%)だったので、この3週間で16万枚しか売れていないことになります。このまま行くと、開幕日までに1,400万枚という計画は絶望的です。
この状況を受けて、強引に万博を推進して来た大阪府の吉村洋文知事は、2月5日、石破茂首相と面会し、販売促進に向けた協力を要請しました。
そして、石破首相は2月21日、首相官邸で開いた政府与党連絡会議で、開幕が迫るのに前売り入場券が売れない現状について「月の石とかいろいろなものがあった1970年の大阪万博と比べて、今回は何が売りなのかという発信が十分ではないのかもしれない。チケットが買いにくいみたいなところがあり、さらに改善を図っていかなければならない」と述べ、発信やチケット購入方法の改善を図る考えを示しました。
実はこれ、あまり知られてないことですが、石破首相は今年1月、大阪万博の名誉会長に就任させられたのです。万博が大失敗して莫大な赤字が出た時に、国の責任を明確にして国民の税金で尻ぬぐいさせるための人質というわけです。
2023年9月、大阪万博の建設費などの予算が膨らみ続ける問題が出た時、万博を推進して来た日本維新の会の馬場伸幸代表(当時)は「万博は国のイベントなので、大阪の責任ではなく国を挙げてやっている」と述べました。そして、同党の藤田文武幹事長も「万博は国家事業だ」と連呼しました。
こうした布石からも、万博を推進して来た人たちの策略が透けて見えますよね。
ま、それはそれとして、大阪府の吉村知事から要請を受けた政府は、開催期間中に何度でも入場できる万博の「通期パス」を、5月までに来場した人に限って割引価格で販売する方向で調整に入りました。18歳以上の大人の場合、3万円のパスが2割引きの2万4,000円で購入できるようにするそうです。
でも、普通の入場券ですら売れないのに「通期パス」を「割引になったから買おう!」と思う人などいるのでしょうか?欲しいと思わないTシャツは、半額になっても欲しくないし、タダでくれたとしても着ませんよね。これと同じ理屈です。
そもそもの話、現在までに売れた約767万枚の前売り入場券にしても、その大部分は「企業によるまとめ買い」なのです。たとえば、りそな銀行は2月10日、大阪府と大阪市に万博の入場券を約2万5,000枚(約1億5,000万円相当)寄付しました。府と市は、万博期間中に会場で開かれるイベント「大阪ウィーク」の参加者に無料配布するそうです。つまり、万博に来た人たちに入場券を配布して「もう1回来てください」という合計人数の水増し作戦です。巧妙な連携プレーですね。
ちなみに、大阪府の吉村知事と大阪市の横山英幸市長は、りそな銀行に感謝状を贈ったそうです。
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67%を占めた「万博に行きたいと思わない」と答えた人々
また、香川県は2月24日、4歳から22歳の県内在住者を対象に、大阪万博の入場券を抽選で1,000人にプレゼントすると発表しました。これは、東京海上日動火災保険の高松支店から、県に寄付されたものです。
りそな銀行は銀行全体なので約2万5,000枚と多かったですが、こちらは「高松支店」なので、ま、こんなとこでしょう。それでも、前売り券は1枚5,000円ですから、1,000枚なら500万円です。それなりの見返りがないと、痛すぎる出費ですね。
どうしてこんなことになったのかと言うと、それは2年前に遡ります。2023年7月6日、関西の有力企業で構成する「関西経済連合会」が、加盟する主要企業に、1社当たり15万~20万枚(約9億~12億円)という膨大な量の万博の前売り券の購入ノルマを強制的に割り当てたからです。ちなみに「関西経済連合会」の松本正義会長は、万博を運営する「日本国際博覧会協会」の副会長も務めています。
ここまで書けば、もうお分かりですね。すでに売れている約767万枚の前売り入場券のうち、その大半は関西の企業が強制的にまとめ買いさせられたもので、社員や顧客に配っても大量に余っている企業が、開幕が迫りつつある今、慌てて自治体などに寄付し始めた…という流れなのです。
