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10万円の商品券配布より大問題。石破首相の進退が問われる杉田水脈氏「参院選比例トンデモ公認」

最新の各種世論調査で、軒並み発足以来の最低支持率を叩き出す結果となっている石破内閣。「10万円の商品券配布」が大きく響いているとされますが、「それ以上の問題」を存在する識者も存在します。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、自民党による杉田水脈氏の参院選比例区候補公認を「公約違反」として、その証拠を上げつつ強く非難。さらにこの「トンデモ公認」が今夏の参院選で自民党にもたらす結果を占っています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:杉田水脈の公認は公約違反

石破首相がついた大ウソ。公約違反でしかない杉田水脈の参院選比例公認

3月9日、東京都内のホテルで開催された自民党の党大会で、今夏の参院選比例代表の候補予定者として紹介された杉田水脈氏(57)は、ステージ上で笑顔で手を振り、隣りに立つ石破茂自民党総裁は拍手で迎えました。この信じがたい光景は各紙が一斉に報じ、全国から批判が巻き起こりました。

翌10日、自民党の森山裕幹事長が党本部で会見を行なうと、集まった記者からは杉田水脈氏の公認に関する質問が相次ぎました。1人の記者が杉田氏の過去の差別発言の数々について言及すると、森山幹事長は「しっかりと反省いただかないと。本人はそういう気持ちでおられる」などと意味不明の擁護をしました。

そして、別の記者が「なぜ杉田氏を公認したのか?」と質問すると「本人の申請に基づき選対委員会の審査を経て決定した」などと選対委員会に丸投げしました。また、別の記者が「杉田氏は裏金問題で政倫審での弁明を行なっていないが?」と指摘すると「まずは杉田氏が丁寧に説明責任を尽くしていくことが重要だ」と述べ、これまた丸投げしたのです。

そもそもの話、現在の杉田氏は、これまでの数々の差別発言を1ミリも反省していないどころか「私は差別などしていない」とひらき直っています。統一教会や幸福の科学との癒着問題の時も、1,564万円もの裏金問題の時も、杉田氏は説明責任を果たすどころか、常にひらき直って来ました。そして、それが原因で昨年10月の衆院選は公認を見送られて出馬を断念したのです。

それから今日まで、杉田氏は謝罪も反省も説明責任もゼロなのに、どうして自民党は今回、杉田氏を公認したのでしょうか?森山幹事長は「選対委員会が決定した」と責任を丸投げしましたが、それなら野党の皆さんは、国会の場で、木原誠二選対委員長に対して「1ミリも反省しておらず説明責任も果たしていない杉田氏を、どのような理由で公認したのか?」と問いただすべきでしょう。

そして、これほどまでに有権者をバカにした公認を堂々と行なった石破茂自民党総裁に対しても、その責任を国会で追及すべきでしょう。10万円の商品券などよりも、このトンデモ公認のほうが遥かに大きな問題であり、場合によっては辞任すべき案件です。何故なら、性的少数者への差別、アイヌ民族への差別、在日コリアンへの差別、挙句の果てにはレイプ被害女性への差別まで繰り返し、1ミリも反省していない杉田氏を公認したということは、自民党という政党自体が「これらの差別を容認した」ということになるからです。

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総裁選で連呼してきた公約を次々と反故にし始めた首相

あたしは、このトンデモ公認の責任は、すべて石破首相にあると思っています。それを証明するために、時計の針を5カ月ほど巻き戻し、昨年10月の衆院選での自民党の当時の対応を確認してみたいと思います。

昨年9月27日、自民党総裁選の決選投票で「女性の着ぐるみを着た安倍晋三」こと高市早苗氏を破って総裁の座に就いた「焦げたアンパンマン」こと石破茂氏は、国民の信を得ずに自動的に日本の首相になったとたん、総裁選で連呼して来た公約を次々と反故にし始めました。そんな石破首相の「手のひら返し」の第1弾が「解散総選挙」でした。皆さん、覚えてますよね?

