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小泉進次郎農水大臣の「後ろ盾」とトランプ大統領の農協解体指令。5キロ1700円“古古古古米”で自民党大分裂、政界再編へ?

小泉進次郎コメ担当大臣が新たに、2020年産の備蓄米“古古古古米”を含む20万トンの追加放出を決定した。5キロ1700円程度を見込むという。このような矢継ぎ早の動きに関してエコノミストの斎藤満氏は、検察勢力や米国の意向など「大きな力」が働いている現れと分析。「農水省幹部やOBの中にも小泉シンパは存在している」としたうえで、自民党の農水族と“農協解体派”による党内対立が、政界大再編につながる可能性を指摘している。(メルマガ『マンさんの経済あらかると』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:小泉米改革のインパクト

プロフィール斎藤満さいとう・みつる
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

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「コンビニで1キロ300円台のコメ」を多くの国民が支持

「コメは売るほどある」発言で事実上更迭された江藤農水大臣の後を受けた小泉進次郎農水大臣が、コメ市場だけでなく政界全体に大きなインパクトを与えています。永田町に激震が走っているのです。農水族ではない小泉氏を後任とした人事の裏には「大きな力」が働いているとみられます。

テレビで小泉大臣の顔を見ない日はないほど、「時の人」となった新農水大臣。前大臣から様変わりしたスピード感のある対応が国民から評価されています。これまで政府の備蓄米放出にも反対していた「農協」を無視して、いやむしろこれを解体しても良いとして大ナタを振るっています。

江藤大臣の下で行われた最初の備蓄米放出では、「入札」により9割以上を全農が押さえ、備蓄米としては高価な5キロ3800円前後で市場に出ましたが、それでも相対的な安さで「瞬間蒸発」してしまいました。販売量がわずかで、ほとんどの国民が手にできない備蓄米には不公平感も出て、国民の不満は高まるばかりでした。

そこで新大臣は、年間1万トン以上のコメを扱う業者に広く備蓄米を開放し、しかも「随意契約」により、政府指定の安価な売り渡し価格で販売業者の利益を確保したこともあり、コンビニやスーパーなどもこれを取り扱い、政府自ら運送、精米の手伝いまでしてスピード供給を促しました。

この結果、6月初旬には早くもスーパーやコンビニでこの「備蓄米」の販売が開始され、スーパーでは5キロ2000円以下、コンビニでは1キロ300円台のコメが店頭に並びました。

政府の売り渡し価格からすればまだ高いとの批判もありますが、従来の5キロ4200円台(最近の米屋では銘柄米が5キロ5500円以上)に比べれば、国民は安く買える手段を得たことになります。

コメの農協支配にメス。検察勢力や米国の介入も

今回の「米騒動」ではコメの流通過程が問題視されました。大手ディスカウント店のトップが、「コメの流通過程では5次の卸が介在して、コスト高と流通の時間を要する原因になっている」ことを暴露。さらに小泉大臣は、一部の大手コメ卸業者の営業利益が前年比で500%になっていることを指摘しました。農協を核としたコメの流通過程があらためて問題視されており、ここにメスが入ろうとしています。

政府農水省は江藤大臣の後任に、当初は農水族を充てるつもりでしたが、農協などとの癒着をネタに検察勢力や米国がこれに介入した結果、農協改革に前向きな小泉進次郎氏を後任大臣に充てることになったといいます。この時点で農協主導の農政には大きな衝撃が走りました。

そして、農協を中心とした第1回の備蓄米放出分も、高値入札の問題指摘もあり、政府が農協から買い戻し、あらためて随意契約で安く放出する意向が示され、農協は慌てたようです。農協が入札米を抱え込んでいるとの情報をチェックし、農協中心の流通にあらためてメスを入れる動きを察知したようで、なくなったはずの「銘柄米」が突然スーパーの棚に並ぶようになりました。(次ページに続く)

