2025年7月5日、大災害が起こるという漫画家・たつき諒氏の予知夢は、さまざまなデジタルプラットフォームにおいて脚光を浴びています。そしてそれを裏付けるかのように、同時期に複数の人や組織がその大災害の予言を始めました。今回のメルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』ではジャーナリストの上杉隆さんが、前々回、前回の記事に続き、「2025年7月5日」に起こるとされる「大災難」や「人類滅亡」の予言についてインフルエンサーやメディアの主張を集め、彼らの紹介を兼ねて掲載しています。
【特別連載(3)】2025年7月巨大複合災害:予言者、占い師、YOUTUBERたちを検証する【上杉隆とAIが徹底検証】
たつき諒の「2025年7月の大災難」という予知夢が火蓋を切り、ジュセリーノ・ノーブレガ・ダ・ルース、不思議探偵社、アビギャ・アナンド、関暁夫の『やりすぎ都市伝説』、「地球維新連合」といった共鳴者たちが続々と加勢することで、2025年終末論ブームは単なるオカルト話から社会現象へと変貌した。
それぞれのYouTubeの再生回数は累計数千万回を超え、XやTikTokでは関連ハッシュタグがトレンド入りし、一般市民の生活にも影響を及ぼし始めている。こうしたブームは、不安と好奇心を掻き立てる一方で、備蓄品の買い占めや避難計画の検討といった現実的な行動を誘発し、社会に混乱の種を蒔いているという指摘もある。
ここまでは、今回の終末論ブームが現実社会にどのような波紋を広げているのかを具体的に検証し、その背後で拡散を担うメディアの役割と責任についても考察した。今回もさらに対象者を挙げ、客観的な視点から、ブームの社会的影響を多角的に分析し、現象構造を明らかにしていく。
前回は、たつき諒氏の予知夢と時期を同じくして2025年終末論ブームを牽引する者として、ジュセリーノ・ノーブレガ・ダ・ルース、不思議探偵社、アビギャ・アナンド、やりすぎ都市伝説を取り上げた。今回は、さらにブームの拡散と深化に寄与する存在として「月刊ムー」「コヤッキースタジオ」「LOVEMEDO(ラブミードゥ)」を加えて、それぞれの背景、2025年7月の終末論への関与を詳細に分析・検証する。
デジタル時代におけるオカルト文化の担い手として、これらの主体がどのようにたつき氏の予言と共鳴し、社会的影響力を発揮しているのかをジャーナリスティックに探る。肯定や否定に偏らず、事実とデータを基に彼らの役割を解剖し、ブームの全体像をより立体的に描き出したいと思う。
◎都市伝説界のスターたち
5. 月刊ムー
紹介・背景
『月刊ムー』は、1979年に学習研究社(現・学研ホールディングス)から創刊された日本を代表するオカルト情報誌で、現在はワン・パブリッシングが発行している。キャッチコピーは「世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリーマガジン」。
誌名は、超古代文明論で語られる太平洋にあったとされる幻の大陸「ムー大陸」に由来し、UFO、超常現象、陰謀論、予言などを幅広く扱っている。創刊以来45年以上の歴史を持ち、月間発行部数はピーク時の1980年代で約20万部、現在は約3万部(推定)とされる。オカルトファンの間では根強い支持を誇り、2025年終末論ブームでは、たつき諒氏の予知夢を特集し、関連する陰謀論や超自然現象を掘り下げる記事を展開している。
過去の実績解析
『ムー』は予言を直接発する主体ではなく、オカルト情報の収集・発信プラットフォームとしての役割を担う。過去には、1979年の「ノストラダムスの1999年大予言」や、2012年の「マヤ暦終末論」を大々的に取り上げ、いずれも社会的な話題性を生んだが、予言が外れた際の検証は控えめだった。
例えば、1999年7月号では「恐怖の大王が降ってくる」と煽ったが、実際には何も起こらず、読者からは「エンターテインメント」と割り切られる一方、懐疑派からは「虚偽」と批判された。同様に、2012年12月号のマヤ暦特集も終末が訪れなかったことで批判を呼んでいる。
一方で、たつき氏に関しては、2021年10月号で『私が見た未来 完全版』を初特集し、「東日本大震災的中」の実績を強調。以降、2024年7月号では「2025年7月、日本を襲う大災害の全貌」と題し、彼女の予知夢を軸に地震や津波の科学的可能性と超自然的解釈を併記した。
記事の的中率は検証困難だが、過去45年間で取り上げた予言や仮説のうち、明確に的中した事例(例: 特定の日時と場所を伴う災害予告)は皆無で、編集長の三上丈晴氏は
「我々は可能性を提示するのであり、真偽の最終判断は読者に委ねる」と開き直るが、エンタメだとすれば成功していると考えられる。編集方針は、事実よりも好奇心を刺激する姿勢が明確だ。
