日米選挙後に、日本の個人投資家を“シン・石破ショック”が襲う可能性が出てきた。足元の株価指数・ドル円は自民総裁選“高市ラリー”時の高値を回復したものの、選挙後に石破総理の“飼い主”の意向が変化するだけで、相場トレンドは容易に転換しうるからだ。エコノミストの斎藤満氏は、「日銀の年内追加利上げはないと決めつけるのは早計だ」と警鐘を鳴らす。(メルマガ『マンさんの経済あらかると』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:日銀の正常化シナリオは壊れていない
プロフィール:斎藤満(さいとう・みつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
日本の株式・為替市場は誰の意向で動いているか?
石破総裁が誕生して早々、彼は日銀の植田総裁と会談しました。そこで「個人的には今利上げをする時期ではない」と発言し、市場が大きく動きました。
これまで金融の正常化を支持する姿勢を見せていただけに、この「落差」が大きく、市場は大幅円安、株高で反応、長期金利は低下しました。
市場の反応の大きさに驚いたのか、石破総理はその後「基本的に植田総裁と同じ立場」と言い直しましたが、かつて反アベノミクスの立場にあった総理の「心変わり」の裏に何があったのでしょうか。
米共和党・米外交問題評議会(CFR)の圧力
1つの可能性は米国の圧力です。といっても、ホワイトハウスや米財務省ではありません。
石破総理は就任直後に世界有数の投資会社ブラックストーン社の共同経営者、スティーブ・シュワルツマン氏と面談したといいます。同社は日本でも積極的な投資を行っていて、今後も投資拡大を計画しています。そこで投資家サイドからの要望があった模様です。一投資家として、投資環境を考慮して利上げに反対、ということになったのか、政治的な意図があったのかは不明です。
そもそも、シュワルツマン氏はピーター・ピーターソン氏と共同でブラックストーン社を立ち上げましたが、このピーターソン氏はCFR(外交問題評議会)の重鎮です。シュワルツマン氏も共和党系CFRの立場にあります。
CFRは日本に対し、増税を含めた緊縮型財政を求め、そのため金融政策ではある程度緩和的な状況が必要と見ています。これまでも日銀の利上げには抵抗を示していました。
また、ブラックストーン社は中国でも投資をしていて、日本の利上げが中国市場の制約になるとみて、利上げには反対の立場をとります。
昨年秋にはブラックストーンの兄弟会社、ブラックロックのトップが岸田総理と会談し、日本マネーの米国還流支援策を求めたといいます。
これらを前提として岸田総理は新NISAを推し進め、今年になって新NISA経由で大規模な日本マネーが米国株式市場に流入しています。
今回も、ブラックストーン社が米国市場への資金流入を考え、低金利維持を望んだことは想像に難くありません。
【関連】9.11でWTCから生還した日本人金融マンが語る「紙一重の脱出劇」日本も他人事ではないテロ・災害避難の教訓として(斎藤満)