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ラグジュアリーブランドの売上が世界的に低迷。これからはカネだけの“豊かさ”より「社会的な価値」を創造すべき理由

いま世界的にラグジュアリーブランドの売り上げが低迷しているようです。若い世代の消費行動が変化していく中で、こうした高級ブランドが「伝統」と「文化」としての価値を維持しながら生き残るには、どのように変化すべきなのでしょうか? メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、日本ではなく欧米を前提として、「社会貢献」が大きなヒントになるとして、そのアイデアの一部を提言しています。

ソーシャルなラグジュアリーブランドの可能性

皆さん、こんにちは。ラグジュアリーブランドの売り上げが減少しています。プラダがベルサーチを買収するなど、業界の再構築も進んでいます。

そこで、ラグジュアリーブランドの将来について考えてみました。

現代において、ラグジュアリーブランドの役割は、単に高品質で美しい商品を提供するだけにとどまらなくなっています。消費者の価値観は多様化し、特にミレニアル世代やZ世代を中心に、社会的な意義や環境への配慮といった要素が購買行動を左右する大きな要因となりました。

本稿では、経済的な豊かさだけではない、内面の充実や社会貢献によって形成される新たなステータスに着目し、これからのラグジュアリーブランドが持つべき「ソーシャルなラグジュアリー」という可能性を探ります。

変容する「ソサエティ」の意味

かつて、ラグジュアリーブランドのショップでの買い物は、特定の富裕層やステータスを求める人々が集う「ソサエティ」への参加体験と捉えられてきました。しかし、現代において「ソサエティ」の意味合いは大きく変化しています。

ゴージャスやデラックスといった表面的な価値だけでなく、社会的な責任感、環境意識、多様性の尊重といった、より内面的な価値観を共有する人々の集まりが、新たな意味を持つようになっているのです。

このような背景を踏まえると、ラグジュアリーブランドは、単に高価な商品を提供するだけでなく、これらの新しい価値観を体現し、共鳴する顧客層との深い繋がりを築くことが求めらるでしょう。

内面の成長と新たな階層社会

外見の魅力は依然として重要ですが、人々の関心は内面の豊かさへとシフトしています。内面の成長に応じて身に着ける商品が変わる、あるいは、お金を持っていても容易には手に入らない商品が存在するという状況は、経済的な階層とは異なる、新たな「内面の階層社会」を示唆するでしょう。

このような社会において、ラグジュアリーブランドが真の価値を提供するためには、商品そのものの魅力に加えて、顧客の内面的な成長や社会貢献を可視化し、称賛する仕組みを構築することが重要になります。

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ソーシャルインパクト・ポイントシステムの提案

その具体的なアプローチとして提案したいのが、「ソーシャルインパクト・ポイントシステム」の導入です。このシステムは、ラグジュアリーブランドの全商品に一定額の寄付金を組み込み、購入者は商品を購入するだけで自動的に社会貢献活動に参加できるというものです。

購入金額に応じて「ソーシャルインパクト・ポイント」が付与され、累積ポイント数によって顧客のステイタスが変動します。

このステイタスは、単なる購買履歴を示すのではなく、社会貢献への貢献度を可視化する指標となります。そして、このステイタスに応じて、以下のような特典を提供します。

コミュニティと透明性の重要性

さらに、このシステムを成功させるためには、顧客同士の繋がりを強化するコミュニティ機能と、社会貢献活動の透明性を高める取り組みが不可欠です。

オンラインプラットフォームを通じて、ポイントやステイタスを可視化するだけでなく、同じ志を持つ顧客同士が交流し、情報交換やアイデア共有ができる場を提供します。また、集められた寄付金がどのように活用されているかを定期的に報告し、具体的な社会的なインパクトを顧客と共有することで、信頼感を醸成します。

ソーシャルなラグジュアリーの未来

このような「ソーシャルなラグジュアリー」の概念を取り入れることで、ラグジュアリーブランドは、単なる富裕層向けの消費財を提供する企業から、社会をより良くするための推進装置へと進化する可能性を秘めています。

顧客は、ブランドの商品を購入することで、自己表現や満足感を得るだけでなく、社会貢献という意義のある活動に参加し、自身の行動が新たなステータスとして可視化されることで、更なるエンゲージメントを高めるでしょう。

経済的な価値に加えて、社会的な価値を創造し、共有する。これこそが、これからのラグジュアリーブランドが目指すべき新たな方向性であり、「ソーシャルなラグジュアリー」という概念は、その可能性を大きく広げるものと言えるでしょう。

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■編集後記「締めの都々逸」

「金があっても 買えないものを 提供するのが ラグジュアリー」

 日本人に、ラグジュアリーブランドは必要ないと思います。所詮、西欧の文化だし、なくても困らない。成金が見栄を張る手段が減るかもしれませんが、大きな問題ではありません。

でも、西欧社会においては、ラグジュアリーブランドは文化であり、伝統産業です。なくすわけにはいきません。

ラグジュアリーブランドは階層社会を前提にしており、上流社会への憧れによって成立しています。しかし、上流の基準が変わってきました。

階層構造を残しながら、新しい時代に対応する。そんな、仕組みが求められるのではと予測しています。(坂口昌章)

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image by:  Shutterstock.com

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