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会社は誰のために存在するのか?社会貢献としての「企業の意味」を改めて問う

「会社は利益を上げることだけではなく、人を育てる場であることにこそ大きな意義がある」。自己改革小説の第一人者である喜多川泰さんは、自身のメルマガ『喜多川泰のメルマガ「Leader’s Village」』の中でそう語っています。「自分の会社だけにはいい人材を集めたい」という企業には、利他的な理念がなくなってしまっているとし、企業が存在する意味をもう一度問い直したいと語っています。

美から醜まで、みんないるからこそ

新しく会社を立ち上げるとき、絶対に必要なものがある。

それは「理念」。

別の言い方をすると、「何のために、世の中に新しくこの会社を生み出そうと思っているのか」ということ。

もちろん、それは起業をする人が自分で決めていいことだから、

「何のためって、そりゃ金儲けのためだよ」

「欲しいものを買って、いい暮らしをするため」

という理由にしたって構わないけど、新しく起業した会社の90%以上が最初の5年でなくなると言われている社会において、そういった理念の会社が存続できるほど起業というのは甘くない。

そういった会社は、一時爆発的に売り上げを上げるような例はないとは言えないが、それも長続きしないだろう。

長く続き、多くの人から愛される会社は、起業の理念の中心に「社会の役に立ちたい」という想いが強くあるはずだ。

「自分にできる技術、知識、ネットワーク、提供できるサービスを通じて、社会の人を幸せにしたい。だから起業するのだ」

その想いが、掲げられた言葉だけでなく、やっていることから伝わるからこそ、多くの人に長く愛されて、会社は存続できる。

つまり、会社は「我利」ではなく「利他」のためにつくられ、それが社会に認知されてはじめて軌道に載ると言える。

ということは、起業の理念の中心には、「私のできることで、社会の役に立ちたい」という想いが必ずあるということだが、それは自分の得意な分野だけでしかできないわけではない。例えば美容師が「髪をキレイにしてあげることで、その人を明るくして、その人が機嫌がよくなれば、その人の周りが明るくなる」ことで社会に貢献しようと考えていても、実際にお店を経営し始めれば、それ以外のいろんな面で社会に貢献しているのだ。

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実は起業することそのものが社会貢献である。

起業だけじゃない。会社が存在すること自体が社会貢献だと言える。

なぜなら、会社をつくれば雇用が生まれるからだ。

今アメリカは様々な強引な手を打って色々なシステムを変えようとしているように見えるが、実際にアメリカに行ってみるとあまりにもたくさんいるホームレスに日本の人は驚くだろう。何かを大きく変えない限り、どうしようもなさそうだということはすぐにわかる。雇用を創出するということは国に対して、社会に対してのものすごく大きな貢献なのだ。

雇用を創出するということは、働きたいけどその場所がないという人に、働く場所を生んであげるということだ。例えばあなたが10人の従業員を抱えた経営者なら、その10人の人生を支え、彼らの家族を支え、その人たちすべての生活や夢を叶える基盤となる場所を社会に創出したことになる。それだけでも大きな社会貢献だと言えるが、彼らに収入が生まれるということは、それだけ税収も生まれている。つまり国や県、市区町村にも貢献していることになる。

実際に経営者の方は、毎月、社会保険料や市県民税を従業員から預かり、国や市町村に納めていると思うが、その額が大きいということは、それだけの雇用を社会の中に創出しているという証でもある。

ちなみに若い従業員の中には、社会保険料と厚生年金は給与明細に書かれたその金額を納めていると思っている人が多い。その金額と同じ金額を会社が負担して倍額を国に対して払っているという事実を知らないのだ。

「厚生年金の方が国民年金よりも将来もらえる額が多いのは、給料が増えれば自分が支払う額が多くなるからだ」と思っている人が結構いるということだ。まあ間違いではないが、それ以上に会社がその金額と同じ額を払ってくれたからだということを知らないのだ。

経営者の側は毎月倍額を払っている側だから、その事実を知らないなんてことはあり得ないのだが、従業員に対してそのことをわざわざ説明する人はいない。結果として誰も教えてくれないから、自分で知ろうとしない限りいつまでもわからない(制度上は「社会保険料と厚生年金は設定額の50%ずつを従業員と会社が負担」が正しい説明)。

もちろんその保険料は4,5,6月の平均給与月額によって決められて、その年の9月から翌年の8月までが保険料として適用されていることを知っている人となるともっと少なくなる。

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ちょっと脱線したけど、とにかく会社があるというだけで大きな社会貢献であることはわかるだろう。

