7月5日の「大災害」予言騒動は自民党が引き起こした!? 無力感に苛まれる国民が終末予言に“癒やされる”仕組みを心理学者が解説

 

「不安」と「無力感」に支配された社会ほど「予言」が重宝される

「心理的な土壌」という表現は曖昧過ぎるかもしれませんね。具体的に言うなら、現代に生きる人々の多くは「漠然とした不安」と「無力感」を抱えているのです。

キーワードは「不安」と「無力感」の二つです。

社会の多くの人々が「不安」と「無力感」を抱えていればいるほど、もっともらしい「終末予言」は信じられやすくなり、社会的ネットワークで拡散され、共有されるのです。

そして、今の世の中で、「将来に対する漠然とした不安」を抱えていない人の方が珍しいのではないでしょうか。

たとえば、なけなしの貯金をはたいて買った株式、今のところ市況は堅調ですが、明らかにバブル景気、いつ大暴落が起きるか分かったものではありません。

インフレで物価はじわじわ上がり続けています。この先、今のような給料で、生活を維持することができるのでしょうか?

戦争に巻き込まれる可能性だってある。

火山の爆発に大地震、おまけに台風やら集中豪雨の水害、日本は災害列島です。

さらに、不安の原因は、社会や自然にだけ有るのではなく、もっと個人的な問題にも潜んでいるのです。

たとえば「健康不安」。自分自身の「健康状態」に100%の自信を持っている人はめったにいません。

それに「人芸関係」。家族や職場、ご近所との「人間関係」にも心配の種は尽きません。

このような各種の不安が束になってあなたに襲い掛かります。

もちろん、解決できるものにはすぐに手を打つのでしょうが、全てが簡単に解決とは行きません。その結果、私たちは「漠然とした」「慢性的な」不安を抱え込んだままになってしまいます。

「自分ではどうすることもできないことが多すぎる」社会

そして、もう一つの要素「無力感」は、現代社会を生きる者にとって避けては通れない課題です。

「環境問題」であれ「戦争」であれ「経済問題」であれ、「自分ではどうすることもできないことが多すぎる」と思ったことはありませんか?これが「無力感」です。

現代のグローバル化した情報化社会は、あまりにも「巨大化」と「複雑化」が進み過ぎました。

その結果、会社組織であれ、行政組織であれ、個人が取り組む相手としては、あまりにも大きく、あまりにもややこしくなり過ぎたのです。

真面目にこんなモンスターの相手にしていれば、誰だって自分が無力であると思い知らされます。だから多くの若者は「コントロール可能な」ゲームの世界へと逃避するのです。ゲームの中のモンスターなら倒すことができますから。

私たちが「世界の終わり」といった「破滅の物語」に魅了されるのは、私たちが抱え込んでいる「無力感」を「圧倒的に制御不能な出来事」によって相対的に正当化してくれるからです。

たとえば、巨大隕石の衝突を回避できる力を持った個人はいません。制御不能なのはあなたの力が弱いからではないのです。あなたに責任はない。

また、「世界の終わり」といった怖ろしい出来事は「漠然とした不安」の原因をそれにより「説明」してくれます。世界が終わるのですから、不安を感じることは当然です。

そして、「原因」が明らかになった「不安」はもはや不安ではありません。なぜなら、不安とは「原因」が分からない「正体」の不明な感情ですから、その正体が明らかになった以上、もはやそれは不安ではないのです。ただの恐怖です。

恐怖より不安の方が楽なのでは?と考える方もおいでかと思います。しかし、明確な恐怖より、慢性的で得体の知れない不安の方が心理的負担は大きいのです。それに、不安の正体(あくまで予言が当たった場合の話なのですが、信じている間はそれが正体です)が分かると、それなりにスッキリして気分が良くなります。

このように、「破滅の物語」は「漠然とした不安」と「自身の無力感」を説明し、正当化し、一時的に忘れさせてくれます。ですから、これら二要素を強く抱えている人たちほど、「世界の終わり」を信じてしまうのです。

しかも、一旦、この種の「予言」を信じると、「自分は隠された『真理』を知っている」という「優越感」を持つことができます。さらに、この真理を誰かに語ることで、「自分は有意義な行動を実践できる」という「自己効力感」(裏付けのある自信)を高めることもできるのです。「優越感」や「自己効力感」は「無力感」を薄めてくれます。

また、SNSが発達した現代では、こうした「終末予言」を信じている人たちどうしのコミュニティーができやすく、そうした人々のつながりは「孤独」を癒してくれ、お互いを支え合うことができるようになります。

こうした人間関係が「漠然とした不安」や「無力感」を和らげてくれるかもしれません。

「世界の終わり」は怖ろしいことであるのと同時に、全てを「ご破算」にして世界を「リセット」してくれるものでもあるのです。言い換えれば、自分を苦しめ、「漠然とした不安」や「無力感」を植え付けた現代社会、今の世界が、きれいさっぱり無くなり、振り出しに戻るということになるわけです。(次ページに続く)

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