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小林よしのり氏が指摘する「愛子天皇」否定カルトの危険性。背景に異常な男尊女卑思想、懸念される「フェミサイド」どう防ぐ?

皇統の安定のためには愛子さまが次の天皇になるしかないし、男系固執の根本である男尊女卑は崩壊するしかないし、日本の女性の地位は向上させていくしかない。だがそうなった時、男系固執派は一体どうするのだろうか?<中略>
愛子さまが次の天皇になることが確定し、男尊女卑が否定される世の中になったら、男系固執を唱えていた者たちは、より不遇感を強めていく。そして女性に対する恨みつらみを一方的に募らせ、目立つ女性を標的にして、フェミサイドを始めてしまうことだってありうると考えておかなければならない。(メルマガ『小林よしのりライジング』著者・小林よしのり氏/本文より)
※本記事のタイトル、見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ゴーマニズム宣言・第568回「フェミサイドが男系カルトの未来か?」(2025年6月5日号)

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愛子さまの次期天皇ご即位は必然。今、男系固執派カルトによる「フェミサイド」が懸念される理由

男系固執派がどれだけ悪あがきしようと、皇統の安定のためには愛子さまが次の天皇になるしかないし、男系固執の根本である男尊女卑は崩壊するしかないし、日本の女性の地位は向上させていくしかない。

だがそうなった時、男系固執派は一体どうするのだろうか?

日本で男尊女卑・男系固執派が敗北した後の姿は、メキシコの現状を見ると予想できるところがある。

だが、それは決して実現してほしくはない未来予想図である。

メキシコ第2の都市グアタハラ近郊で5月13日、美容系インフルエンサーの女性、バレリア・マルケスさんが美容サロンで行っていたTikTokのライブ配信の最中に、侵入してきた男性に銃で射たれ殺害された。

その一部始終はそのまま配信され、サロンを訪れた男が「こんにちは、バレリアさんですか」と尋ねたのに対して「はい」と応じるといきなり銃撃され、椅子にぐったりともたれかかるバレリアさんと、手前の机に血だまりが出来ていく様子が映っていたという。

このショッキングな事件を、捜査当局は「フェミサイド」と見て調べているということである。

「フェミサイド」という言葉、聞き慣れない人も多いだろう。 わしもこの件で初めて知った。「フェミサイド」とは「女性(femi-)」と「殺害(-cide)」を組み合わせた造語で、女性が女性であることを理由に殺害される事件をいう

この用語はアメリカで活動した南アフリカ出身のフェミニスト、ダイアナ・ラッセルが1976年に使用してから広まり出したのだそうで、フェミニズム界隈ではもう50年近く流通していたらしい。

その定義はあまり厳密ではなく、人によってばらつきがあるが、より広範な被害を明確化するために、あえて定義を曖昧にしておいた方がいいという考え方もあるようだ。

最も多いフェミサイドは、DVやストーカー殺人など、パートナーや元パートナーによる殺害。次にレイプ殺人など、見ず知らずか関係性の薄い者による犯行である。

一方、現代日本では見られないものもある。 姦通や結婚以外の妊娠、レイプ被害を受けたなどの女性を「家族の名誉を汚した」として殺害してしまう、中東や南アジアなど一部地域に残る「名誉殺人」の風習や、結婚時に新婦側が贈る持参金が少ないといったトラブルから新婦が殺害される、インド周辺地域で起こるという「持参金殺人」のケースなどだ。

その他、オカルトの「魔術」に関連した殺害、武力紛争や「民族浄化」に関連する殺害など、様々な女性の殺害が「フェミサイド」に分類されている。

「男尊女卑」の解消に対する反動としての「フェミサイド」

このように幅広いケースを含む「フェミサイド」だが、わしが特に注目するのは「男尊女卑」の解消に向かう動きに対する反動による犯行である。そして先述のメキシコの事件はその典型ではないかと見られるのだ。(次ページに続く)

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「愛子天皇」が男尊女卑カルトのアイデンティティを崩壊させる理由

メキシコは、非常に男尊女卑の傾向が強い国だ。本来、15~16世紀のアステカ王国時代の女性の地位は決して低くはなく、女性も自ら商売をするなど、様々な活動をしていた。