総裁選の間、とにかくすぐにでも解散総選挙を行なうと主張していた小泉進次郎氏に対し、石破氏は「まずは予算委員会で野党と議論を尽くし、国民に判断材料を提供するのが新首相の責任だ。解散総選挙はその後だ」と反論していました。それなのに、嗚呼それなのに、それなのに…というわけで、石破氏は自分が首相になったとたん、戦後最速のマッハのスピードで解散総選挙を行なったのです。そして、自民党のセンターに立つ石破首相は「石破のことは嫌いになっても自民党のことは嫌いにならないでね♪」と心の中でつぶやいたのです。

ま、すべては森山幹事長の差し金でしたが、これには多くの国民がポカーンとしてしまいました。そして、自民党は大方の予想通りの大惨敗で、自公は衆院の過半数を割ってしまいました。石破首相は森山幹事長の言いなりに動いただけなのに、この責任をすべて背負わされ、石破政権は苦しい船出となりました。でも、今回再確認すべきは「衆院選の結果」ではなく「衆院選の前」なのです。

前任の岸田文雄氏が昨年9月の総裁選への出馬を辞退したのは、統一教会問題に続いて裏金問題が発覚し、あまりの規模の大きさから収拾がつかなくなり、内閣支持率も危険水域の20%台にまで落ち込んだからです。ようするに、実質的には「裏金問題による引責辞任」のような形でした。そして、その流れから石破氏が総裁に選ばれ、首相になり、解散総選挙に突入したのですから、国民の目が「裏金議員の処遇」に向くのは当然です。

すると石破首相は、山ほどいる裏金議員のうち「上位6人を非公認とする」と発表したのです。これまた多くの国民がポカーンです。そして、一拍おいて全国から大ブーイングが巻き起こると、石破首相は大慌てで「あと6人を追加で非公認とする」と発表しました。でも、その6人顔ぶれを見てみると、すでに裏金問題の責任を取って「今回は出馬しない」と発表していた越智隆雄氏が入っていたのです。ようするに、党として厳しい処分を下したように見せるために、出馬しない議員を利用して水増ししたのです。何というセコさ!

結局、石破首相は、裏金議員のうち、出馬しない越智隆雄氏を含めた12人を非公認とし、その他43人は公認した上で比例重複を認めないという処分を決めました。つまり、この43人は、これまでのように「小選挙区で落選したけど比例でゾンビ復活」という甘利明氏のような保険がなくなったわけです。多くの国民は裏金議員全員を非公認にしないと納得できなかったと思いますが、これが石破首相にできる精一杯だったのです。

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全国のネトウヨ票を独占できると踏んだ杉田水脈の思惑

で、ここからが本題ですが、この処分に当てはまらない裏金議員が3人いたのです。杉田水脈、上杉謙太郎、尾身朝子の3氏です。この3人は小選挙区と比例の重複ではなく、比例だけに出馬する予定だった「比例単独」の候補でした。しかし石破首相は、この3人の対応だけを先送りしたのです。

この3人は「比例単独」の候補として、それぞの地元の自民党県連から公認申請が出されていました。ですから、本来であれば公認か非公認かを判断し、他の裏金議員と同日に発表しなくてはなりませんでした。しかし、他の裏金議員のように公認してしまうと、その瞬間に当選が決まってしまうという特殊な例だったため、石破首相は判断を3日間ほど先送りしたのです。そして3日後の10月11日、これまた森山幹事長が、次のように発表したのです。

「3名とも自ら出馬をご辞退をされて、反省の態度を示されました。今後も政治活動を続けていただきたいと思いますし、1日も早く国民の皆さんの信頼を取り戻せるように頑張っていただきたい」

出馬する気マンマンで自分から県連に公認申請を依頼していた3人が3人とも、突然、自分から出馬を辞退することなどありえません。これは3人の意思ではなく、森山幹事長の命令に従ったということが一目瞭然です。その証拠に、出馬を辞退したとされる上杉謙太郎氏は、この2日後の13日、公示日の2日前というギリギリのタイミングで、福島3区に無所属で立候補すると表明したのです。