そんな中、毎日新聞が2月15、16両日に実施した世論調査で「大阪万博に行きたいか」と尋ねたところ、「行きたいとは思わない」が67%を占め、「行きたいと思う」はわずか16%という結果が出たのです。
衆院選の比例代表のブロック別で「行きたいと思う」と回答した割合を見てみると、最も高かったのが近畿ブロックの28%で、四国ブロックの27%、九州ブロックの20%と続きました。しかし、全国11のブロックのうち、残りの8ブロックはすべて20%以下でした。
また、万博を推進して来た日本維新の会の支持層を見ても「行きたいと思う」が33%、「行きたいとは思わない」が39%と、万博に興味のない人のほうが多かったのです。たとえば、これが1年も2年も前ならともかく、普通のイベントなら一番盛り上がっているはずの開幕直前での世論調査なのですから、完全に終わっています。
これは以前、このコーナーに書きましたが、TBSラジオ『森本毅郎 スタンバイ!』のリスナーの意見を聞く「トークファイル」のコーナーで「大阪万博に行きたいですか」と質問したところ、リスナーが東京を中心とした関東エリアだったため「行きたい」は0%で「行きたくない」が100%でした。
そもそも東京じゃ大阪万博の話などしている人は見かけませんし、周りの友人や知人に万博について聞くと「わざわざ大阪まで行くなら、万博よりUSJに行きたい」と、誰もが口をそろえて言います。
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血税で穴埋めされる大阪万博が作り出す莫大な赤字
結局は、多くの有識者が指摘しているように、大阪万博など所詮は「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)」のための方便だったのです。そして、さらに言えば、この「統合型リゾート施設(IR)」というのも「カジノ」のための方便なのです。
これに関しては、17年前の2008年に遡ると全体像が見えて来ます。橋下徹氏が大阪府知事をつとめていた2008年に夢洲(ゆめしま)での開催を予定していた「大阪オリンピック構想」は誘致に失敗しました。そして、会場へのアクセスとして事業化されていた「北港テクノポート線」と「夢洲駅」の計画も中止となったのです。
夢洲に「カジノを含む統合型リゾート施設」を造るとしても、夢洲にアクセスできなければ「ネギを背負ったカモたち」は誰も行けません。しかし、これは民間の事業なので、そのために税金を使ってインフラ整備などできません。
そこで「五輪招致」に失敗した大阪府と大阪市は「万博」に白羽の矢を立てたのです。多くの「反対の声」を無視して、日本維新の会が大阪万博を強行したのは、カジノのために税金でインフラ整備をすることが目的だったのです。
そして、日本維新の会の目論見通りに、「万博のため」という理由で「北港テクノポート線」と「夢洲駅」の計画が復活し、今年1月19日に「夢洲駅」が開業したのです。すでに2年前の2023年4月17日に、当時の岸田文雄首相が斉藤鉄夫国交相に指示して、大阪のカジノ構想のための区域整備計画を、国内で初めて認可させているので、後は2030年の開業予定日に向けて建設をするだけなのです。
そして、そのための方便として大阪万博が作り出す莫大な赤字は、万博など1ミリも興味のないあたしたちの大切な税金で穴埋めされるのです。
大阪府の吉村洋文知事は、2月7日の会見で、記者から「万博で赤字が出た場合の対応」について問われると「国、大阪府と大阪市、経済界の3者で協議するというのが今の一定の結論だが、そうならないよう努めて行く」という何の具体策も示さない無責任なことを抜かしました。
しかし、それならあたしも真面目な納税者の1人として、最後に言わせていただきます。「お前のような税金泥棒はイソジンで顔を洗って出直して来い!」と。
(『きっこのメルマガ』2025年2月26日号より一部抜粋・文中敬称略)
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