ところがそこへスペインが侵略してきた。 この時代に中南米に渡ってきたスペイン人は、そのほとんどが男性であり、イギリスから北米に向かったピューリタン(清教徒)が家族ごとの移住だったのとは全く対照的だった。

スペインの男たちは殺戮と略奪の限りを尽くし、女性をレイプしまくり、膨大な数の混血児(メスティーゾ)を生み出した。 そしてメスティーゾの多くは「スペイン人の父を誇り、先住民の母を軽蔑する」という心理状態になったという。

スペインの男たちは暴力的な植民地支配を行い、女性たちはそれまで担っていた社会的地位を奪われ、不当に支配される存在となってしまった。

さらには、当時のヨーロッパでは常識だったカトリック的な男尊女卑の価値観が持ち込まれ、男性は独立した主体として考え行動するために生まれるものだが、女性は男性に従属し、家庭に入るものだという考えがメキシコでも一般的になった。

初期のメキシコの法律の多くはフランスの民法典に影響を受けており、女性は法律から財政に至るまで、生活のあらゆる面で男性に扶養されるものとされていた。

そして、そんな植民地支配が300年続き、これによって中南米一帯では男尊女卑が強固に定着してしまったのである。

この「男性優位主義」のことを「マチスモ(machismo)」という。

スペイン語でオス・男性を意味する「マッチョ(macho)」から派生した言葉で、英語でいえば「マッチョイズム(machoism)」である。

その一方、メキシコの女性には「マリアニスモ(marianismo)」が定着していった。聖母マリアに由来する言葉で、子供に対して献身的に尽くす自己犠牲的な母親像で、日本でいえば「良妻賢母思想」だろう。 美談として語られることが多いが、実際のところはひたすら男性にとって都合のいい「理想像」である。 これは、女性は自分自身の希望を諦め、ひたすら子供のために尽くすべきものであるという考え方となり、女性が自分自身の価値を低いものと評価するようになっていった。

マチスモは中南米諸国にある程度共通して見られるが、メキシコのマチスモに特徴的なのは、女性に対する殺人などの暴力が顕著だということだ。

全てがフェミサイドであるかどうかは判別できないが、メキシコでは1日平均10人近くの女性が殺害されているという。そして、それらの事件の98%は全く訴追されないままになっているそうだ。 レイプされる女性は16分に1人。 女性の66.1%が何らかの暴力を受けているという。

その原因としては、麻薬カルテルの横行などによる治安の悪さなども挙げられるが、ジェンダー問題として特に指摘されるのは貧困層の存在だ。

地理的に米国に近いメキシコは、政治的には独立していても経済的には米国が実権を握る新植民地主義的な体制に組み込まれており、経済格差が大きく、貧困層の割合が高い。

貧困層の男性は、女性を支配することで自分よりも弱い存在をつくり、アイデンティティを保とうとするため、マチスモになる傾向が強く、それが暴力という形で現れるのだという。

とはいえ、メキシコでは女性差別撤廃に向けた政策を取っていないわけではない。 むしろ、その点では日本よりも積極的だと言っていい。

メキシコでは貧困層にマチスモやマリアニスモが色濃く残る一方で、中間層・富裕層における女性の社会進出はかなり進んでいて、その女性たちが中心となってフェミニズム運動を起こし、これが広く市民運動に波及している。

そして2024年には初の女性大統領が誕生。 国会議員の50%を女性にする法律も制定されている。

メキシコはジェンダー・ギャップ指数ランキングで世界33位、日本は118位だ。 「ジェンダー・ギャップ指数」にはバイアスがかかっていて、鵜呑みにはできないということは承知しているが、少なくとも社会制度上においては、日本はメキシコよりもはるかに遅れているということは間違いない。(次ページに続く)

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「皇統よりも自分の男尊女卑感情の方が大事な者たち」が暴走する

ところが、ここで見過ごせないことがある。メキシコでは、女性差別撤廃の動きが進めば進むほど、これと比例するように殺害される女性の数も増えているのだ。 そして、先述したようなショッキングな事件も起きている。

それはつまり、女性差別が解消に向かうことで、アイデンティティの危機を感じたマチスモの男たちが暴走しているということだろう。

人種差別撤廃運動が進んでいくことでアイデンティティの危機を感じた白人至上主義者が、黒人に対する暴行・殺害事件を起こすのと同じである。

差別は撤廃しなければならない。 だが世の中には、厄介なことに差別を必要とし、差別がなければ生きていけないといった者がいて、その反動は避けられないものである。

アステカ王国時代のメキシコの女性の地位は決して低くはなかったのに、西欧の侵略を受けた結果、極端な男尊女卑社会となってしまった。日本も古代には普通に女性天皇が即位していたのに、シナから儒教文化が入り、明治には西欧文化が入って、侵略もされていないのに男尊女卑社会となっている。

しかし日本でも男尊女卑は撤廃し、愛子さまを次の天皇として、国会議員も半分は女性、そして女性首相が登場するようにしなければならない。 それは歴史の必然であり、そうしなければ日本の未来は立ち行かないのである。

だが、日本から実際に男尊女卑が撤廃され、愛子さまが次の天皇になることが確定したら、それまで強硬に「男系男子」を唱えていた者たちは、その時どうするだろうか?

自分の主張が間違っていたと認め、悔い改めて、男尊女卑の意識を捨ててくれればいいのだが、そんなことはまず期待できない。

何しろそいつらは男尊女卑が脳髄の芯にまで達していて、それが自らのアイデンティティになってしまっている。

男系男子に固執したら皇統が滅びるといくら言っても聞く耳を持たない、すなわち皇統よりも自分の男尊女卑感情の方が大事な者たちなのだ。 どんなに破綻が明らかになろうと、死ぬまで考えを変えることはないだろう。

そいつらは、自分の存在に自信を持てず、「男である」ということにしか自分の価値を見出せない男と、そんな男に媚びて「そこらの女とは違う」と思うことにしか自分の価値を見出せない女である。男尊女卑の価値観が否定されたらアイデンティティが崩壊して、生きていけなくなる者たちなのである。(次ページに続く)

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次の天皇は愛子さましかいない。男系男子カルトの「フェミサイド」を警戒せよ

愛子さまが次の天皇になることが確定し、男尊女卑が否定される世の中になったら、男系固執を唱えていた者たちは、より不遇感を強めていく。

そして女性に対する恨みつらみを一方的に募らせ、目立つ女性を標的にして、フェミサイドを始めてしまうことだってありうると考えておかなければならない。

男系固執派がみんな、口先で偉そうに振る舞いたかっただけで、他人に暴力を振るうことなんか到底できないといったヘタレばっかりならいいのだが、そんな願望を言っても仕方がない。

連中は絶対に実現不可能な側室なしでの男系男子限定継承が、可能であると狂信しているカルトである。 カルトは追い詰められたら、何をしでかすかわからない。

愛子天皇が実現すれば、全ての価値の根幹だった男尊女卑が否定されることになる。 それと同時に、「万世一系の男系」を唱えることで自分たちは世間一般の愚民どもよりもずっと高級だと思っている、カルトならではの「選民思想」も崩壊する。

カルトだったら「集団自殺」という行動もありうるし、どうせならぜひそっちを選択してほしいものだが、自暴自棄のテロに走り、フェミサイドを起こしてしまうという恐れも決して否定はできないのだ。

愛子天皇は絶対に実現しなければならないし、実現すれば、これほどめでたいことはない。

だが、たとえこれが実現しても、残念ながら決して「一件落着、めでたしめでたし」とはならない。男系カルトの残党の監視は、その後も怠ってはならないのである。(メルマガ『小林よしのりライジング』2025年6月5日号より一部抜粋・敬称略。最新号はメルマガ登録の上お楽しみください)

6月5日号ではこのほかにも、【泉美木蘭のトンデモ見聞録・第363回「産経新聞社《アンチ読売》の破綻~竹内久美子から八木秀次まで」】や【読者Q&Aコーナー】を掲載。ご興味をお持ちの方はこの機会にご登録ください。

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