さて、雇用を創出するとそこに集まる人はどんな人になるか。

実は社会の縮図になる。

先生は「聖職」と言われる。

それでは先生になる人たちは人格的に素晴らしい聖人ばかりが集まるのかというとそんなことはない。

まさに「真から偽、善から悪、美から醜」に至るまで幅広くあらゆる人たちがいる。

その比率はまさに社会の縮図と言っていい。

社会の中に犯罪者は一定数いるが、残念ながら同じ割合で先生の中にもいる。それは避けられない。

何も先生だけじゃない。すべての職種、すべての職場においてそうなる。

日本は人口がおよそ1億2千万人だが、その中で、引きこもりや精神疾患に陥っている人は、予備軍も含めて数百万から一千万人とも言われている。

そうなると12人に一人はそういう人がいるということだ。

だからどの人にも親戚に一人くらいはそういう人がいるだろうし、どの職場にもそういう人はいるということになる。社会の問題は、そのまま家族の問題であり、会社の問題なのだ。

「自分の会社は、いい人だけを集めたい」という願いを叶えるのは不可能に近い。

ただこれは言い方を変えると、あまりいい言い方ではないかもしれないが、事実として、雇用を創出するということは、仕事ができる優秀な一部の人財だけでなく、幅広く、その業界で仕事をしたいと思っている「真から偽、善から悪、美から醜に至るまで」あらゆる人に対して、働く場を用意してあげることでもある。それは大きな社会貢献であると言える。

なぜなら、それらの職場がそれぞれの理念のもとに、本当に社会貢献を考えているならば、どうしても、入ってきた人材を優秀な人財に変えるべく「育成」が必要になってくるからだ。

そうやって会社がそれぞれに真剣に「育成」を考えるので、そこにやってきた人が「偽から真へ」「悪から善へ」「醜から美へ」少しずつ成長を遂げる。

そうやって日本という社会が出来上がっている。

失業率が高い社会ではこれができない。

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最初から優秀な人財にしか働くはチャンスは与えられず、そこに届かない人には働く場所がない。多くの人が自分の夢の実現も家族を支えることもままならず、納税という形で国や市といった社会に貢献することもできない。誰かに育ててもらうことなどないままになり、そこに成長はなく、偽は偽のまま、悪は悪のまま、醜は醜のまま、社会に存在し続けることになる。

起業をし、そこに会社が存在すると、

・その会社が提供するものやサービスで、消費者を豊かにできる。

だけでなく、

・雇用を創出することで、そこで働く人とその家族を豊かにできる。

・そこで働く人たちも会社も、納税という形で国や地域に貢献できる。

・理念のもとに多くの企業が育成をすることで、社会全体が「真・善・美」に近づいていく。

など、複数の点で「社会に貢献」することができるということがわかる。

だから、企業の理念、つまり創業者がその法人を生み出そうと考えた理由が、本当に「社会に役に立ちたいと考えて」なのであれば、「いい人を集める」という視点以上に、「いい人に育てる」という視点の方が、社会貢献という意味では大きな貢献と言えると、僕は思っている。

というわけで今週の一言。

どのような反応をされようが、少しでも偽から真へ、悪から善へ、醜から美へ成長するよう育成を続けることこそ、大きな社会貢献だ。

「自分たちのところだけは、素晴らしい人財を!」

と人集めをしようとすることは、別の言い方をすれば「そうじゃない人はよそで頼む」と願っていることでもあるかと思うんですよね。それって「利他」ではない。どちらかというと「我利」。

会社を経営するということは、社会全体のあらゆる層を引き受けて、その人たちを育てるという役割を最初から担っているということを覚悟しておく。

それこそが「社会に貢献したい」というあなたの会社の理念に近い「利他」の精神だと思うんですよね。

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image by: Shutterstock.com

喜多川泰この著者の記事一覧

1970年生まれ。2005年「賢者の書」で作家デビュー。「君と会えたから」「手紙屋」「また必ず会おうと誰もが言った」「運転者」など数々の作品が時代を超えて愛されるロングセラーとなり、国内累計95万部を超える。その影響力は国内だけにとどまらず、韓国、中国、台湾、ベトナム、タイ、ロシアなど世界各国で翻訳出版されている。人の心や世の中を独自の視点で観察し、「喜多川ワールド」と呼ばれる独特の言葉で表現するその文章は、読む人の心を暖かくし、価値観や人生を大きく変えると小学生から80代まで幅広い層に支持されている。

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【著者】 喜多川泰 【月額】 ¥880/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 金曜日

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