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税金の無駄遣い?「減反補助金」に国民反発

同時に、日本のコメ農政についても多くの問題があぶり出されるようになりました。そもそも農協は小規模コメ農家を前提として、農家に肥料から農機具まで販売貸し出しを行い、零細農家体制を守ってきました。これにより、産業資本による大規模コメ作は排除されてきました。

これによって、これまでは「ミクロ」の観点からすると農家も農協もそれぞれの地位を守ることができたのですが、「マクロ」からみればコメ生産の減少と非効率により、日本のコメの国際競争力が低下することになりました。

特に、コメを作らなければ減反補助金がもらえるということで、コメを作らない「兼業農家」が増え、コメの生産が年々減少してしまいました。

税金を付加価値生産のためではなく“付加価値を生まないため”に使う「減反補助金」に対し、国民は強く反発しています。

コメの供給不足から「令和の米騒動」を引き起こした農政と農協体制に批判が集中し、今まさに、ここにメスを入れる動きが始まっているのです。

小泉進次郎大臣の「農協をぶっ壊す」で自民の党内対立が鮮明化

批判の多い農協体制にこれまでなかなか手を付けられなかったのは、これが自民党の大票田だからです。

特に現在の石破政権では森山幹事長を筆頭に、農水族が強い影響力を持っているだけに、自民党の基盤を揺るがすことになる農協改革はまず不可能と見られていました。

ところが「令和の米騒動」が発生し、江藤大臣が更迭され、その後任に農水族ではなく小泉進次郎大臣が起用された段階で、自民党内に大きな“台風”が巻き起こりました。小泉大臣が次から次へと打ち出すコメ対策は、選挙に欠かせない農協票を失いかねないものばかり。農水族のみならず、自民党全体が選挙で戦えなくなるリスクが生じます。

ここで連想されるのが、かつて「自民党をぶっ壊す」と言って登場した小泉純一郎氏です。彼は米国の意向により、やはり大きな自民党支持票を持つ郵便局を敵に回す郵政民営化を進めました。結果として、郵便局の支持票は失ったものの、それ以上に国民の大きな支持を得て小泉自民党は選挙で大勝しました。

今回はその子息が「農協をぶっ壊す」の勢いで、ここまでは安いコメの提供で国民の支持を得ています。

このため、自民党内からも小泉大臣にあやかろうとする勢力と、逆にあからさまな批判をする先輩議員や元農水大臣が現れ、党内対立が目立つようになっています。

農水族と言われる勢力は反小泉の姿勢を強めていますが、小泉大臣も「偶然の登用」ではなく、背後には強い支持基盤があります。これも自民党分断の力になる可能性があります。(次ページに続く)

農協改革を求めるトランプ政権の後ろ盾を得て政界大再編へ?

小泉大臣に対する農水省の出方が気になるところですが、実際には農水省OBや農水省幹部の中にも、米国の圧力からか改革を評価する「小泉シンパ」がいます。

そして、現在のトランプ政権を支持する立場となったブッシュ・ファミリーは、小泉元総理と深いつながりがあり、農協改革を求めるトランプ政権の後ろ盾を得たとも言えます。

小泉農水大臣を得て、石破内閣の支持率はやや上昇を見せています。農水族と言われる石破総理も、今回は小泉路線を支持し、農政にも手を付けようとしています。自民党はこの石破、小泉グループと、森山幹事長などの農協シンパとに分断される可能性があります。

このような自民党の分裂は、新たな政界再編につながる可能性を秘めています。

石破・小泉チームには立憲民主が加わる可能性があり、残る自民には国民民主がついて新たな「二大政党」ができる可能性があります。

そこでは、あらためて政権交代を可能にする政党の形が期待できます。郵便局、農協の組織票がなくなったとき、新たな政党が民意を得られるかどうか?国民に目を向けた政党の誕生を期待したいと思います。

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※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2025年6月9日号「小泉米改革のインパクト」の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。当月配信済みバックナンバーもすぐに読めます。

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1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

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