マスコミが報じない衆議院総選挙2024「7つの闇」…連立再編、裏金から宗教組織票、れいわ「自民アシスト」説まで

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「政治とカネ」に国民が審判を下す第50回衆院選(10月27日投開票)の選挙戦がいよいよスタートした。ただし通例では今後、各候補の舌戦が熱を帯びるにしたがい、マスコミの選挙報道は“薄味”になっていく。投票先に悩む有権者としては心もとないかぎりだ。本稿では、わが国の選挙における7つの謎を列挙。報道統制のほか、連立組み替え、政策パッケージ、裏金問題、組織票などがはらむ問題を、米国在住作家の冷泉彰彦氏が詳しく解説する。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:衆議院総選挙の謎を考える

ニッポンの総選挙は、昔も今も奇々怪々

衆議院が解散され、いよいよ総選挙がスタートしました。今回は、もしかしたら政権選択になるかもしれないということで、様々な可能性を考えて投票する必要が出てきていると思います。

その一方で、以前から思っていたのですが、日本の選挙においては様々な「謎」があるのも事実だと思います。

今回は、この総選挙に特有の問題に加えて、一般的に日本の選挙において不思議と思われる問題も一括りにして、とにかく、選挙の「謎」について迫ってみたいと思います。

(1)民意不在の連立の組み合わせ

今回は特にそうなのですが、自民党と公明党の連立与党が過半数を割るという説があります。それも相当に割り込むという可能性を指摘する人もいます。仮にそうなった場合は、連立を組み替える可能性が出てきます。

今は、自民党と公明党の連立が続いていますが、20世紀末には自民党が選挙で負けた場合は、「保守系無所属」を取り込み、それでも足りない場合は新自由クラブなどの保守系中道政党を取り込んで閣僚ポストを与えて連立したりしていました。

一方で、野党系のグループが相当に勝った場合にも、一つの政党が単独で過半数を取るのは難しいので、やはり連立になると思います。例えばですが、20世紀末の1993年には、自民党が少数に転落して細川政権ができたのですが、この時は共産党を除いた野党が大きな連立を形成したわけです。

変わり種としては、1994年に発足した村山内閣です。細川、羽田の両内閣では野党に転落していた自民党が、この細川、羽田政権の与党を分裂させ、「さきがけ」と「社会党」に裏切りをさせて取り込み、「自社さ」政権を作ったのでした。ウルトラC的な連立工作であり、社会党はここで保守政党に妥協したことで、一気に存在意義を失い党が消えていく契機ともなったのでした。

この種の連立のドラマというのは、無責任に見ているだけなら、それなりにドラマチックであり、予想もしなかった政権ができたり、壊れたりするのは人間ドラマとしては「面白い」わけです。ですが、そこには根本的な問題があります。それは「連立工作は選挙公約にならない」という問題です。

現在の自民党と公明党については、連立を組むことが前提となるような選挙協力もしていますし、一緒に演説会をするなど目に見える行動もしています。ですから、有権者としては「自公連立」が今後も続くかもしれないという前提で投票するわけです。

ですが、その他の政党については「連立を公約に」することはありません。ですから、公約としては「自分たちが過半数を取って単独内閣を形成するかのような」偉そうな書き方をするか、あるいはその書き方が「実に偉そうで非現実的なので、要するに野党として活動するのが前提」という場合もあります。

例えば公約の中に「政権を構成する連立の一角を担う」という目標を入れるということはありません。また「連立参加の場合は、この公約を少し変えてでも連立交渉をする可能性がある」という「但し書き」もないのが普通です。

ですから、有権者から見れば、自分が主権者としての一票を行使した結果、「これまでの与党にお灸を据える」ことはできたにしても、連立政権が新しく発足するなどということは「投票行動として想定していない」のです。

これはどう考えても裏切りです。間接民主制は人類に取って現実的には最善の政治システムだと思いますが、この場合は有権者の主権行使と、実際の政権の構成の間には距離がありすぎます。例えば、余りいいことではないにしても、立憲に「野党として、与党を厳しくチェックする」ことを期待して一票をいれる人もいるでしょう。

ですが、その立憲が自民と大連立を組んでしまったら、その人の投票意図は歪められることになります。もちろん、正論を言うのなら、「連立を組んだら、速やかに民意を問うためにもう一度解散して、連立政権への支持を問うべき」という考え方もあります。ですが、その場合に与党が大敗したら、必ず連立の組み換えが起こるわけで、それは民意の確認にはなっても、新しい連立が民意のサポートを受けたことにはなりません。

これは日本だけの話ではなく、ドイツでも、あるいは英国でも起きていることなのですが、とにかく選挙後に連立を勝手に組んだり組み替えたりするのは、民意を無視した話だという認識は必要だと思うのです。解決の方法としては、とにかく政権交代可能な統治能力を持ったグループを2セット持つことが一番いいのではないかと思います。

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