一方、杉田水脈氏は、ツイッター(現・X)でアンチに向かって「あなた方がいくら騒ごうが私にはなんの影響もありません!」などとケンカを売りつつ「参院への鞍替え」に言及しました。これもどうせ森山幹事長の差し金だと思いますが、今回の衆院選を引かせるために代替案として来年7月の参院選での「比例単独」を提案したのでしょう。杉田氏は12日、地元の山口で記者会見して「来夏の参院選比例代表に挑戦して信を問う」と述べました。

衆院選の比例は「自民党」というように、有権者は政党名を記入し、各党は得票数に応じて名簿の順位の上位から当選が決まって行きますが、参院選の比例は政党名でも候補者名でも良いのです。そして、候補者名の票はすべてその候補者に入ります。杉田氏が「信を問う」と言っているのは、参院選の比例で「杉田水脈」と記入された得票で当選するという予告なのです。この方式にすれば、全国のネトウヨ票を独占できると踏んだのでしょう。

でも、そんなに都合よく行くのでしょうか?あたしがそう思ったのは、杉田氏が参院選への出馬宣言をした3日前の10月9日、衆議院の「国家基本政策委員会合同審査会」で行なわれた党首討論での、石破首相の答弁を聞いていたからです。

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杉田水脈の公認に眉をしかめる多くの自民党支持者たち

この日の党首討論で、日本維新の会の馬場伸幸代表(当時)から「自民党の裏金議員は参議院にもたくさんいるが、来年の参院選では公認するのか?」と問われた石破首相は、次のように述べていたのです。

石破首相 「参議院議員についてどうなのか、ということでございますが、同じ国会議員でございますので、衆議院と参議院とで違う対応をするということはございません」

馬場代表 「今、石破総理からはっきりと、来年の参議院選挙に向けた自民党の公認に対する考え方をお聞かせをいただきましたので、国民の皆様方としっかり注視して行きたいと思います」

つまり石破首相は、今夏の参院選も、昨年の衆院選と同様に「特に悪質な裏金議員は公認しない」「その他の裏金議員は公認した上で比例重複を認めない」ということを断言したのです。国会の党首討論の場で、自民党総裁として、他党の代表からの質問に答える形で公言したのですから、これは「自民党の公約」と同義です。

そして、杉田水脈氏に関しては、衆院選に出馬できなかったのですから、石破首相が「衆議院と参議院とで違う対応をするということはございません」と断言した以上、参院選にも出馬できないということになります。さらに言えば、自民党には「比例単独は2回まで」という党内ルールがあるのです。杉田氏はすでに2017年と2021年の衆院選で中国ブロックの「比例単独」で当選しているので、裏金問題うんぬん以前に、衆院であれ参院であれ自民党から「比例単独」で出馬することはできないのです。

杉田氏がどうしても今夏の参院選に出馬したいのであれば、他の政党に移籍してそちらから出馬するか、無所属で小選挙区に出馬するしかないのです。もちろんこれは、石破首相が「公約を守れば」の話ですが。そして、石破首相は公約を破り、杉田水脈氏の公認を発表したのです。

今回、杉田氏は、森山幹事長からの「参院選の比例単独での公認」を交換条件として衆院選への出馬を辞退したため、常に余裕シャクシャクで、この5カ月間、反省どころか自身の差別発言の正当化に明け暮れていました。そして、森山幹事長は約束通りに、そんな反省ゼロの杉田氏の公認を石破首相に指示したのです。

しかし、過去に例を見ないほど悪質な極右のレイシストの公認を喜んでいるのは、ほんの一部の同類だけで、多くの自民党支持者は眉をしかめています。杉田氏の公認は、政権与党としてはイメージダウン必至であり、今の弱り切った自民党にとっては「百害あって一利なし」なのです。

杉田氏が「比例単独」に公認されたことで、比例に「自民党」と書く支持者は大幅に減り、杉田氏の当選と引き換えに、自民党は多くの議席を失うことになるでしょう。

ま、常に自民党の議席減を望んでいるあたしとしては「渡りに舟」であり、自公の「参院でも過半数割れ」という最高のオウンゴールまでもが視野に入って来た今日この頃、今回の石破首相の「杉田水脈氏の公認」という公約違反は大歓迎なのです♪

(『きっこのメルマガ』2025年3月19日号より一部抜粋・文中敬称略)

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