日本が直面するインフラ老朽化問題。継続的なメンテには莫大なカネがかかるため、必要性の低いインフラは「捨て去っていく」必要がある――といった論調が、テレビ報道などを通して広まりつつある。だが、これを明確に「間違っている」と斬り捨てるのはメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』著者で京都大学大学院教授の藤井氏。インフラ整備を放棄し、日本全国を見捨てよとの暴論の裏には「財務省」の大ウソがあると指摘する。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【八潮陥没の背景に「緊縮」あり!】東京MXテレビで,石破財政とオールドメディアのウソを暴く
財務省を解体せねば、日本全国が見捨てられる!
今週末の東京MXテレビでは、『八潮市の道路がなぜ大陥没したのか?~緊縮財政が導く国家の崩落』と題した「東京ホンマもん教室」を放送しました。
その内容は、あの道路の大陥没事故の背後には、今、連日デモで解体が叫ばれている「財務省」の存在があることを、客観的なデータ・事実に基づいて明らかにするもの。
番組ではまず、現在各種メディア上でかの陥没事故以来、インフラのメンテナンス(維持管理)の議論が喧しく論じられていることをお話しした上で、その多くが、次のような「誤った議論」に基づくものである、という点を指摘しました。
要するに、八潮市の事故の背後には、古いインフラの老朽化問題があるが、それに対応するにはもの凄いオカネ(年間12兆円!)がかかる、でも、そんなオカネはないから、必要性の低いインフラは「捨て去っていく」ことが必要になる、というのが、一般的な論調になっているわけです。
その具体的な報道例として、TBSの2月4日のNews23の報道例を紹介しました(ちなみに、MXの番組内では、TBSという固有名詞は出していませんが、出典を明らかにするという主旨で、この記事内では記載します)。
このNews23(のコメンテータ)は、田舎のインフラは必要性が低いから、見捨てればよいのだ、と指摘したわけで、その分かり易い例として、かの大地震がおそった能登半島の復興なども全部が全部、やらなくていいじゃないかと、名指しで切り捨てを示唆したのです!
さらにその上で、それでもどうしても田舎も救いたいというなら、「増税」(あるいは利用料金引き上げ)が必要だ!とも主張したのです。
要するに、TBSのNews23は「田舎を救いたいならカネを出せ、カネが出せないというなら、しのごのいわずに田舎を見捨てよ!それは地震のあった能登半島も同じだぞ!」という見解を報道したわけです。
…なんという不道徳な…と考えざるを得ませんが、TBS側はむしろ、能登などの田舎のインフラにカネをかけるほうが不道徳だ、と指弾したわけです。
財務省の緊縮財政が間違っている「3つの理由」
こうしたTBSの見解は言うまでもなく、財務省、あるいは、財務省をバックに据えた自民党税調会長の宮沢洋一氏をはじめとした自民党主流派幹部の人々が繰り返し主張している「緊縮財政」の主張そのもの。地域や命よりカネが大事だ、と言わんばかりの主張です。
では、どちらが不道徳なのでしょうか?
この「ホンマもん教室」では、以下の3つの理由を踏まえれば、明らかにTBSを含めた「オールドメディア」側(あるいは、財務省側)こそが、不道徳だと考えざるを得なくなる、ということを論理的に指摘いたしました。
つまり、オールドメディアの財務省的見解は、「もっと賢く」対応すれば、コストも大幅に圧縮することができる、ということをガン無視しているという点で、間違っているのです(理由1)。
さらには、インフラメンテナンスは「融資」(国債発行)が基本とすべきであるという、「投資の鉄則」を完全に無視した見解であるという点でも間違っており(理由2)、しかも、インフラというものは「長期的な国家・地域計画」に基づいて維持管理していくべきだという、あらゆる国家がやっている当然の前提を無視したものであるという点でも間違っているのです(理由3)。
つまり、オールドメディアの財務省的見解は、理性的な常識を全て無視し、ただただ、「カネがいる、でもないから、出来ないよ!」と叫ぶ、愚か極まりないお粗末なモノに過ぎないのです。
しかも、そもそも政府は、「デフレ脱却をする!」といい、「地方も創生する!」と声高に主張しているにも拘わらず、「カネがないからインフラメンテなんて、今の手持ちのカネだけでやって、それ以外はやらないよ…」というオールドメディアの財務省的態度もまた問題です。
そんな態度は、「俺は君を絶対に幸せにする!だから結婚してくれ!」と一人の女性に叫ぶ男が、その女性が病気で死にかけており、10万円の医療費を出してやればその女性を救えるにも関わらず、「オカネがないと君を幸せにはできないから、今、君に出せるおカネはこれだけなんだよ…」といって、2、3千円しか渡さない男、のそれと同じです。
そんな男、クズそのもの、ですよね。
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将来のカネをどんどん減らす、おそるべき財務省の所業
さて、この番組では、そんな『長期的なインフラ計画』を考える上で、絶対に忘れてはならないいくつかの客観データを紹介しました(先の例で言うなら、上記の例において「女性を幸せにするために必要な客観データ」、ということですね)。
つまり、道路や新幹線といった基本的なインフラが整っている地域も国家も、産業も発展し、経済は成長し、人口も増える、ということが、過去の客観データで明らかになっている点を紹介為ました。
だからこそ、「地方創生」のためには地方のインフラを整えないといけないのだし、ましてや既存インフラのメンテナンスをやめては絶対にならないのです。さらには「デフレ脱却」「経済低迷脱却」のためには、日本のインフラをしっかり整えていくことが必要なのです。
(ちなみに以上の議論は、インフラの“ストック”としての効果に限定した議論ですが、それに加えて整備や維持管理に伴う“フロー”の効果、つまり財政出動による内需拡大効果を考えれば、その効果はさらにさらに大きなものとなることは言う迄もありません)。
それにも関わらず、「今、手元にはカネがないから、これからはガンガン地方のインフラ見捨てましょう!」なんていうのは、将来のカネをどんどん減らしていく、おそるべき阿呆の所業なのです。
ついては少なくとも今の石破政権は、「合理的」なインフラ保全戦略を採用するとは到底思えない言動を繰り返していますが、せめて本番組をご覧になった一般国民の皆様、とりわけ、「オールドメディア」と呼ばれるメディアの関係者、出演者の皆様には是非とも、インフラ保全における合理性の回復の重要性をご理解いただきたいと思います。
そして、そうした合理的政策が採択できる政治状況を作り上げる機運を、是非とも高めて頂きたいと思っています。
そのためにも是非、今週の「東京ホンマもん教室」を、下記よりご覧いただきたいと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=Lep6pv-yPjk
どうぞ、よろしくお願い致します。
(メルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論』2025年2月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ)
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image by: 国土交通省ウェブサイト, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons