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あなたの伝え方が「指示待ち人間」を生み出している原因かもしれないワケ

部下から「言われた通りにやったのに、なぜダメなんですか?」と言われた経験のあるリーダーは多いのかもしれません。指示を出したはずなのに重い通りに部下が動いてくれない原因は、リーダーの伝え方にある場合も多いのです。自己改革小説の第一人者である喜多川泰さんは、自身のメルマガ『喜多川泰のメルマガ「Leader’s Village」』の中で、思考停止を生まない伝え方と人を育てるリーダーになるために意識すべきことを伝授しています。

思考停止を防ぐ指示ができるリーダーになろう

宿題の完成度には、大きな個人差があるように、「これをやっておいて」という指示に対して仕上がってくる仕事には、人によって大きな幅がある。

それこそ、「とりあえずやりました」というものから、素晴らしく仕上がっているものまで、本当に驚くほどの差だ。

だけど、リーダーが忘れてはいけないことがある。

それはどれほど仕上がりに個人差があったとしても、すべての人が、「言われたことはちゃんとやった」と自己評価しているということだ。

先ほどの漢字練習と同じだ。どんなに汚い字で、テレビを見ながら適当に書いたからまったく頭に入っていなかったとしても、それぞれの漢字を20回ずつ書き終わった時点で、本人の中には、「やるべきことはやった」という達成感しかない。

職場において、せっかくやるなら、もっと意味のあるやり方をして欲しいなぁと思う人に、「もうちょっと、こうしたほうがいいよ」とやり方についてのアドバイスをしたところ、「こうしろと言ったのは〇〇さん(あなた)じゃないですか。言われた通りにやってるだけなんですけど」なんて言われたことない?

自分では覚えていないけど、そう言われるとなんだか申し訳ない気がしてきて、「そうだったの?ごめんね」なんて謝ったりして。でも、今は違うやり方をして欲しいわけですよ。

「その日の気分で言っていることが変わる」

そう思われている上司は結構多い。実は僕もそう思われたことが少なからずある。

仕事のやり方や、制作物の作り方、授業の組み立て方や、生徒や保護者とのやりとりなど、「もっとこうすれば?」「それでは、相手が納得してくれないと思うよ」などアドバイスをすることがあるのだが、そのときに、「こうやれって言ったのは先生ですよ!言われた通りにやってるだけです」などとちょっとキレ気味に返されることがあった。

言われてみれば、心当たりがないわけではない。

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僕が経営していた塾では、授業を担当する前に三ヶ月ほど研修期間を設けて、授業の練習をしてもらう。三ヶ月と言えば長く感じるかもしれないけど、実は初めての先生がいい授業をするには全然足りない期間だ。しかもその前までは別の先生(例えば僕とか)がそのクラスを担当していたわけで、初めての先生は自分に変わったときにどう思われるかを考えるだけで苦しくなる。だから初めて授業に入る前は緊張で夜も眠れない。

だから、新人の先生には一つのことができるだけで十分だと伝えるんですね。

「とにかく生徒の目を見て話ができる。それだけを頑張ればいいから」とかね。そしてそれができていれば、他のことがどれだけぐちゃぐちゃであっても、「いやぁ。本当にいい授業だったよ。自信持っていいよ」と伝えるわけです。もちろん本人は手応えなんてまったくないんでしょうが。

ところが、久しぶりにその先生の授業を見てみると、ほとんど成長していないなんてことがよくあるわけです。それで話をしてみると、「それだけを頑張ればいいと言われたんで…」というようなやり取りが実際にあった。

「何をやればいいか」は明確に指示を出したのだが「何のために」を伝えていなかったんですね。そして相手の中では、言われたことをやっていたのに「何をやればいいか」を言われたその相手から「それじゃダメだ」と言われた。その記憶だけが残っていくというわけです。

授業の目的が、「子どもが自ら考える力を育む」ことだとしたら、それを達成する手段は一つではないはず。これがダメならあれ、あの手がダメならこの手とそれこそ刻一刻と変わり続け、ブラッシュアップし続け、磨き続けていくのが手段のはず。手段の伝達だけで、思考停止を生み出し続けていくと、指示まちが基本となり、目的から遠く離れていってしまう。

レストランでナイフやフォーク、グラスに水垢のような汚れがついていたことはないだろうか。

高級レストランでは少ないかもしれないが、ファミレスのようなところだとよくみると結構汚れが残っていることが多いことに気づく。なぜそうなるのかもよくわかる。

飲食関係の仕事をしたことがある人は「洗いもの」の仕事をやったことがあると思う。

どの職場でも、「これ洗っといて」「ここにこうやって水を溜めて、こっちで洗ったやつをこっちに入れてすすいで」「食洗機にこうやって並べて、ここのボタンで」とやり方の説明は受けるが、その目的を言われたことがないからだ。

「次にこの器を使って食べるお客さまが、気持ちよく、安全に食事ができるようにするのが、あなたの仕事ね」と言われるだけで、「洗う」という言葉もないし「洗い方」については言及されていないが、「自分で考える余地」が生まれる。言われた通り食洗機で洗ってもそこから棚にしまうときに汚れがあれば拭き取るという行為をするようになるかもしれない。

「『手段』に忠実に動いてもらい、『目的』は相手の自由に任せる」では頼んだ相手によって仕上がりに差が生まれるのも仕方がない。

「『目的』に忠実に動いてもらい、『手段』は相手の自由に任せる」というのが人を成長させる指導者だ。

「何のために」を常に伝えてくれる指導者のもとでは、指示待ちではなく自分でその手段を考える人財が育ちやすくなる。

「言われた通りにやってるのに、文句を言われた」という食い違いをなくすためにもーーー(『喜多川泰のメルマガ「Leader’s Village」』2025年6月27日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Shutterstock.com

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1970年生まれ。2005年「賢者の書」で作家デビュー。「君と会えたから」「手紙屋」「また必ず会おうと誰もが言った」「運転者」など数々の作品が時代を超えて愛されるロングセラーとなり、国内累計95万部を超える。その影響力は国内だけにとどまらず、韓国、中国、台湾、ベトナム、タイ、ロシアなど世界各国で翻訳出版されている。人の心や世の中を独自の視点で観察し、「喜多川ワールド」と呼ばれる独特の言葉で表現するその文章は、読む人の心を暖かくし、価値観や人生を大きく変えると小学生から80代まで幅広い層に支持されている。

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