2025年ブームへの寄与
『ムー』は2025年終末論ブームにおいて、たつき氏の予知夢をオカルト文化の文脈に位置づけ、読者に「歴史的転換点」としての期待感を植え付けている。2025年1月号では「たつき諒と2025年終末シナリオ」と題した総力特集を組み、彼女の夢をノストラダムスや出口王仁三郎と比較しつつ、「パラレルワールド」や「マンデラエフェクト」といった概念で補強。
公式YouTubeチャンネル(登録者数約10万人)でも関連動画を公開し、再生数は数十万回に達する。読者層は40代以上のオカルト愛好家が中心だが、デジタル展開により若年層にもリーチを広げ、たつき氏の予言に学術的・神秘的な装いを加えている。ただし、科学的根拠は希薄で、先に述べたようにエンターテインメントとしての役割が強い。
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6. コヤッキースタジオ
紹介・背景
「コヤッキースタジオ」は、コヤッキーととーやがパーソナリティを務める日本のYouTubeチャンネルで、2017年にスタートした。都市伝説、ホラー、オカルトをテーマに配信し、2025年4月時点で登録者数約150万人、総再生数は5億回超。
元お笑い芸人のコヤッキーが軽妙なトークで進行し、とーやが補足やリアクションを担うスタイルが特徴だ。両者ともに深い科学的知識を持ち合わせているが、それらをひけらかすこともなく、エンタメに徹している。そういった姿勢が人気の秘密だろう。たつき諒氏の予知夢を2021年から取り上げており、「2025年7月終末説」を積極的に発信している。関連動画は数百本に及び、視聴者との双方向性を活かしたライブ配信も人気だ。
過去の実績解析
コヤッキースタジオは予言者ではなく、都市伝説の語り手として機能する。たつき氏の『私が見た未来』を紹介した初動画(2021年11月)は再生数200万回を超え、東日本大震災的中を強調しつつ、「15の法則」などの独自解釈を展開。しかし、現時点で当たっていない予言(例: 富士山噴火)には深入りせず、視聴者の興味を維持する編集が目立っている。
他にも、「ノストラダムスの2020年疫病予言」や「ババ・ヴァンガの2023年戦争予告」を紹介したが、いずれも事後解釈に依存しており、独自の予言的中実績はない。エンタメと割り切っているのでそれも当然ではある。
2024年10月の動画「たつき諒の2025年7月がヤバすぎる」では、科学的データ(南海トラフ地震の発生確率)を引用しつつ、「夢の的中率は偶然か?」と問いかけるスタイルで視聴者を引き込む。コメント欄の分析(約1万件)では、「信じる」が40%、「半信半疑」が50%、「信じない」が10%と、懐疑的な声も一定数存在。チャンネルの収益は広告収入とグッズ販売(『月刊ムー』とのコラボ商品など)に依存し、2025年終末論が主要コンテンツ化している。
2025年ブームへの寄与
コヤッキースタジオは、たつき氏の予知夢を若年層に届ける最大の拡声器として機能していると言っても過言ではない。2025年関連動画の総再生数は2024年末時点で推定3000万回に達し、「備蓄を始めた」「避難場所を調べた」といった視聴者反応が顕著だ。2025年3月にはゲストに占い師のLOVE ME DOを迎え、「2025年7月の出来事」を占うコラボ動画を公開し、再生数500万回を記録している。
都市伝説をエンターテインメント化する手法で、たつき氏の予言に現代的な息吹を与え、ブームの若者文化への浸透を加速させている。決まり文句の「Lie or True」で始まるこの番組の進行役コヤッキーこと小山は、いまや都市伝説界のスターである。
【関連】SNSで「2025年7月5日」がトレンド入り。漫画家の予知夢に出た「大震災」「巨大津波」の予言は都市伝説か現実か徹底検証
7. LOVE ME DO(ラブミードゥ)ーーー(『上杉隆の「ニッポンの問題点」』2025年4月7日号 【特別連載(3)】2025年7月巨大複合災害:予言者、占い師、YOUTUBERたちを検証する【上杉隆とAIが徹底検証】より一部抜粋。この特別連載の続きおよび次回以降をお読みになりたい方は、ご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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【関連】2025年7月5日4時18分。東日本大震災を予言した漫画家の著作『私が見た未来 完全版』に書かれていること
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